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#126 引き入れた、王都までの道 11

 スキルで捉えた気配はこの感じ方だと恐らく魔物のものだろう。

 数は3桁に届いていないが最初に感じた通り一番弱いやつでもオーガくらいはありそうだし、数体だがグリアやドグラに迫る気配を放っている個体もいる。

 それだけじゃなくさらに一体飛び向けた奴もいるみたいで、気配の大きさだけで判断するならそいつは俺が戦った中でバルバスに次いで強敵だった5本角のオーガと同等かそれ以上かもしれない。

 そんな奴らが探知範囲に気配を捉えて以降まっすぐこっちに向かってきており、となれば今居るこのドワーフの集落を襲うつもりなのは間違いないな。

 幸い移動速度は歩くくらいの速さみたいなんで、すぐにここを引き払えば多分今の時点での接触は回避出来る。

 ただし少し離れているとは言え同じ盆地の中には獣人達やドワーフも避難しているあのエルフの集落がある訳で、この連中がここへやってきた後で次はエルフの集落へ向かう可能性も十分あるとみるべきだろうな。

 もしそうなったら最悪の場合あそこの住人達から脱出する時間を稼いでほしいと頼まれる可能性も出てくる。

 今後のエルフや獣人達との関係を考えるとこう依頼されたらかなり断り辛い。

 そうなった時に無理をしてでもアルトン伯爵の護衛に残ったバルバス達を呼び寄せて非常事態に備えるかを判断するためにも、この連中の正確な力量を測っておいた方がいい。

 ここへ向かってくる途中でならドワーフ達さえ事前に退避させてしまえば、戦闘をしかけても自由なタイミングで撤退できる。

 威力偵察をやるなら今の内だ。

 となれば少しでも早く動いた方がいい位置取りで待ち伏せが出来るんで、迅速にドワーフ達をここから廃砦か廃坑へ移動させよう。

 それにはザイオから指示をさせると早いだろうから作業を監督している所に近づいて声をかけた。

「ザイオ、外の状況に変化があった。強力な魔物の群れがここに向かってきてる。俺達はここから打って出て一当てしてみるつもりだが、相手の気配を参考に推察できる力量から考えて絶対に阻止できるとはいえない。だからドワーフ達にはここから退避してほしい。設備の移設作業はどれくらい進んでる?」

「それは大事じゃの。実を言うと設備の移設は終わっておる。黙っておって悪かったが今は備蓄しておった鉄なんかの鉱石を運んでおる所じゃからすぐに退避は可能じゃ。リク殿も無理に戦わず引いてもらっても構わんぞ」

「いや。近づいてくる連中がここに来た後でエルフの集落へ向かう可能性もあると思う。そうなった時に備えて連中の力量を今の段階で確認して、ついでに少しでも戦力を削いでおきたいんだ」

「なるほどの。そう考えてくれておるんなら止めるのは野暮だの。なら邪魔にならんよう儂らはすぐにここを退避するとしよう」

 続けてザイオが声を張り緊急事態の発生と集合の指示を出すと3分と経たずにドワーフ達は全員楔の周りに集まってくれる。

 そんな迅速に対応してくれた面々には悪いが時間が惜しいんで詳しい事情の説明は退避完了後ザイオにやってもらう事にして、4〜5名ずつ楔の転移で廃坑の方へ移動してもらう。

 そうしてドワーフ達を送り出す時間を利用し、他の楔から余剰ポイントを引き寄せて少し消耗気味の魔力を回復させておいた。

 合わせて非常時に地脈炉を使った回復用のポイントも体内に補充しておく。

 最後にザイオが転移するのを見送って楔を引き抜き、残った俺達は作業用に作ったゴーレム達を土に返して元ドワーフの集落を飛び出した。


 グリアとドグラに騎乗して集落から続く洞窟を走り抜け外へ出た後は、魔物の群れの予想進路に沿って森の中に入った。

 集落へ続く洞窟が見えなく所で足を止め、予想進路上の地面に魔力を流して最大数のゴーレムを作っていく。

 そのタイプは退却時に足止めをやらせる事になるだろうから、より防御力を持たせるため体格を厚みを持たせたパワー重視の標準タイプを選んだ。

 ただ地上には出さず上を通った時に下から奇襲できるよう地下で待機させておく。

 合わせて頭数を増やすために鎧人形も格納領域から取り出し起動させる。

 他にも戦力の追加としては精霊達もいるけど、その気配で隠れていても気取られそうなんで彼らは戦闘が始まってから呼び出すつもりだ。

 一方グリアにドグラは撤退時に加速した状態で戦場に突っ込み速度を落とさず俺やティータ達を回収して即座に離脱してほしいんで、ちょっと不満そうだったが少し離れた地中へ潜って待機してもらった。

 そういった準備を終えて俺やティータ達も鎧人形達と魔物の群れから死角となる大き目の木の陰に隠れ魔物の群れを待った。

 出来るだけ気配を殺し予想通りの進路で近づいてくる魔物の群れの動きを気配探知スキルで捉えながらゴーレム達へ指示を出すタイミングを計る。

 焦れる気持ちを押さえてその時を待ったんだが、ゴーレム達を伏せている地点の手前で一番強い気配を放つ個体がいきなり立ち止まった。

 強さの順通りにこいつがボスなんだろう一瞬の間をおいて周りを取り巻いていた連中も一斉に立ち止まる。

 そして俺が次にどう動くか決める間もなく、ボスだろう個体が声を張ってきた。

「その辺りに隠れているのは分かっているわ。大人しく出てきなさい。まあ、隠れたままでもいいけど、その時はここを迂回しあなた達を無視して集落の方へ向かうわ。10数える間だけ待ってあげる。どちらか好きな方を選びなさい」

 続けて声の主は言葉通り少し遅めにカウントを始めた。

 知性のある魔物もいるが声を聴いた感じだと恐らく魔人だろう。

 それ程侮っていた訳じゃないが、こうはっきり宣言し行動に移してくる以上全部とは言えないがこっちの仕込みに気づかれたみたいだな。

 奇襲には失敗したのは残念だが、話しかけてくるならそこから多少でも会話できれば思考や狙いを読み取ることもできる筈だ。

 それに隠れてやり過ごしたんじゃあ威力偵察にならないんでここは正面からぶつかってみようか。



お読みいただきありがとうございます。


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