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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
二巻 3月15日発売!

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90/108

40 近衛騎士団長ヘルマン

 四十代ぐらいに見えるその男は、低く大きな声で言う。


「王都会戦の英雄、ルードヴィヒ殿とお見かけする!」

「たしかに俺はルードヴィヒだ。あなたは?」


 俺はグルルの首筋を叩いて止まってもらう。


「近衛騎士団団長、ヘルマン・エルター! 一騎打ちを所望する!」

「一騎打ちか」


 近衛騎士団で一斉に掛かるのがもっとも勝率が高い。

 そもそも、こちらは一人なのだ。

 俺には従魔のガウとグルルはいるが、従魔使いが一騎打ちに従魔を使うのは当然のこと。


 俺には不利になること何もない。

 なのに一騎打ちを言い出すということは、ヘルマンは俺を倒したくないのだ。

 いや、俺を倒したくないと言うよりも、王とカタリナを助けて欲しいということだろう。


 俺はリアを肩に乗せたまま、グルルの背から降りる。

「ガウ、グルルを守ってやれ」

「がう」

「グルル。守るから安心しろ。そしてメニルを頼む」

「ぐる」


 俺は、ドミニク付きの槍を持ったまま、グルルの前に立った。

 気をつけるのは後ろからの攻撃だ。

 近衛騎士団はともかく、周囲には魔導騎士団がいるのだ。

 俺が離れたグルルとメニルを狙ってくることは充分に考えられる。


「一騎打ちを受けて頂き、ありがとうございます」

「うん」


 次の瞬間、近衛騎士団たちが俺たちを囲む形に移動した。


「え? 騙した?」

「安心しろ、メニル。大丈夫だ」

「は、はい」


 もし近衛騎士たちが襲い掛かってきても対応できる。

 それに、囲んで襲うつもりなら、最初からやっている。

 これは魔導騎士団に一騎打ちを邪魔させないための措置だろう。


 近衛騎士たちの配置が済むと、ヘルマンは俺との距離を十メトルまで縮めた。

 そして、ヘルマンは、とても小さな声で呟いた。


「ルードヴィヒ殿の薬には、会戦で死にかけた我が息子を助けていただきました」


 それは身体強化を使っていなければ確実に聞こえないほどの小さな声だ。


「恨みはございません。むしろ恩しかありません。薬、鎧、剣に私も部下たちも皆助けられています」


 そこまでささやくように言ってから、泣きそうな顔になってヘルマンは大きな声で叫んだ。


「恨みはございません! ですが! 摂政殿下の命によりここを通すわけには参りません!」

「うむ。いいよ。俺が勝っても部下には手を出さないようにしよう」

「ありがたい!」


 ヘルマンは叫びで中の状況を教えてくれた。 

 第一王子は摂政となり、騎士団の指揮権を掌握したと言うことだ。

 そして、それはつまり、王は崩御していないことを示している。

 王が崩御したならば、新王陛下の命というだろう。


「英雄ルードヴィヒ殿に剣で勝てるとは思いませぬが、お手合わせ願いたい!」


 そう言ったヘルマンは槍を見ている。

 剣で相手にしてほしいようだ。


「そうか。メニル。後ろから攻撃されたら首をかっきれ」


 俺は魔導騎士団に聞こえるように大声でそういって、ドミニクを上にして槍を地面に突き立てた。

 グルルの横、メニルの手が届く位置である。


「わかりました。そのときはすぐに首を切ります!」

「ひぃ~」


 ドミニクの無様な悲鳴が周囲に響いた。


 そして、俺は魔法の鞄から剣を取り出した。

 ヨハネス商会にも卸している店売りの剣だ。


「何から何まで。ありがとうございます」

「いいぞ。かかってこい」


 ヘルマンは剣を構える。隙の無い見事な構えをして、走り出す。

 カタリナほどではないが、この時代基準では見事な身体強化である。

 そして、素人のように雑に剣を振るった。


 俺はその剣を受け止める。

 あまりにも雑だった。まるで避けても、受けても、逆に切り捨てられても文句はない。

 そういう意思が剣から伝わってきた。


「む?」


 つばぜり合いになってからは、油断すれば押し込まれそうなほどだ。

 身体強化を使ってなかったら、押し込まれていたかもしれないほどだ。 


 つばぜり合いになり、極限まで俺に近づいたとき、

「……王女殿下は、北東の第三地下牢に移されました。ギルバート殿は南東の第十二地下牢です」

 ヘルマンは更に小声で呟いた。


「ん」


 俺ははっきりした言葉では返答しない。

 わざわざ、つばぜり合いをしてまで言うのだ。 

 監視があるのだろう。

 そして、人質を取られている可能性だってある。


「殿下をどうかお願いいたします」


 ヘルマンは、剣で俺を突き飛ばそうとするかのように強く押し、自分も後方へと飛んだ。


「それで終わりか?」


 俺は離れたヘルマンに大きな声で尋ねる。

 俺に話したいことはそれで全部か?

 そういう意味を込め、だが、他の者にはその程度の攻撃で終わりなのかと挑発しているように聞こえるようにする。


「もちろん、この程度で終わりではありませんよ。本気で倒します」


 ヘルマンは剣の先を俺にまっすぐ向ける。

 その構えには隙が無い。完全な戦闘モードだ。


 つまり、会話はもう終わりと言うこと。


「ああ、わかった」


 きっと、戦わずに引けば、部下か家族か。

 ともかく近衛騎士たちの大切な人に危害が及ぶ可能性があるのだろう。


 俺は近衛騎士たちを見回した。

 みな、辛そうな、悲しそうな表情を浮かべている。


「……カタリナ。仲間は沢山いるぞ」


 俺は小声で呟いた。


 ギルバートに騎士や冒険者たちは認められていると言ってもらって、カタリナは泣いた。

 きっと、今カタリナは地下牢の中で打ちひしがれているのだろう。

 だが、こんなにもカタリナを慕って動いている者たちがいるのだ。

【読者の皆様へ 作者からのお願い!】


1巻は発売中! 2巻は3月に発売になります!

よろしくおねがいいたします!


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