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#112 儲かった、海路 17

 中断した分も取り戻すくらいぐっすり眠って自然に目が覚めるともうお昼を過ぎていた。

 寝ていた間の事を尋ねるとベイト氏がもう2回伝令に走ってくれたというんで何か新しい情報や指示がないか聞いてみた。

 朝食の買い出しを兼ねて先に尋ねたギラン商会で面会したエクトールさんは事態の進展の速さに驚いていたがある程度は織り込んであったみたいで、ベドールとの賭けを受けた俺達の行動を容認してくれ噂の拡散は止めて様子見をして変わりに後始末の準備を優先してくれるそうだ。

 次に昼の買い出しのついでに足を延ばしてくれた第一警備隊の詰め所で会ったランバルトさんも成り行きの速さに驚いていたが策の変更に文句はないみたいだ。

 思惑の通りに今日の夜マグガムとベドールの犯罪の証拠を押さえられれば、明日の朝すぐに連中を処断できるよう準備しておいてくれるそうだ。

 エクトールさんもランバルトさんも俺の行動を取りあえず支持して援護くれるみたいなんで一安心だ。

 こうなると俺もやるべきことをしっかりやらないとな。

 となるとこき使って悪いがベイト氏にもう一度夕食の買い出しを装ってドックのバルバスたちへベドールに書かせた預かり証を届けてほしいと頼んだ。

 合わせてベドール商会の近くで隠れて待機できる場所へバルバス達を案内してほしいという頼みも二つ返事で快諾してくれたベイト氏にはきちんと頭を下げてお礼を言わせてもらった。


 その後は何かあった場合にすぐ動けるよう鎧を身に着けるといった準備をして、狭い部屋の中でも座禅を組んで出来る魔力操作の訓練を消耗しない程度にやって時間を潰した。

 そうして夕方前に俺の頼みで出かけたベイト氏が夕食もきちんと調達して日暮れ頃に戻ってきた。

 その食事を受け取って食べながら成果を報告してもらうと依頼した通りに預かり証をちゃんとバルバスへ届けて、ベドール商会近くの隠れられる場所へも案内してくれたというんで改めてお礼を言っておいた。

 一応バルバスに念話で確認すればきちんと預かり証を受け取りベドール商会を監視できるところに身を潜めてくれているみたいだ。

 ちなみにバルバスにはガディを補佐につけ土の魔術や精霊術で隠し部屋を探す役としてティーダも同行してもらっている。

 ドックに残っているのがティーエとギラン商会の管理者候補だけになっているが、もしもの襲撃なんかがあった時はザシルトに乗って海へ出るよう念話で指示してあるんでそう心配はいらないだろう。

 そんな風に念話をしながら夕食を終えた後はさっきまでやっていた訓練に戻って時間を潰していると夜半の大分前にバルバスから念話が来た。

 どうやらベドールが結構な数の取り巻きを引き連れて自分の商会を出たみたいだ。

 その取り巻き達は中々の手練れぞろいのようだが、遠目から見た感じでは3本角のオーガを超えるような奴はいないとバルバスは自身の見立てを報告してくれた。

 3本角のオーガに及ばない程度の連中なら余程の隠し玉でもなければまず負けはしない。

 ほとんどないと思っていたが5本角のオーガ上回る未知の強敵とかち合うというリスクはなくなったと思ってよさそうだ。

 そんなバルバスとの念話を終えてしばらくするとナレイヤ女史が自身で俺達を呼びに来てくれた。


 ナイレヤ女史御付の護衛を先頭にナレイヤ女史や他にもその周囲を固める4〜5人の護衛達に俺達を加えてメリルレスタ商会を出発した。

 夜半近くで人通りのほとんどない静かな花街の中を皆無言で進んで行く。

 5分ほど速足で歩いて見えてきた賭け試合を行う広場にはベドールとその取り巻きが先に陣取っている。

 ベドールが連れている連中の力量を感じ取れる気配を元に推察すると2人ほど頭一つ抜けたやつらがいるが後は1本角のオーガと同等くらいの気配の大きさなんで蹴散らすのに問題はなさそうだ。

 その2人にしてもバルバスの見立て間違いはなさそうで勝つのはそう難しくないはずだ。

 ただ取り巻きは30人程と町中を歩いてくるだけの護衛としては数が多すぎる。

 恐らく賭け試合に負けた場合はこの連中を使ってこっちを黙らせる腹積りなんだろう。

 まあ、そう難しくなく返り討ちに出来るだろうが、無駄な怪我をさせないようにナレイヤ女史と立ち回りを確認しておいた方がよさそうだ。

 話す間を確保するためナレイヤさんの前に出て全体の歩くスピードを押さえながら口元を読まれないように前を行く御付をブラインドにさせてもらった。

「ナイレヤさん。多分気づいていると思うが、ベドールはこっちの勝ちが決まったら賭け自体をなかった事にしようとあの取り巻き達をけしかけてくると思う。間違いなく俺達で蹴散らせると思うが、連れてきてる護衛も含めて無駄に怪我をしないためにも俺達が守りやすいように試合の決着がついたら一塊になっててくれるか」

 時間がなくて急に俺が話しかけた訳だが、ナイレヤ女史はポーカーフェイスを崩さず答えてくれる。

「その考えに私も異存はないし、きちんと邪魔にならないようにするわ。けど2〜3人助けてほしい立会人がいるの。そちらもお願いできないかしら?」

 なるほど、この試合の後の事も考えて立会人の顔役達に恩を売っておきたいっていうのは分かる話だな。

「分かった。出来るだけ無駄死が出ないようにやってみるが、ナイレヤさんの方でもその助けたい奴に声をかけたり自分が動いたりして今言ったように出来るだけまとまって俺達が守りやすいよう立ち回ってくれ」

「ええ、いいわ。出来るだけあなた達の足手纏いにならないよう気を付けるわ。あと賭け試合に勝った後の話ばかりしてるけど試合自体もよろしく頼むわね」

「ああ、任せてくれ。試合に護衛、どちらも全力で役割を果たさせてもらう」

 頷くナイレヤ女史に頷き返して、出来るだけ自然に歩く速さを戻しながら試合会場の広場へ乗りこんでいった。

 俺達が会場に着いてもまだここに顔を見せていない顔役が2〜3人いたみたいが、俺達とベドール達とがにらみ合いなる前に到着して審判役に指名されている顔役が賭け試合の開始を宣言した。

 続いて代表は前にという言葉に俺が試合場となる広場の中央に進み出る。

 ベドール側で二人いた手練れの内、一対一の試合なんで剣士の装備を身にまとっている方が代表として出てくるかと思ったんだが、迷いなく杖を持つ魔術師のような方が賭け試合の代表として俺の前に立った。


お読みいただきありがとうございます。


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