表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
二巻 3月15日発売!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/108

41 ヘルマン戦

 俺はヘルマンを無視して、大声を出す。

 近衛騎士たちを監視しているであろう何者かにも聞こえるようにだ。


「話にならん! 近衛騎士団はこの程度か!」

「…………」


 近衛騎士たちは黙って俺を見つめている。


「俺は千を超す妖魔の群れを王女殿下と共に倒した男だぞ! 全員でかかってこい」


 ヘルマンが一騎打ちに持ち込んだのは、俺にカタリナの場所を教えるためだ。

 しかし、このまま一騎打ちでヘルマンを倒してしまえば、騎士たちは困ることになる。

 団長であるヘルマンが一騎打ちと言った以上、俺に手を出せば騎士の名誉が傷つく。

 とはいえ、俺に手を出さなければ宰相が人質を傷付ける可能性がある。


「まとめて倒してやるから、かかってこい」


 俺と戦って倒されたのならば、人質に手を出されることはあるまい。

 それでも、近衛騎士団は動かない。

 ヘルマンが一騎打ちと言ったからだ。


 彼らの騎士の名誉を守るためには俺から仕掛けるしかない。

 俺は騎士ではないので、守るべき騎士の名誉などないのだ。


「かかって来ないならば、こちらからいく」


 俺は自分を中心とした暴風を起こす。

 ちょっとした竜巻だ。


「りゃあ!」

 中心である俺とリアの周りは風が吹いていない。

 だが、リアはびっくりした様子で俺の肩にしがみつく。

 

 大人ならば、浮かない程度。子供ならば浮きかねない程度。

 その程度の強い風を渦巻き状に吹かせていく。


「ぐる~」

 グルルはガウを胴の下に入れる。

 ガウは体が大きいので飛ばないが、グルルは心配になったのだろう。

 メニルは必死の形相でグルルにしがみついていた。


「なっ! なんという大魔法!」


 ヘルマンがよろめきながら言う。

 下から上に体を持ち上げようという力が働いているせいで、踏ん張れないのだ。


「違うぞ。これは錬金術。それももっとも初歩的な【物質移動】の術式だ」

「これで、初歩? だと……」


 嘘は言っていない。

 未熟な錬金術師が【物質移動】を使ってもここまで大きな風は起こせない。

 だがそんなことは言わず、初歩を強調することで皆に錬金術の凄さをアピールしておく。


「折角だ。皆に錬金術の上級術式を見せてやろう」

「これが下級なのに、上級だと……」

「ああ。これが【物質変換】の術式だ」


 そういうと同時に俺は雷を落とす。


 轟音が響いた。

 視界全てが白くなる。


【物質変換】は主に分子構造や分子組成を変えるときに使う術式だ。

 だが、分子ではなく電子をいじれば、雷を操れる。


 俺は風をおさめた。

 周囲が静寂に包まれる。


 雷に打たれた近衛騎士たちが倒れている。

 近衛騎士たちには直撃させていない。近くに弱い雷を放っただけだ。

 その上、俺が強化した鎧を着ているので、近衛騎士たちにはダメージはほとんどない。

 衝撃で気絶しているだけだ。

 一番重いもので、軽い火傷程度。すぐに動き出せるだろう。


 そして、その後方にいる魔導騎士団には、かなり強めに雷を落とした。

 しかも直撃させている。

 死んでいてもおかしくないし、生きていてもしばらく動けまい。


「まだ、俺と戦いたい奴はいるか?」


 誰も答えを返さない。

 近衛騎士たちも、魔導騎士たちも動けないのだ。


「な、何が起こった? 雷が落ちたぞ?」


 身体強化で強化された俺の耳に、遠くで様子を窺っていた民の声が聞こえてくる。


「これが! 錬金術だ!」


 俺は遠くまで響く大きな声でアピールしておく。


「錬金術って、あの石鹸の?」

「うちの店長が、錬金薬で毛が生えたって自慢してたぞ」


 民の間にも錬金術の名はある程度広まっているらしい。

 俺とカタリナ、そしてヨハネス商会がしていたことは無駄ではなかった。


「さて……。メニル、大丈夫か?」

「はい。暴風から雷は、腰をぬかしました」

「そうか。グルル。ガウをかばって偉いぞ」

「ぐる~」

「ガウは大丈夫か?」

「がう」


 そして、俺はグルルの背に乗った。


「ま、待ってくれ。……通すわけには」

 ヘルマンがよろよろと剣を杖のようにして立ち上がる。


「我が命あるかぎり……」


 死守しろと言われているのだろう。

 そして、きっとこの状況を監視している奴がいるはずだ。


「死に損ないを相手にしている暇はない。失せろ」


 俺はヘルマンとなれ合っていると思われないよう、敢えて馬鹿にしたように言う。

 そして、風を吹かせてヘルマンを吹き飛ばす。


 それから、周囲一帯に聞こえるように大声で言う。


「そこで惨めに俺の勝利を喧伝しておけ!」


 そして、【形状変化】で岩の手を作り出す。

 ドミニクたちを捕えた土の手と技術的に同じだ。

 ドミニクたちのときと違うのは地面の素材だけだ。


 近衛騎士たちと魔導騎士たちを、岩の手で拘束する。


「こっちは魔導騎士だったな。魔法を使われたら面倒だな。拘束をきつくして、ついでに口も塞いどくか」


 大きな声で、監視している何者かに対して、理由を説明してから岩で口を塞ぐ。

 鼻が詰まって窒息したら、その時はその時だ。反省しながら死んで欲しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ