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#110 儲かった、海路 15

先週は時間が作れず執筆できませんでした。

申し訳ありません。


「リク様。起きてもらえますかね?」

「何かあったのか?」

「ええ、十人ほどが一団になってここに近づいて来てます」

 それを聞いて一気に意識が覚醒し、寝ていたベッドの上で上半身を起こして建物の外の気配を探ってみた。

 確かに10人ほどの気配が密集してこのメリルレスタ商会へ続く道を真っ直ぐこっちへ向かって来ているみたいだ。

「ここは花街ですからね、深夜でも人通りがあるのは不思議じゃなんですけど、酔った風な足取りじゃなしきちっと集団で動いてます。ベドール商会が動いたんだと思いますけどまだここを襲ってくるって決まりじゃないですし、それでも一応いつでも動けるようにした方がいいと思ったんで声をかけさせてもらいました」

 最悪を想定して対応を考えるのは当たり前だし、起こしてくれたアグリスには感謝だな。

 ただ事が起こる前に俺達が前に出たら本来ここで警備をしている連中の面子を潰しそうなんで、ここは様子見だな。

「よく分かった。俺もすぐに準備する。今はこの部屋で待機だが、連中が仕掛けてくるようならアグリスにアデルファは俺を待たず先に対応へ出てくれ」

「了解」

「お任せください」

 返事を返してくれたアデルファにアグリスは身に着けていた鎧を再点検して、格納庫にしまってある各自の武器も取り出して問題ないか確かめいつでも飛び出せる体制を取ってくれた。

 俺の方もベッドから出て今のやり取りで目を覚ましていたベイト氏に手伝ってもらい一旦脱いでいた鎧を着こんでいく。

 その間も外の気配には注意を払い、急いでいたんだが鎧を身に着け終わる前に近づいて来ていた集団がメリルレスタ商会の前に着いた。

 俺達の強引な訪問もあって6名に増員していた入り口の警備達も警戒しているようだがそのまま襲い掛かってきたりはせず、その集団から1名警備達の方へ進み出た。

 多分何か話かけられたんだろう警備の1人が警戒しながらも商会の中に入りナイレヤ女史の部屋へ向かって走り出した。

 目的の部屋へ飛び込んで報告をし、少し間をおいて指示をもらったんだろう警備が入り口へ走って戻っていく。

 同時にナイレヤ女史も自分の部屋を出てここへ来るみたいなんでこのまま待っておこう。

 その間にも伝令に走った警備が入り口に戻り、多少会話したんだろうと思う間をおいて前後を警備に挟まれる形で近づいてきた集団が商会内へ入ってきた。

 そこまで感じ取っている間に俺も鎧を身に着け終わり、ナイレヤ女史が俺達の部屋へやってきた。

「ちゃんと全員武装してくれてるってことは外の事態に気が付いているのね。なら話が早いわ。誰がやってきたかまで気づいてる?」

「いや、流石にそこまでは分からない。中に通したみたいだが誰がどんな要件でやってきたのか教えてくれるか?」

「分かったわ。やってきたのはベドールとその護衛達でわたしと直接話がしたいそうよ。私の予想よりずいぶん早い動きだし追い返してもよかったんだけど、向こうの腹の内を探れるいい機会だと思ったから会うことにしたわ」

「なるほど。その判断に文句はない。となると話の内容をどう予想する?」

「恐らくだけど、あの書類の話がもうあいつの耳に入ったのね。探りを入れると同時に事実だと当たりが着いたら、自身の商会の力を背景に脅しをかけてくると思うわ。あとまずないとは思うけど実力行使に出てくる可能性もゼロじゃないわね」

 ナイレヤ女史の考えに俺も異論はないし、ベドールがあの書類をどれくらい脅威に感じているかその態度で図るにはいい機会だな。

 ベドール本人を直に見ておくいい機会でもあるし護衛を名目にして俺達もその会談に同席しよう。

「ならベドールとの面会には俺達も立ち会って睨みを利かせた方がいいか?」

「まさにそれをお願いしようと思ってここに顔を出したの。やってもらえる?」

「ああ、任せてくれ。俺達の準備は済んでるから、このままあんたについて行くよ」

「じゃあ、お願いするわね」

 頷いてこの部屋を出て行くナイレヤ女史に俺達4名も続いた。


 部屋の外で待っていたナレイヤ女史の御付を先頭に全員無言で商会内を歩いていく。

 応接室の前まで来て御付がドアを開けるとあの集団がもう部屋の中に通されていたみたいで、1人ソファーに座っていた丸形の体系をして能面のような笑みを浮かべている男が徐に立ち上がって口を開いた。

「これは、お久しぶりです。ナイレヤお嬢さん。ご無沙汰いたしております」

 ただナレイヤ女史は返答せず優雅な歩きを崩さないままベドールの向かいのソファーへ腰を下ろした。

 一方ベドールはわざとらしくやれやれといった表情を作ってから腰を下ろす。

 その間に俺達も順番に応接室へ入って双方が俯瞰できるような位置取りをし、その途中で後ろにいたベイト氏があの男がベドールだと耳打ちで教えてくれる。

 俺達が立ち位置を決めて姿勢を正すと応接室の扉が閉められ、今度はナイレヤ女史から口を開いた。

「私たちは世間話をするような間柄じゃないわよね。早速本題を聞かせてもらいましょうか?」

「つれないお言葉ですね。まあ、いいでしょう。実は私の部下が面白そうな話を聞いてきたんですよ。何でもドゥルガス海賊団のアジトにあった書類を手に入れられたそうですね。大変興味があるんでよろしければ見せて頂けませんか?」

 ナイレヤ女史の予想通りだがずいぶん直球で探りを入れてきたな。

 こっちとしては出来るだけ短期間の間にベドールから仕掛けてこさせるのが目的な訳で、どう答えるかベドールを良く知っているだろうナイレヤ女史のお手並み拝見だな。

「確かにあなたが言うような書類は手に入れたわ。でも内容はただの盗品売買の記録だったからあなたが興味を持つとは思えない。まあ、それでも中身が知りたいならこの書類はきちんと裏取りをして代官様へ献上する予定だから、その後であなたが懇意にしているマグガム様に仲介をしていただいて代官様へ閲覧の要請をすればいいんじゃないかしら」

 なるほど、書類があると明示した上で取引はしないとこっちは暗に示しているんだな。

 直接プレッシャーをかけて行動を起こさせるという狙いは短期間で決着まで持ち込みたい俺達にも文句のないやり方だ。

 となるとベドール達がこの場であの書類を奪い取ろうと仕掛けてくる可能性も出てくる訳で、ベドールの取り巻きの動きにより警戒を強めたら予想していなかった事をベドールが提案してきた。


お読みいただきありがとうございます。


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