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#137 後始末した、王都 9

 自分が一番の標的なのに最後まで事態を見届けたいと渋るジアトルを彼の護衛達と協力して説得し、坑道内に残るのを了承させた。

 当然ジアトルの護衛達にも残ってもらい、外の制圧は俺と炎山の仲間達で行う事にした。

 早速外への出口を作っていくが馬鹿正直に崩れた出入り口を再開通させるような事はせず、一旦外の地面より下まで斜めの縦穴を魔術で掘っていく。

 そこから完全記憶領域の地図を頼りに宿舎や採掘場の下を掘り進んで行って、林の下に出た所で斜め上に向きを変え坑道の方からは死角になる大木の陰に出た。

 そこからは体術スキルを駆使し足音や鎧の擦れる音を消して林の中を移動し、まずは状況を把握するため視線の通る木の陰から鉱夫達の集められている広場を見た。

 気配探知で探知した通り鎧を身につけ槍や剣を持って完全武装した十数人の連中が一塊に集めた鉱夫達を取り囲んでいる。

 そいつらは鉱夫達は一人ずつ前に呼び出しては順番に奴隷化の首輪をつけていっており、もう半数以上が終わっている。

 この連中が鉱夫達を口封じに殺さなかったのは奴隷として売るためで、1か所に集めたのは首輪をはめる作業をやりやすくし逃げた鉱夫が居ないか確認しやすくするためだろうな。

 そんな首輪をつけられた中には忌々し気な表情のヴォ―ガイも混ざっていた。

 多分獣人仲間を人質に取られて反撃できずに拘束されたんだろう。

 まあ俺達が近くにいるんで無理をする必要はないとも思ったんだろうがな。


 さて、この連中は全員に首輪をつけ終わればここを離れるだろうから、その前に仕掛ける必要がある。

 だが向こうには俺達を見た奴もいるだろうし、劣勢になれば顔見知りの獣人やドワーフ達を人質にとる可能性もある。

 それをされると多少面倒なんで奴隷化した連中を盾にしても意味がないと思わせないとな。

「バルバス。鉱夫達を人質にされないよう行きずりの奴隷狩りでも装って仕掛けよう。布でも巻いて顔を隠し鎧も野営用の外套を羽織って出来るだけ見せないようにしよう。そうすれば坑道の中へ閉じ込めたと思ってる俺達だと感嘆には見破れないだろ」

「いいですな。連中の腕前は大した事なさそうですが、捕まっている鉱夫達を盾にされては面倒ですからな。では奇襲の効果は薄れますが、仕掛けるときに奴隷を奪い取れとでも言ってみてはいかがですかな」

「悪くないな。でも俺はジアトルと喋って声を覚えられているかもしれないし、その声出しはバルバスがやってくれ。仕掛けるタイミングとの兼ね合いもあるだろうから制圧の指揮も任せる」

「御意、お任せあれ」

 炎山の皆も賛同して頷いてくれたんで早速準備を始めた。

 各々自分の格納庫から外套を取り出して身につけている鎧を出来るだけ隠すように纏う。

 長めのタオルを顔に巻き付けて隠し、外套についているフードを目深に被れば普段と大分印象が変わったんでこれなら簡単に俺達とは見破れないだろう。

 偽装の準備が終わった順にバルバスが配置を指示しいく。

 引き続き体術スキルを駆使して足音や鎧擦れ音を全くさせず、アデルファとアグリスにガディとバルバス自身が宿舎や作業場の間に潜り込んでいった。

 俺にティータとティーエは連中を逃がさないよう坑道周辺を囲むような位置取りをする。

 その間にもバルバス達は全く気付かれず鉱夫達が集められた広場に近づいて行き、鉱夫の1人が奴隷化の首輪を嵌められ他の鉱夫の元へ下がらせた瞬間を狙って声を上げた。

「行けい!多少の犠牲は気にするな。奴隷を根こそぎ奪え!!」

 普段とは大分感じの違う殺気籠ったバルバスの声に連中は面白いくらい一斉に反応して振り向き、バルバス以外の3名もその隙を逃さず建物の陰から飛び出す。

 そこからの展開は予想した通り一方的で、姿を見せたバルバスの含む4名が武器を振るうたびに連中の1人が昏倒していく。

 これほど奇襲が上手く行くと外見の偽装に意味があったかはちょっと微妙だが、幸い奴隷にした鉱夫を盾にしようと動く奴はいなかった。

 30秒と経たずにバルバス達が連中の半数を昏倒させた所で残り奴らはなりふり構わず逃げ出し始めた。

 当然バルバス達がそれを見逃すはずもなく、後ろからでも容赦なく仕留めていく。

 ただ一人だけ広場の端にいてバルバス達から距離のあった奴が何とかその場所からは逃げおおせた。

 勿論それを見逃すバルバスじゃなく、その指示を受けて先回りしたティータが土の精霊術を使い見た目では区別できない一時的な底なし沼を作り出してそこへ首まではめてガッチリと拘束した。

 配置の関係でほとんど出番のなさそうだった俺は戦闘開始前から気配探知に集中していて、他に逃げだす奴がいないか注意していたがティータの仕留めた奴が最後みたいだ。

 その考えはバルバスも同じみたいで仕留めた連中を1か所へ集めるよう指示を出した。

 俺もそれを手伝うため待機してた所から広場へ向かったら、俺達の偽装は鉱夫達をきっちり騙せていたようで怯えたような眼を向けられてしまう。

 これ以上正体を隠しておく必要もないんで、目以外を隠していた布やフードを取って顔を見せたらまずヴォ―ガイを含む獣人やドワーフ達がホッとしてくれ他の鉱夫達へ俺達の事を説明してくれた。

 そんな彼らの首から奴隷化の首輪を外してやり、その首輪を気絶しているグリシャムの息がかかった連中へはめ直していく。

 こいつら全員に首輪を嵌めておきたいんで、ティータが底なし沼へはめた奴もここへ連れてくるようガディに頼む。

 そのティータには外の制圧が終わったとジアトル達へ伝えに行ってもらった。


お読みいただきありがとうございます。


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