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#114 儲かった、海路 19

 審判役が俺の勝利宣言をしたしこれで賭け試合にはそう問題なく勝てたが、間違いなく自分の築いた花街の縄張りや商会の財産を諦めるベドールじゃないだろうな。

 だが預けた金を取り立てる名目は立ったし、マグガムにつけ入る隙を与えないようここからの対処はスピードが重要だろうから早速念話をつないだ。

(バルバス、予定通り賭け試合に勝ったからベドール商会へ踏み込んでくれ。犯罪の証拠や金目の物の確保を優先して、ただ逃げる奴は無理に追わなくていいからな)

(御意、お任せくだされ。リク様。すぐに制圧を開始しますぞ)

 そうバルバスが気合の入った答えを返してくれたんで向こうは上手くやってくれるだろう。

 こっちも気を抜かずに後始末をしないといけないが、それでも俺達から手を出しては不味いんでベドールの反応待ちだな。

 取りあえずは魔術師に譲らせた転移の腕輪を格納庫にしまい、鎧人形の残骸を回収に向かおうと歩いていたら漸く落ち着いているように見せてはいるが明確に怒気を孕んでいるベドールが口を開いた。

「やれやれ、穏便に済ませようと思っていたのに馬鹿な人達ですね。お前達この場にいる全員を一人も逃さず皆殺しにしなさい。高い報酬を払っているんです、これ以上の失態は許しませんよ」

 そんなベドールの檄に賭け試合の終了時点から殺気を漲らせていたベドールの取りまき達が即座に反応して自身の獲物を一斉に獲物を抜いた。


 そこそこの腕前をしている連中だけあってさっきの試合から俺が一番の強敵だと判断したんだろう、30人近くいる内の20人ほどを率いて一番腕の立つ剣士が俺に向かってくる。

 俺のやったポーションと自前の魔力回復薬で回復した魔術師も俺を狙い、その他の連中がこの賭けの立ち合いに呼び出された顔役やメリルレスタ商会の一団へ向かって行った。

 正直アデルファとアグリスをこの連中が侮り過ぎていて噴き出して笑いそうなんだが、護衛対象を抱えている俺達に取ってはありがたい展開だ。

 俺1人でも十分返り討ちに出来ると思うが、多少手間だし護衛の頭数を増やす意味もあってケルブの精霊武装を解除しついでに他の三体の精霊たちも周りに召喚した。

 けど、あんまり意味はなかった。

 何故かというとアデルファにアグリスもベドールが喋り終えた時点で動き出していて、仲間を率い先頭に立って俺へ向かってくる一番腕の立つ剣士へ横から不意を突いてアグリスが仕掛け戦斧の一撃で仕留めてしまう。

 次に注意が必要そうだった魔術師も拳を振り込み拳圧を加えてアグリスが放った炎弾が直撃し一撃で昏倒させた。

 その様子をみてひるんだ後続達へもアグリスは容赦なく戦斧を振るっていく。

 それはナイレヤ女史の護衛に回ってくれたアデルファも同じで武器を1振りするごとに最低でも1人は打ち倒していって、途中からは逃げ出そうとする奴もいたが3分と持たずにベドールが連れてきた取り巻き達は全員昏倒した。

 最後に後退りしながら歯噛みをしているベドールが残ったんだが、俺が手刀を撃ち込んで昏倒させベドール商会側の制圧は完了した。

 

 さて、ここからはマグガムが何か手を打ってくる前にやるべきことを済ませてしまおう。

 ただこっちから巻き込んだ義理があるんで対応が難しいだろうメリルレスタ商会にも出来るだけ配慮しないとな。

 雑用を押し付けて悪いが、ベイト氏にアデルファとアグリスには手元に残してある奴隷化の首輪をベドールやその取り巻き連中へはめてもらい俺はメリルレスタ商会一行の前に立った。

「ナイレヤさん。俺達はこれから掛け金の回収にこの連中を連れてベドール商会へ向かおうと思ってるんだが、そっちはこれからどうする?」

「それなんだけれど正直なところ考える材料が少ないから判断がつかないわ。あなたはこれからどうなると考えているの?」

「恐らくだがマグガムがこの事態を知れば保身のため悪事の証拠揉み消しを狙ってベドール商会へ仕掛けてくるんじゃないかとみてる。まあ返り討ちにして代官様へ突き出してやるさ」

「そう、なら私たちは商会に引き上げて事態が落ち着くまで身を隠しているわ。その口ぶりだとマグガムに手を出しても罪を着せられずどうにかする当てがあるんでしょ?」

「まあね。隠してて悪かったが、実を言うと確たる証拠を押さえて提出すれば代官様がマグガムを排除してくれるって約束をそっちの商会へ顔を出す前に取り付けてあるんだ」

「薄々そうじゃないかと思ってたわ。じゃあ私にも急いでやらないといけない事ができたし、面倒な奴の排除は出来るだけ早めでお願いね」

 小さくため息をついてから柔和な表情に戻ったナイレヤ女史へ頷き、立ち合い人として呼び出された顔役や連れてきた護衛を連てれ引き上げていくその姿を見送った。


 そんな風に俺がナイレヤ女史と話している間にアデルファ達はベドール商会の連中へ奴隷化の首輪を嵌め終えてくれていて、忌々しげな表情を隠そうともしていないベドールに案内させこいつの商会へ向かった。

 意図して人払いがされていたんだろう賭け試合をした広場周辺に人通りは全くなかったが、歩いて行くにつれ深夜の花街相応の人数とはすれ違い、戦闘の騒音が聞こえたんだろうベドール商会に着くと結構な人数が通りに出てたり窓から商会の建物の様子をうかがっていた。

 その連中はベドールやその取り巻き達を連行している俺達にも好奇の視線を向けてくるが無視して商会の建物へ乗り込んでいく。

 移動の途中に来たバルバスからの制圧完了という念話の通りに入り口を入ってすぐの広間にはとらえた使用人や戦闘員が集められており、連れてきたベドールやその取り巻き達もそこに合流させて見張っておいてもらった。

 必要あるならベドールから聞き出そうとも思っていたが、ティータもきっちり目的のものを見つけてくれていたんでベイト氏と一緒に案内してもらう。

 どうやらベドールの執務室だという部屋の一角が隠し部屋への扉になっており、中に入ると少し狭い部屋の中には中々の金品と何冊かの帳面が整然と詰まっていた。

 先に中の品を確認してくれたティータによるとここにある物は海賊やこの町の盗賊から買い付けた盗品とその売買記録にマグマムや他の町の有力者への賄賂や悪事の揉み消しの際に渡した金銭の額が記録された帳面だそうだ。

「ベイトさん、ここの盗品やこの帳面なんかでベドールだけじゃなく芋蔓式にマグガムまで罪に問えるかな?」

「ベドールという証人も押さえてありますし、問題ないと思います」

「だったら後はここの品やベドール達を代官様へ引き渡すだけだけど、どうすればいいかな?」

「そうですね、証拠の品やベドール達の身柄の回収はどんなに早くても明日になるでしょうが、この帳面だけでもすぐにランバルト様へお届けすれば今夜の内からマグガム捕縛に動きだせると思います」

「それならアグリスとアデルファを護衛につけるからすぐに行ってきてくれ。ただマグガムが仕掛けてきた時に俺達に行動が正当だったと証明してほしいんで出来るだけ早く戻ってきてほしい」

 頷き返してくれたベイト氏はすぐに動いてくれ、護衛につけたアグリス達と2時間と経たずに戻ってきてくれたが、結局朝までマグガム本人やその手下がベドール商会や確保しているドックへ仕掛けてくることはなかった。

 それどころかベドールが俺達やメリルレスタ商会と賭け試合をしてる話さえ満足には伝わっていなかったみたいで、送った書類を証拠に踏み込んだ第三警備隊の詰め所であっさりマグガムを捕縛できたと夜が明けて昼を過ぎた頃ベドール達を引き取りに来てくれた第一警備隊の騎士達が教えてくれた。


お読みいただきありがとうございます。


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