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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
二巻 3月15日発売!

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38 王都に攻め込もう

「お前ら、ヨハネス商会に卸した鎧を買ったんだな。商会にお世話になっていながら、営業停止処分を下すとは、許せないな」

「だって――」


 錬金術を認めたらカタリナに主導権を握られることになる。

 だから、絶対に認められないのだ。

 そんなことを、ドミニクは語った。


「まあ、そうだよな。わかるぞ」

「っ!」

「だが、許さん」


 俺は鎧に【形状変化】の術式をかけた。

 ぼぎりと大きな音を立てて、鎧が歪む。

 鎧が歪んだ音ではない。骨が折れた音だ。


「ぐっげっぇぇえ」

 肋骨の下。お腹の部分が大きくへこみ、ドミニクは吐瀉物をまき散らす。

 それだけでなく、鎖骨の部分と小手とすね当てを、その中身ごと直角に曲げたのだ。


「これで、拘束を解いてもうごけないだろう? 部下たちもこうしておくか」

「ぐぐぎゃ」「ぎゃあ」


 部下たちの鎧も骨ごと曲げておく。

 両手両足と肋骨と鎖骨の骨が折れているので、拘束が解けても動けまい。


「さて、部下たちは放置してドミニクだけ連れて行こう。人質になるからな」

「ですが、ルードヴィヒさま。この顔では、誰かわかりません!」

「それもそうか」


 鼻も歯も折れているし、目も凄くはれている。

 俺はヒールポーションで顔だけ治した。


「これでよし」

 顔だけ治っても、両手足と肋骨と鎖骨が折れているので、ドミニクは痛みに顔を歪めている。


「目立つようにしないとな」


 俺は部下の一人が持っていた槍の先にドミニクをくくりつけた。

 土は重いので、縄でしっかりとくくりつける。


「ひぎゃああ」

「黙れ。痛みぐらい我慢しろ」


 そうして、ドミニクを先にくくりつけた槍を肩に乗せる。

 ドミニクたちが持っていた槍は、俺が強化してヨハネス商会に卸したものだ

 当然、軽くて頑丈で、とても良い槍である。


 錬金術を禁止し、ヨハネス商会を営業停止にしたくせに、自分たちは使っているのだ。

 非常に腹立たしい。


 むかついたので、ドミニクの付いた槍を軽く振った。


「ぐげ」

 ドミニクが呻く。


「あの、ルードヴィヒさま、重くありませんか?」

「槍は軽いが、ドミニクが重いな。出発前に…身体強化ポーションを飲んでおくか」


 身体強化ポーションを飲まなくとも、俺は身体強化の魔法が使える。

 だから、このぐらいの重さならば軽く振れるのだ。

 だが、魔法をずっと維持するのは、ほんの少しだけ疲れるので、飲んでおいた方が良いのだ。


「ガウとグルルも飲むといい」

「があう!」「ぐる~」


 お皿に身体強化ポーションを移して、ガウとグルルに飲ませる。

 ガウとグルルはこれから戦う可能性高い。


「いいかい。ガウ、グルル。これから王都に向かい、王宮に乗り込んでカタリナたちを助け出す」

「がう!」「ぐるる~」

「だけど、ガウもグルルも自分から積極的に戦わなくていい」

「がう?」「ぐるるぅ?」

「もちろん、襲ってきた敵だけ倒せば方がいい。こっちから仕掛けなくていいからな」

「ががう!」「ぐる!」


 そして、メニルにも身体強化ポーションを渡す。


「メニルは戦わなくていいが、一応飲んでおくといい、攻撃を避けたりするのが楽になるからな」

「あ、ありがとうございます」

「念のためにこの服を着ておきなさい。錬金術で強化した服だ。簡単な魔法は効かないし、剣や矢でもそうそう傷つかなくなる」

「そんな国宝級の素晴らしい物を私なんかのために……ありがとうございます」

「いや、安価な材料で五分ぐらいで十着作った一つだから、気にするな」

「……それが錬金術なのですね」

「そうだ。それが錬金術だ」


 俺はメニルに、ことあるごとに錬金術のすごさをアピールすることにしていた。

 何しろメニルは尚書の副官なのだから。

 アピールしすぎということはない。


 準備を終えると、俺はグルルの頭を撫でる。


「グルル、背中に乗せてくれ」

「ぐる~」

「メニルも乗ってくれ」

「はい」


 そして、グルルは俺とメニルを乗せて走り出す。

 ガウはすぐ横を走って付いてくる。


 リアは俺の肩に乗り、

「りゃ?」

 槍にくくりつけられて呻いているドミニクを見て顔をかしげていた。


「グルル。門に向かわなくていいぞ。向かうのはあそこだ」


 俺は城壁のどの門からも遠い場所を指さした。


「ぐる~」

「どうやって、中に……」

「こうやるんだ」


 城壁の元にたどり着いたら、俺は【物質移動】【形状変化】を行使する。

 一瞬で城壁を構成していた巨石が砂になって崩れ落ちる。

 その砂を【物質移動】で横に避けた。


「ええぇぇぇぇ? え? 本当に何でもありなんですね」

「錬金術で強化してなければ、城壁もただの石だからな。さっきやったみたいに、城壁をバラバラにして内側に撃ち込むこともむずかしくない」


 それをしたら、王都の民が傷つくので絶対にしないが可能ではある。

 攻城戦で中に兵しかいないときに使う手段だ。


「……本当に、錬金術はすごいです」

「そうだろう」


 そして、俺はグルルの首筋を優しく叩いた。



「じゃあ、グルル、王宮に向かおう。急がなくていいぞ。民が驚くからな」

「ぐる!」

「城壁が砂になった時点で、充分驚いていると思いますが……」


 メニルの言うとおり、たしかに大騒ぎになっている。

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