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#104 儲かった、海路 9

 さて、次は捕らえてあるドゥルガス海賊団の連中をどう始末するか考えないといけないな。

 興味深い書類を幾つか見つけたんでそれを使って一儲けできそうだから、今日すぐにという訳じゃないがアルトン伯爵の護衛もあるし近日中にはけりをつける必要がある。

 方法としては全員犯罪奴隷として後腐れが無いように売り払うか、ここの代官や行政府に突き出して懸賞金なんかをもらうかのどちらかが有力だが、もしかしたらもっと上手いやり方があるのかもしれない。

 ただそれらを判断するための情報が圧倒的に不足しているんで、まずはそのための材料となる情報を集めよう。

 となると本来なら偽情報を掴まないようこの街の色んな所へ聞き込みに行かないといけないんだが、今回は確度の高い情報を手に入れられる場所に当てがある。

 パルネイラくらいの街ならきっとギラン商会の支店が在る筈で、そこから有力で正確な話が聞けるだろう。

 エクトールさんから貰った添え状もあるんで門前払いされたり偽情報を掴まされる事も無い筈だ。


 関係を予想はされていると思うがあれ以上情報を渡したくなかったんでアリス嬢には聞かなかったギラン商会の支店の場所をパルネイラの人に聞いてみる。

 商売に関係ない人だと知らない可能性もあるんで近くにあった大きめの店の店員にチップとして銅貨を数枚渡して訪ねてみたら機嫌よく答えてくれた。

 ちゃんとギラン商会の支店はあるみたいで丁寧にその場所を教えてくれたんで礼を言って早速向かってみる。

 港の近くからパルネイラの中心部へ向けて進んで行くと聞いた通りの場所にギラン商会の看板を掲げた建物が確かにあった。

 中に入って声をかけてきた従業員に尋ねてみたら間違いなくギラン商会のパルネイラ支店で、ついでにエクトールさんから貰った添え状を出して責任者との面会を頼んだ。

 最初は俺の頼みに訝しがっていた従業員も添え状に目を通すと態度が一変し、ペコペコ頭を下げて上司に用件を伝えに行ってくれた。

 その上司も声をかけてきた従業員に連れられすぐにやって来て商会の奥へ案内してくる。

 一番奥まった辺りの部屋にまず俺が通され、ここに支店長のような人がいると思っていたんだが意外な人がその部屋にいた。

「よくお越し頂きました。リクさんにエンザンのみなさん」

「エクトールさん、どうしてパルネイラにいるんですか?」

「それはですね、あのときは本決まりではなかったのでお話できませんでしたが、当商会がこのパルネイラでアルトン様一行が領外へ持って行く物品の調達を仰せつかり、私が陣頭指揮を取っているからです。まあ他にもリクさん達エンザンのみなさんとアルトン様一行が領外で円滑に合流出来るようお手伝いしたいと思っているのもありますね。」

「そうしてくれるんなら助かりますよ」

 機嫌良く頷くエクトールさんに勧められて全員部屋の中に入り、置かれていたソファーセットにエクトールさんと向き合って座った。

「俺達は約束通りに今朝船でここに着いたんですが、エクトールさんは陸路をここまで来たんですよね。街道にはやっぱりガルゴ男爵の監視の目がありましたか?」

「ええ。かなり露骨に男爵様の部下が主要な街道やアルトン様の周辺へ目を光らせています。もしリクさん達が陸路を移動していたらまず間違いなく男爵様の部下に動きを気取られたでしょうね」

「なるほど。それなら予定通りアルトン様がアルデスタ領外へ出るまでは接触しない方が良さそうですね」

「そうお願いします。パルネイラ滞在中の宿の手配や決定したアルトン様のスケジュールは逐一私の方から報告させて頂きますので、リクさん達はなるべく目立たず待機していて下さいますか?」

「ありがたい申し出なんですけど、実はここへ来るまでの航海でちょっと問題が起こってその後始末をしないといけないんですよ。実を言うとここへ来たのもどうすれば一番得になるのか判断の材料としてこの街の情報が欲しかったからで、もしよかったエクトールさんも知恵を貸してくれませんか?」

「勿論構いません。どのような問題が起こったんですか?」

 エクトールさんが快く頷いてくれたんで最低限の義理があるだろうからアリス嬢の事情は詳しく話さず、トロスからパルネイラへ着くまでの大まかな出来事を話した。

「航行可能な海賊船2隻の回収に成功し、そのうえ襲ってきたドゥルガス海賊団の2番船を返り討ちにしてパルネイラのアジトまで制圧したんですか。それもほとんどの海賊を生け捕りにして。いや、先の魔人討伐といいリクさん達は本当に引きが強いですね」

「まあ悪運があるとは思いますし今のところ儲かってるからいいんですが、今回はもうすぐアルトン様の護衛につかないといけないんで時間がないですよね。確保した船やアジトに拘束している海賊達をどうすれば短時間で儲けにつなげられますかね?」

「そうですね。船やドックについてはリクさん達がアルトン様の護衛から戻られるまで当商会から人を出して管理致しましょうか?三隻の船やそれらを楽に納められるドックを売却するにしても自身で運用するにしても簡単には決められないでしょう。それに護衛としてアルトン様について陸路王都へ向かえばリクさん達が戻られるまで最短でも3ヵ月、長くなれば半年近くかかるかもしれません。その間に売却、自身での運用、どちらでもすぐに選べるよう私が責任を持って必要な情報を集めおきますから、今は一旦保留にしてはいかがですか」

 ふむ、このところ結構儲けているんで半年くらいの維持費なら出せそうだし、アルトン様との護衛依頼の交渉でその金を持って貰う事も出来るだろう。

 最悪船かドックをエクトールさんへ引き渡せば管理費は相殺できるだろうから、ここはこの提案に乗っておこう。

「確かにそれが妥当な所ですね。やって頂けるんなら船やドックの管理はお任せします。戻ってきたら管理費を清算しますし、エクトールさんの判断で船を短期で貸し出したり、ドックで船の修理を引き受けたりして維持管理費を浮かせてください」

「分かりました。管理に運用の方もお任せください。手配する人員の数を決めないといけないので近日中にその船とドックを実際に見ておきたいですね」

「それならアルトン様の護衛につくまで俺達にはこれといった予定はないんでエクトールさんの都合に合わせますよ」

「そうして頂けると助かります。あとは拘束している海賊達ですが、犯罪者を専門に扱っている奴隷商がこの街にはあるので、そこへ売るのが一番儲けが出るでしょう。ただ出来るなら当地の代官様へ身柄を引き渡しては頂けませんか?」

「エクトールさんには色々便宜を図ってもらっているんで多少儲けが減る位は何ともないんですけど、当地の代官様への身柄を引き渡しを勧める理由は何ですか?」

「それはですね、当地を納めている今の代官様はアルトン様の父君である先代の伯爵様に任命されていてアルトン様の有力な支持者なんです。だからでしょうガルゴ様が代官の交代を画策されていて、それを押さえるのに海賊捕縛の実績が役に立つと思うのです。もしガルゴ様の息が掛かった者がパルネイラの代官になれば私共ギラン商会はこの地で商売がやり難くなるのが目に見えていますので、お願い出来ませんか?」

 なるほど、実績を示して代官の交代が必要だというガルゴ男爵の意見を一蹴しようって訳だ。

 海賊の身柄を引き渡す位でその思惑を妨害できるんなら多少儲けが減っても全然問題じゃないな。

「そういう理由なら異存はありません。ただその問題の人から変な横やりが入らないよう直接その代官様と話がしたいんで面会の手配をお願い出来ますか。そうだ。他にもドゥルガス海賊団のアジトで面白そうな書類を見つけたんですよね。これについてもどう処分すればいいか意見を聞かせてくれませんか」

「両方とも承ります。まずはその書類を拝見させて頂けますか?」

 頷いてドゥルガス海賊団のアジトで回収した書類を格納領域から取り出して手渡す。

 その書類に目を通していると何か見つけたか思いついたかしたみたいで、意味ありげな笑みをエクトールさんが浮かべた。


お読み頂きありがとうございます。

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