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#101 儲かった、海路 6

 水深を確認して座礁しない沖合に停泊したアリス嬢の船から小舟で水夫達が次々に下りてきて、状態の確認のため砂浜に取り出しておいた船に乗り込んで行く。

 その様子を邪魔しないように眺めているとアリス嬢も小舟で上陸してきた。

 それに合せて船の調べていた水夫達の一部が甲板から砂浜に下りきて何やら報告をしている。

 俺からどういう話か聞きに出向こうと思ったがアリス嬢から話に来てくれた。

「リクさん。この2隻の様子が大体掴めたようなんでお教えしますね」

「流石に仕事が早いな、アリスさん。で、俺の目では使えそうだって思えたんだが、実際の所あの2隻はどんなもんかな?」

「そうですね、2隻とも状態は悪くないそうです。しばらく放置されていたとは思えないと言っていました。必要な装備品もほとんど残っているみたいですし、沖に出せれば問題なく航行できるようです」

「なら良かったが、その口ぶりだと船を沖に出すのに問題があるんだな?アリスさん達だと手間がかかるんなら俺達が魔術でやろうか?」

「そうして頂けると助かります。今日中に船を沖に出して頂けるなら明日には準備を終えて明後日の朝にはここを立てると思います」

「分かった。すぐにやろう。他にも手を貸せることがあったら何でも言ってくれ」

「ありがとうございます」

 一礼してくるアリス嬢に手を挙げて答えみんなに念話で招集をかけた。


 すぐザシルトに乗って砂浜へやってきてくれたティータとティーエに合流して早速作業を開始した。

 前回二人が船を砂浜に上げた際のやり方を参考にして、まず俺にティータとティーエの水の魔術や精霊術を使って操作した海水で一隻目の船底を覆ってしまう。

 それで得た浮力で船を砂浜から持ち上げ、船上の水夫達に頼んで船体に固定したロープをウォルトやザシルトに引かせると滑るように船は砂浜から沖へと流れて行った。

 一隻目を十分な水深がある沖合へと運んでいる間に二隻目の作業にも取り掛かり、同じ手順でさっさと一隻目の隣まで二隻目も運んでしまう。

 二隻の船を沖に運んだあとでウォルトやザシルトには水夫や物資の運搬もやってもらった。

 一連の作業を見ていたアリス嬢もこれで明後日の朝にはここを立てると保証してくれた。

 

 さて、これで二隻とも上手くパルネイラまで持って行けそうだが、ここからはより注意が必要だろうな。

 アリス嬢やその配下の従業員は多少信用できるだろうが、今回臨時で雇われた水夫達を無条件で信頼するのは不味い。

 夜の停泊中に回収した船を乗り逃げされたりしないよう、俺達は三隻に分散して乗り込もうか。

 バルバス達ゴーレム組四名には監視している奴隷を連れて回収した片方の船、取り敢えずの仮名で仮一番艦へ一緒に移動してもらおう。

 で、俺がザシルトとウォルトを連れてもう片方の船、仮二番艦へ乗り込み、ティータとティーエにはこのままアリス嬢の船に残ってアリス嬢の護衛をやってもらうかな。

 今の考えを念話で伝えると全員賛成してくれ、一応アリス嬢にも話を通して許可を取り付け忙しそうに出発準備をしている水夫達には邪魔だったろうがその日の内に全員の移譲を済ませた。

 翌日もザシルトやウォルトには水夫や物資の運搬もやってもらい、俺も格納庫を使って物資の移送に協力した。

 そして予定通りここへやってきてから二日目の朝、アリス嬢の船を先頭にして仮一番艦、仮二番艦と続いてこの入り江から出発した。


 それから五日ほどは単発で襲ってくる海の魔物をザシルトが返り討ちにする以外は特に変化もなく北上を続けてられ、今日はちょっと気になる事があったがパルネイラまであと1〜2日の所までやってこられた。

 これまでのように日が暮れたんで三隻が纏まって停泊し、周囲や海底の地形を記憶しておく以外やる事がない俺はさっさと夕食を取って眠ったんだが、夜半を過ぎた頃にある理由で念の為周囲の警戒を頼んでいたバルバスから念話が飛んできた。

(リク様、寝ているようなら起きてくだされ)

(・・・何かあったのか?)

(かなりの数の敵意ある気配が近づいてきておりますぞ。昼間我らをつけていた連中がしかけてきたのかも知れませんな)

(!分かった。俺もすぐ甲板に上がって確認する)

 その念話を終える前にベットから飛び起き船室も飛び出した。

 甲板へ上がり船内を移動中に捕捉した気配の方へ視線を向けると、こちらの船が警戒のため掲げた篝火だけが周囲を照らす真っ暗な海上を一切の明りを灯さずこちら向かってくる一隻の船が見えた。

 そしてあの船の形には見覚えがある。

(間違いないな、昼間俺達をつけてた船だ)

 どういう事かというと今日の昼過ぎ頃俺達の船団が近くを通った入り江の陰に沖から見えないよう姿を隠した船がいるのをウォルトが地形走査をしていて見つけてくれた。

 ちょっと気になったんでその気配に気をつけていると俺達が沖を通り過ぎた後に入り江から出て水平線ギリギリを追跡してきた。

 明らかに怪しくなってきたんでザシルトに気付かれない深度を保って海中から船の形を確認してもらったりして動向を警戒していたんだが、無灯火で近づいてきて敵意を剥き出しな以上は海賊の類で決まりだな。

 となるとこちらに被害を出さないよう俺達から乗り込んで始末をつけようと考えていたら、バルバスから気合の張った念話が飛んできた。

(リク様、前回の魔物討伐では後詰めだったので、今回は我ら4名に奴らの討伐をお任せくだされ!)

 確かにボボス村の時は退屈な奴隷の監視をやってもらったし、今回は俺がそれを引き受けるか。

(いいぞ。俺が奴隷の監視を引き継ぐから4人で暴れてこい。ガロに掴まってすぐそっちへ行く)

 念話を終えると同時にガロを召喚して掴まり、仮2番艦を飛び立って瞬く間に仮一番艦の甲板へ下り立つと監視をしていた奴隷を引き連れ完全武装したバルバスにアグリスとアデルファにガディがもう甲板上で待っていた。

 これは昼の内から襲撃があると想定して準備をしていたな。

 みんなの手回しの良さに呆れるやら感心するやらだが、海賊船はどんどん迫って来ているし余計な事を考えてる暇はないな。

「準備は良さそうだな。ガロやウォルトにザシルトを使っていい。なるべく殺さないよう迅速に敵船を制圧してくれ」

「「「「御意!」」」」

 気合の入った返事を返してくれるとバルバスがガロに掴まって夜空に舞い上がった。

 ほぼ同時にアグリスとアデルファにガディも走りだし、甲板を飛び出してアグリスとアデルファはザシルトの背に下り立ちガディはウォルトに飛び乗った。

 一旦高度を取ったガロは落下するように上空から、二手に分かれたウォルトにザシルトは左右から挟み込むように海賊船へ迫っていく。

 ただ海賊達にも夜目が利く奴がいるみたいで、バルバス達が海賊船へ迫っていくと奇襲の失敗を悟って火を焚き迎撃してきた。

 中々の弓矢や簡単な魔術で海賊達はバルバス達を狙うが、狙われた本人達はその攻撃を軽々といなしてさらに海賊船へ近づいて行く。

 危なげなく海賊船の真横まで迫ったウォルトとザシルトがほぼ同時に海面から飛び上がり、それに合わせるようにガロも甲板へ落着してそれぞれが海賊達を薙ぎ払って海賊船へ乗り込んだ。

 そこからの展開は一方的でバルバス達が刃を潰す意味で魔力を纏わせた武器を一振りする度に2〜3人の海賊達がなぎ倒されていく。

 バルバス達が乗り込んで5分経つ頃には、抵抗を諦めない数人の腕利き以外ほとんどの海賊達が海に飛び込んで逃げ出すか武器を捨てて投降していた。

 勿論海へ逃げた奴等はウォルトとザシルトが即座に追いかけ魔術や精霊術で捕縛して海賊船へ送り返し、ガディは投降した奴に指示を出して海賊船の停船を始めさせた。

 数人の腕利きの相手はアデルファが単独で相手をするみたいで、バルバスとアグリスは船内の探索に甲板から下へ降りていった。

 抵抗を続けている腕利き達は中々の連携でアデルファに立ち向かっているが、それでも腕が劣る者からアデルファの斧で沈められていく。

 一方ウォルトとザシルトは海中から魔術や精霊術で海賊船へブレーキをかけ、こちらの船の間近で海賊船が停船する頃には残る腕利きも1人になっていた。

 その1人も打ち込んだ渾身の剣戟をアデルファが魔力を纏わせた鎧に弾かれ、それで体勢が崩れた隙にアデルファが戦斧を打ち込んで最後の腕利きも甲板へ沈めた。

 船内の検索はまだバルバス達がやってくれているが、これで脅威は排除できただろう。

 奴隷化の首輪はまだ幾つか格納領域に残ってるし、早速船長辺りに尋問して裏の事情があるなら残らず喋ってもらうとしよう。

 念話で指示を出しガロに運ばれて戻ってきたアデルファと交替してガロに掴まり、俺は仮一番艦から飛び立った。

お読み頂きありがとうございます。

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