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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
二巻 3月15日発売!

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46 カタリナの救出

「グルル、足を緩めてくれ」

「ぐる」


 グルルが速度を緩めてくれる。

 すぐに俺は地下に向けて探査魔法を発動する。


「うーん。こっちの方が個室の数が少なくて大きいな、しかも深い」


 ギルバートのいた南東部には独房が十五あった。

 だが、こちらには三つしない。


 三つは一つ一つがとても広くて、それぞれ離れている。

 貴族や王族向けの地下牢なのかも知れない。


 そして、南東部は地下牢の天井が地下五メトルに位置していたが、こちらは十メトル下に位置している。


「…………」

「ぐる?」

「止まってくれ」

「ぐる」


 三つの独房のうちの一つに人が集まっている。


「恐らくここだな」


 違えばまた調べ直せば良い。

 俺はその上でグルルに止まってもらうと、背中から降りた。


「一気に行くぞ」

「ぐる!」「りゃ!」


 俺は【物質移動】【形態変化】を地面から独房の天井までの物体全てに発動させる。

【物質移動】と【形態変化】が初歩的な術式だが、多種多様な大量の物質に同時にかけるのは難度が高い。


 俺は気合いを入れる。

「うおおおおおおお!」

 地面が吹き飛んだ。

 大量の土砂と岩、金属、それらが、俺とグルルを中心に放射状に吹き飛んだ。

 まるで、水面に石を放り込んだときのように、地面が波打ち、土砂の津波となって、周囲を押し流していった。


 そして、

「ぐるるるぅぅ~~」「りゃあ~~~~」

 俺とグルルと、リアは落ちていく。


 俺は落下しながら、マナポーションを飲み、そして下に向けて大量の空気を押し出してグルルと俺の落下速度を緩めた。

 だが、グルルは巨体なので「ドゴーン」という轟音が周囲に響く。


「グルル、大丈夫か?」

「ぐる!」


 大丈夫なようで良かった。

 俺は周囲を観察する。


 壁に固定された鉄の手枷と足枷をつけられたカタリナがいた。

 そして、数十人もいた看守は俺たちが落ちてきた衝撃で吹き飛び、床に倒れている。


「……ルードヴィヒさま?」

「そうだ。無事か?」

「……無事です」


 カタリナは力なく笑う。

 着ているのはボロボロの肌着のような服だけだ。胸と局部以外は露わになっている。

 鞭で打たれたらしく、全身にミミズ腫れが走り、皮膚が破れ、血が流れていた。


 そして、美しかったカタリナの髪はとても短くなっている。

 わざと乱雑に切られたようで、ボサボサだ。

 顔は何度も殴打されたようで、頬と目が腫れ上がっているうえ、悪臭のする恐らく馬糞を塗られていた。

 このままでは、傷口から化膿して死にかねない。


「りゃぁ……」

「リア、心配してくれるのか。私は大丈夫だ……この程度では……」


 俺はドミニク付きの槍を床に刺すと、手枷と足かせを破壊して、解放すると、治療を開始する。


「グルル、起きた奴がいたら、黙らせておいてくれ」

「グル!」

 温厚で優しいグルルも、カタリナがひどい目に遭って怒っているようだ。


 俺は【物質移動】で馬糞や血を含めた汚れを除去しながら、診察する。

「口を開けて……ん、歯は折れてないな。骨も折れてないのは、不幸中の幸いだな」

「なら、すぐに戦えますね」


 そういって、カタリナは力なく笑う。

 ギルバートを担当した拷問官よりも腕が良いらしい。

 怪我は痛みと屈辱を与えることに終始している。


「うん。大丈夫だ。治療は容易い」

「良かったです」


 俺はカタリナの耳元で囁く。


「近衛騎士団のヘルマンが、この場所を教えてくれた」

「……!」

「助けてくれと頼まれたよ」

「そう、だったのですね」

「恐らく人質を取られているから、表だっては味方できない様子だったがな」

「……はい」

「カタリナ。やっぱりカタリナのしたことは間違ってないよ」


 だから、命令に逆らってでも、味方してくれる者がいるのだ。


「……はい!」


 カタリナの目に光が戻った。

 ボロボロの恰好で、髪の毛も不揃いでボサボサだが、カタリナは美しかった。


 治療を終えると、俺は魔法の鞄から、鎧下と鎧、剣、盾を取り出した。


「カタリナ。それを身につけて、手を貸してくれ」

「わかりました!」

「ちなみに、捕えられていたギルバートは救出済みだ」

「はい!」


 カタリナが装備を整える間、俺は倒れている看守の様子を窺う。


「う……あっ……」

「ぐる!」

「ぐふ」


 起きようとした看守はグルルに尻尾でべしっと叩かれ、再び気絶している。


「ルードヴィヒさま、これからどうなされるのですか?」

「そうだな。……王を助ける。あとカタリナの従兄殿もな」


 俺は小声で答えた。敵に聞かれたら厄介だからだ。


「わかりました」

「ガウが今、メニルに同行して従兄殿のところに向かっている」

「大丈夫でしょうか」

「正直なところ、不安はある。だから急いで助けに行くぞ」

「はい、鎧を着ました! バッチリです」

「じゃあ、行くか」


 俺がドミニク付きの槍を持ち上げると、

「あの、先ほどから気になっていたのですが……それは?」

「ああ、これか。これはドミニク付きの槍だ」

「ドミ……ニク?」


 カタリナはドミニクが誰かわからないようだ。

【読者の皆様へ 作者からのお願い!】


1巻は発売中! 2巻は3月に発売になります!

よろしくおねがいいたします!


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