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#118 引き入れた、王都までの道 3

 まだアルトン伯爵一行の追加の護衛だとバレたくないんで、近づいてきたり潜んでいる気配には気づかないふりをみんなに指示した。

 今の時点では手を出してはこないと思うが一応近接の防衛は騎乗しているグリアに任せ、俺は気配探知へ集中し目一杯探知範囲を広げてみた。

 領境となるこの辺りは不用意に開拓して隣の領と衝突が起きないよう緩衝地帯とするため街道が通っている以外は森林が広がっている。

 そんな森の中の街道から丁度視線が通らなくなるあたりに一定間隔を置き街道に沿って1人ずつ何者かが隠れていた。

 そいつらはアルトン伯爵一行が正面を通り過ぎると街道へ向けて動き出し、後に続いている俺達に気づいて一旦は隠れるが通り過ぎれば街道まで出てくる。

 そいつらは迷うことなく合流し、俺達を警戒して距離をとっており今はあわせて20名くらいの集団になっている。

 すぐには仕掛けてこないみたいだからしばらくは様子見なんだが、先行組にも何か変化がないか念話を使って確認しておいた方が良さそうだな。

(バルバス、気づいてたと思うが街道脇の森に隠れてた奴らが街道に出てきて俺達の後ろをついて来てる。今すぐ仕掛けてくる様子はないが、そっちでも何か行動に変化はあるか?)

(そうですな、われらは今丁度アルトン伯爵一行が野営予定の場所を通り過ぎたのですが、相変わらず一定間隔で隠れておるだけですぞ。ただ連中はこの場所から領境を超えたあたりまでいるみたいですな。)

(分かった。取りあえずはこのまま様子見だが、連中が仕掛けてくるようなら即応できるようにしていてくれ)

(御意。気配から推察して大した力量はない連中だと思うのでリク様なら軽くあしらえるでしょうが、それでも十分ご注意あれ)

 了解と返事を返して念話を切った。


 そんな風に俺達をつけてくる奴らが微増していく以外は特段の変化のないまま街道を進んで行き、空の赤みが増し始めたころ街道脇の野営地に到着したアルトン伯爵一行は予定通り夜を明かす準備に入った。

 それに合わせて先を行くバルバス達や後に続く俺達も距離を保って足を止る。

 これをやると間違いなく追加の護衛だと確信を持たれるんだろうが、どこから仕掛けられても即応できるよう先行班、追尾班ともに二名ずつ二手に分かれアルトン伯爵一行の野営地を囲むように俺達の野営場所を決めた。

 また足を止めたのは俺達の後をつけてきていた連中も同様で、街道から脇の森に入って動きを止めた。

 一方バルバス達が気配を捉えてくれている野営地の向こうの連中には別の動きがあったみたいで、アルトン伯爵一行が野営を始めたのを確かめた奴が動き出し同じように隠れている奴に声をかけ集まり始めていると念話で報告してくれた。

 明らかに怪しい動きだがこちらから仕掛けて連中を捕えても何もするつもりはなかったと白を切られれば後始末が手間になる。

 また今回の襲撃を諦め次の機会を待たれてもこれまた手間になるんで、やっぱり気づいていないふりを続け仕掛けてきたところを返り討ちにするのが一番楽に片が付きそうだ。


 そのため片方は眠ったふりをして連中には気を抜いているように見せながら俺達は全員起きて気配を補足したまま夜番を続けていると夜半を過ぎもう少しで空が白み始めるという頃につけてきていた奴らが動き出した。

 バルバス達が気配を捉えている方の様子も念話で聞いてみると隠れていた場所から一か所に集まっていたその連中も動き出したみたいなんで襲撃時間をあらかじめ決めて合ったんだろう。

 俺達に気づかれないように森の中をゆっくり近づいてくるが、気配の殺し方や感じられる身ごなしからして二手に分かれた片方だけでも十分制圧できそうだ。

 それでも俺達は少数なんで脇をすり抜けられても対応できるように夜番をしていた二組のまま前衛と後衛に分かれて野営地へ向かう連中の進路に位置取りを変える。

 こっちは俺が指揮官という事で呼び出した精霊達を護衛につけた上でティータとティーエが前衛に立ってくれた。

 進路上に立ったことでこっちに気づいた奴らは隠密行動を止めて全速で向かってきたが、俺の予想通り先頭の4〜5人をティータたちが秒殺してみせてくれたら残り連中はすぐに立ち回りを変えてきた。

 30人ほどの残りが全員一斉に足を止め、反転して逃げるのかと思ったが武器を構えてただティーエ達と間合いを図っている。

 連中の意図が分からないんで思惑を図るためケルブへ念話をつなぎ突撃させてみた。

 即座に突っ込んでくれたケルブが前足を振るって標的にした奴を気絶させるが、残りの奴らは仲間を助けようともせずケルブから距離を取る。

 警戒しながら一旦ケルブがティータたちの元まで下がると連中も最初の間合いまで距離を詰めてきた。

 これは時間稼ぎか、もしくは俺達を誘い出そうとしているのかもしれないな。

 となると向こうの状況も確認した方が良さそうなんですぐに念話をつないでみた。

(バルバス、仕掛けてきた連中が時間稼ぎをしたり俺達を野営地から引き離そうとしてるんだが、そっちへ仕掛けてきた奴らも同じか?)

(ご明察の通りこちらの連中もアグリスとアデルファを相手に同じような動きをしておりますな)

(やっぱりな。だとするとこの動き、アルトン伯爵一行に裏切り者が混じっていてそいつらのために襲撃から陽動へ切り替えたって考えた方がいいか?)

(そのお考えに同意しますぞ、リク様。なれば後詰めの我らはもう少し野営地によって裏切り者にも迅速に対処できるようにしてはいかかですかな?)

(それがいいな。すぐに位置取りを変えよう)

 念話を終えるとすぐに騎乗しているグリアに野営地の方へ後退りするよう指示を出した。

 近づく俺達に野営地の人達がどう反応するか見てみるときちんと夜番が俺達とあの連中の衝突に気付いたみたいでテントで寝ていた人たちも起きだしている。

 襲撃してきた連中とはまだ膠着状態が続いているがグリアが位置取りの変更を終えると、野営地の人達も戦闘ができる奴の頭数がそろったみたいで、その内の数人が敵か味方か確認をしに俺達に近づいてきた。

 この多少でもアルトン伯爵から護衛が離れ注意が一番外へ向くタイミングを裏切るつもりの奴らは計っていたんだろう、待機するふりをしていた5〜6名がアルトン伯爵のいる野営地の中心へ向けて駆けだした。


 裏切り者達にとっては絶好の瞬間だったと思うがグライエンさんもこれを事前に予期し備えていたみたいで部下を率いてアルトン伯爵のテントの前でそいつらを迎え撃った。

 こいつらが動き出した瞬間から俺達も追いかけているが追いつく前にアルトン伯爵のテントへ勢いに任せて踏み込もうとする裏切り者達をグライエンさん達は剣を打ち合わせ数合の間何とか押しとどめてくれる。

 その稼いでくれた時間のおかげで俺達も間に合い、グリアの前腕撃や俺の魔術に刀術で後ろから仕掛け10秒とかからずに裏切り者を全員昏倒させた。

 そんな自分たちに呼応して動いた裏切り者達が全員仕留められるのを見せられ、襲撃を仕掛けてきた連中にこのまま時間稼ぎや陽動を続けるかそれとも逃げるかといった迷いが生まれるのを明らかに見て取れた。

 そんな隙を逃す俺の仲間達じゃないんで一気に攻勢をかけ、迷いのため動きの鈍ったその連中をあっと言う間に制圧してくれた。


お読みいただきありがとうございます。


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