#134 後始末した、王都 6
外に出た所で仲間達へ念話をつなぎ、ジアトルから言質を取れたんで坑道へ入るための準備をするよう伝えた。
けどみんなはこれを予想していたみたいでもう鎧を身に着けるといった準備を終えていた。
なので急ぎ宿舎へ戻りティーエとティータの手も借りて鎧を着こんでいったんだが、ゼペット達も含めて俺が最後に用意を終えて宿舎を出た。
案の定先に用意を始めたジアトルやその護衛達は先に坑道前で待っていた。
お互いの姿を確認すると坑道へ入る目的が目的だけに皆黙々と中へ進んで行った。
入り口から近い順にゼペット達ドワーフが新しい鉱脈を探して試掘をした箇所へ案内して、そこがダメだと判断した理由を説明していく。
最初の内は坑道も広く全員で移動できたが、だんだん狭くなってきたり念の為分岐点毎に仲間達やジアトルの護衛を残してきたんで、最後の箇所に着いた時はゼペットとザイオに俺以外はジアトルに護衛が一人と鉱山技師だけになっていた。
「ジアトル殿、ここが昨日作業をした新しい鉱脈が出そうな最後の目ぼしい場所じゃの。見ての通り屑鉱石の鉱脈に行き当たった。ここもこれ以上掘った所で採算の取れる石は取れんじゃろうの」
「ええ、拙い私の目で見ても良く分かります。どうやらゼペットさんの話に嘘や誇張はないみたいですね」
「最後に付け加えると儂らには他に有望そうな場所も見つけられなんだ。そうじゃ、この際聞いておきたいんじゃが、そこの技師殿には何か他の見立てでもあるのかの?」
「え、ええ。勿論、すぐにでも新しい提案をさせてもらいますよ」
「ふむ。ならついでに聞かせてもらうがの、ジアトル殿の商会は最近この鉱山を権利を買い取ったと聞いておるが、その時お主はどういうふうにここを評価したんじゃ?」
「な、なにを当たり前な事を聞くんですか。手に入れるに値する価値があると思ったから、ここの買取をお勧めしたんですよ」
はっきりと動揺が見て取れる技師の弁解を看破眼で見ていたんだが、これは明らかな嘘だな。
どうして俺が看破眼を起動していたのかというと、ゼペットの説明に対する受け答えの真偽でジアトルが何かを隠していないかや、この状況を予め知っていたのに演技をしているのかを見極められると思ったからだ。
まあ結果としてはジアトルの態度や言葉に演技や嘘は見られず、代わりに彼の雇っている鉱山技師が嘘をついているのを見つけた訳だ
この技師にどんな思惑があるのかまでは占有領域下じゃないここだと見通せないが、少なくとも技師からの進言だけで鉱山買収なんて大きな金のかかる話が決まる筈ない。
間違いなく筋書きを書いた黒幕は別にいて、裏でこいつとつながっている可能性が高いな。
本音を言うとコランタ商会の内輪の事情なんかに余り首を突っ込みたくはない。
だがゼペット達が後腐れなくここの仕事を辞めるためにも、向こうから手を出してきた時に備えてこの技師を操っている黒幕とそいつが何を企んでいるのかくらいは知っておいた方がいいだろう。
となると俺の看破眼が嘘を見抜けるというのをジアトルが信じてくれれば技師から簡単に話を聞き出せるんだが、あいつに嘘を否定されると水掛け論になりかねない。
ここはちょっと搦め手を使って攻めてみよう。
「あ〜たびたび口を挟ませてもらうが、ジアトルさん。そこの技師は嘘を言ってるぞ。少なくとも新しい提案ってのとここの価値があると思ってたってのは嘘だ。もしかするとここの鉱脈がもう涸れけてるって始めから知ってたのかもな」
いきなり俺から嘘を指摘され、技師は絶句して固まってしまう。
一方ジアトルは黙ったまま話をきいていたが険のある目つきで俺を睨みつけてきた。
「確かリクさんでしたね。これまでは順当な要求だったので口出しを止めませんでしたが、流石に部下に対する侮辱は看過できませんよ」
「確かに部下をかばうのは当然だと思うが、こう見えて俺の目は嘘を見抜けるんだ。けどそれをただ信じろっていうのは無理な話か。だったらこいつを使って白黒はっきりつけてくれないか」
格納庫からジアトルや技師に見えるように奴隷化の首輪を取り出した。
「こいつが何かは分かるよな。ジアトルさんがこれをその技師に着けて質問すれば俺の指摘が嘘か本当かはっきりする。もしそいつの話が本当なら首輪はすぐに外せばいいし、あなたとそいつに金貨を1枚ずつ払うよ。嘘だったら何故こんな嘘をついたのか偽りなく問いただせるだろう?」
「そうですね。私にとっては悪くない条件です。しかしそれをしてあなたにどんな得がるんですか?」
「まあ嘘を言ってる確信があるから俺は絶対に損はしないんだが、そいつから情報が引きだせるのが俺にとっての得だろうな。ここまで首を突っ込んでるんだ、もし火の粉が飛んできた時にきちんと対応出来るよう裏の事情を知っておきたいと思うのは当然だろ」
「・・・確かに。良いでしょう、あなたの提示した条件で彼の発言が嘘か本当かはっきりさせましょう」
俺の差し出していた奴隷化の首輪をジアトルが手に取った。
それを見て絶句したままこちらの様子を覗っていた技師の表情がさらに引きつり、足をもつれさせながら慌てて坑道の出口へ向けて逃げ出そうとした。
当然こいつの動きに意識を割いていて俺が取り押さえようかと思ったんだが、それはジアトルの護衛も同じだったようで立ち位置の関係から俺が仕掛けるよりも早く後ろから技師へ組み付いてそのまま地面へねじ伏せた。
「あ〜これでそいつが嘘をついていたのは間違いないんだろうが、どうしてこんな嘘をついたのかその訳は聞き出しておいた方が良いと思うぞ」
「ええ、私も同感です。お借りしたこの首輪を嵌めて尋問してみましょう」
頷いてきたジアトルは俺に向けていた険のある目つきを今度は技師へ向けて、ためらう事無くその首に奴隷化の首輪を嵌めた。
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