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#132 後始末した、王都 4

 宿へ戻ってからは夜の間に仲間達へ事情を話して賛同を貰い、王都の外へ出れば野営も必要になるだろうからテントや食料といった必要な物が十分な数あるのを確認して眠りについた。

 朝になり目的地までの移動にそう危険はないと思うが、念の為全員完全武装の上に旅装を羽織って部屋を出た。

 1週間分の代金は前払いした宿を1泊しただけで出ていくのはちょっともったいないが仕方がない。

 加えて戻ってこられるのがいつになるか未定なんで、グライエンさんとの連絡手段を確保するためこれも勿体ない気がするがもう5日分追加で宿代を払って今の部屋を押さえて宿を出た。

 まだ早朝という時間だったんで王都とはいえ通りを行き交う人出は少なく、馬やグリアに騎乗してもすいすいと城門へ向かえた。

 それでも待ち合わせをした城門前の広場は王都を出ようとする旅人や商人でもう込み始めていて、集合時間の前に広場に着いてもヴォ―ガイ達をすぐには見つけられなかったが匂いを頼りに向こうが俺達を見つけてくれそう時間のロスなく合流できた。

 それから朝早くだった事もあり王都を出る審査もスムーズに終えられて城門を潜る。

 道案内をしてもらうダンジーにはヴォ―ガイやザイオと共にグリアに騎乗して先頭に立ってもらい、かわりに俺はティーエと一番体力ある馬に二人乗りをして王都を出発した。

 

 出来るだけ早く王都へ戻ってきたいんで皆の騎乗する馬達には全速で走ってもらい、一番負担のかかる俺達が二人乗りしている奴には常時回復魔術をかけて少しでも疲労を軽減してやる。

 審査の待ち時間の間に聞いた通りなら目的地の鉱山まではダンジーが休まず走れば一昼夜と半日、普通の旅人が野営しながら移動すれば3日はかかるそうだ。

 幸い王都を離れるにつれ街道が空いてきて、馬達やグリアが走り易くなっていったんで数回の休憩を挟みながら日が暮れる頃には目的の鉱山の麓にまでやって来られた。

 急いではいるが無理をする必要はないんで、道に沿った開けている場所で野営にする。

 そのためちょっと時間が出来たんでトロスへ転移門をつなぎ、すぐに移住の話がまとまってダンジーの仲間達が移動する場合に備え、廃坑への物資という名目で食料や水なんかを念の為補充しておいた。

 それから一夜明け日の出と共に野営の後始末をして移動を再開し山道を登って行く。

 馬車も通れるくらい整備された道だったんで1列になれば馬でも十分に走れ、昼になる前にはトロスの廃坑とよく似た坑道の入り口やその周辺の建物が見えてきた。

「あそこが今俺達の働いている鉱山だ。まだ昼にもなってないんで皆は坑道の中に入って仕事をしていると思う。ただ日が暮れる前には全員出てくるだろうから、それまでは俺達の宿舎で待っていてくれ」

 先頭を行くグリアの上からダンジーはそう言ってくるが、他人の所有地に無断で入って居座れば要らない争いの元だ。

 どんな反応をされるか分からないが、最低限こっちから出向いてここの責任者へ頭を下げておいた方が無難だろう。

「いや、その前にここの責任者と引き合わせてくれ。俺達は何の先触れもなくいきなりやってきた部外者だ。盗賊なんかと間違われたくないんで、先に挨拶をしておきたい」

「言われてみると確かにそうだな。となるとここの責任者は坑道に入らないんで、いつも滞在している宿舎にいると思う。あの建物だ。ついて来てくれ」

 そう言ってグリアに声をかけダンジーが誘導する先には平屋だがここでは一番しっかりした建物が立っていて、出入り口を守る警備員にグリアから下りたダンジーが話しかけた。

「鉱夫をしているダンジーです。王都から戻ったんでその報告にきました。あと知り合いが一緒についてきてるんで、ジアトル様にご挨拶をさせてください」

 そう頭を下げるダンジーに警備も鷹揚に頷き返して建物の中へ入っていった。

 そんなやり取りの間に俺達も地面に下りて待っていると、呼びに入った警備の他にもう1人武具を身に着けた男を従えてまだ二十歳前くらいの青年が出てきた。

「良く無事に戻りました。ダンジーさん」

「はい、今回はこちらの願いを聞いていただきありがとうございました」

 もう一度頭を下げるダンジーに気にしないでいいですよ、とその青年は鷹揚に手を振って返す。

「当然の事ですから構いません。それで後ろの方たちが私に紹介したいという方達ですね?」

「はい。獣人とドワーフは故郷で一緒に暮らしていた者達で、人族はその知り合いでここまでの護衛として一緒に来てくれました。2〜3日彼らがここに滞在してもいいでしょうか?」

「なるほど。後ろの方々初めまして、コランタ商会のジアトルといいます」

 そう挨拶され全く想定外の場所で以前内部のごたごたに巻き込まれたコランタ商会の者と鉢合わせしたんでちょっと驚いてしまった。

 それが表情にも出たみたいでジアトルという青年はそこを見逃してくれなかった。

「そこの方、何か可笑しな事でもありますか?」

 続けてそう言われても正直に理由を話す訳にはいかないな。

 この人がアリスさんに好意的な立ち位置なら事情を話せば最低でも感謝や好感を持ってくれるんだろうが、もしグリシャムの側に人間だったら目も当てられない。

 占有領域外の看破眼じゃあ相手の心情や記憶までは見通せないし、ここは何も知らないふりをして誤魔化しておくべきだな。

「いや、海運が主体の筈のコランタ商会が鉱山経営にも手を出してるなんてと、ちょっと驚いただけで他に他意はありませんよ」

「なるほど、当商会の事をご存知立ったんですか。それなら驚かれたのも分かります。ああ、皆さんの当地への滞在は好きにして頂いて構いませんが、坑道や鉱石の集積場へは近づかないで頂きたい。ダンジーさんに場所を聞いて厳守してください。では、私はまだ仕事があるのでこれで失礼します」

 こちらに一礼したジアトルが出てきた建物へ戻っていくのを礼を返して見送って、俺達もダンジー達が寝起きしているという宿舎の方へ向かった。


お読みいただきありがとうございます。


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