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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
二巻 3月15日発売!

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23 襲撃時の聞き取り

 昼間集落に残っているのは、仕事が休みの者とタルホたち子供、そして老人と怪我人、病人である。

 今日は特にみんな出払っていた。

 昨日、魔王軍の襲撃があったせいで、沢山仕事があったからだ。


「老人では消火の準備をするのにも手間取り……」

「わかるぞ。水が重いんだよな……道具も重たいし。急いで動こうとすると息が切れる」

「ルードさんは、お若いのによくおわかりですね」

「ああ……。よくわかるよ。無理したらひざや腰が痛くなるしな」


 今でこそ、俺は若いが元々百歳を越えていたのだ。

 老化の辛さはよくわかる。


「遅くなって、申し訳ありません」


 だから、駆けつけるのが遅くなったと、村長は改めて頭を下げた。

 老人しか残っていないなら、魔導師を含んだ武装した狼藉者とは戦えない。

 消火活動も難しいだろう。


「いや、本当に気にしないでくれ。燃え落ちたのは俺の落ち度だからな。錬金術を使って燃えなくすることは容易いんだ」

「そうなのですか?」

「ああ、実際、こちら側は燃えてないだろう?」

「はい」

「昨晩、急いで建てたから、錬金術で燃えなくする加工を忘れていたんだ」

「錬金術は便利ですね」

「ああ、折角だから、今度集落の家にも防火処置を施そうか?」

「よろしいのですか?」

「もちろんだ。いつもお世話になっているし。今日も子供たちにグルルをみてもらったしな」

「ありがとうございます!」


 村長たちは何度もお礼を言ってくれた。


 それから俺たちは子供たちから詳しい経緯を聞くことにした。

 俺は子供たちになるべく優しい声音で語りかける。


「食べながらでいいんだけど……。さっきの男たちが何をしたか聞かせてほしいんだ」

「わかった。えっとね……」


 語り出したのは子供たちの中でも年長であるタルホだ。


「みんなでお庭で遊んでいたのだけど……あ! ガウとグルルは家の中にいたよ!」

「がう」「ぐる~」

「ガウとグルルは扉を開けて、こっちを見てくれてたんだ」

「そうか」


 家の中で大人しくしていなさいという指示を守っていたのだろう。


「あのおっさんたちがやってきて、知らない家だな、税をまだもらってないぞって、怒鳴り始めて」

「なるほど。税か……」


 ここは王の直轄地。税の徴収権を持っているのは王と王に任命された代官だけだ。

 代官が任命されているとは聞いていないので、狼藉者たちが勝手にやっているのだろう。


「それで、おっさんたちは出てこいって、扉、正面玄関の方の扉ね? そっちを叩き始めたんだけど」

「ガウたちは?」

「男たちに見つからないように扉を閉めて家の中に隠れてたよ」


 今朝繋げたガウの家の反対側に正面玄関の扉はある。

 正面玄関の方から近づいたのなら、ガウたちに気付かなくても不思議はない。


「そうか、タルホたちは家の中に入らなかったのか?」

「ぼくたちが入ったら、鍵が掛かってないことがばれるじゃないか」

「そうか……」


 子供たちが自由に出入りできるように鍵をかけていなかった。

 そして、子供たちに鍵を渡してもいなかったのだ。


「危なくないか?」

「いつも、無視されてるから大丈夫だと思って」

「あいつらの目当ては金ですから」


 村長がタルホの言葉に同意した。

 タルホたちは金を持っているように見えない。だからいつも相手にされていなかったようだ。


「でも、今日は扉を叩いて誰も出てこないから、裏、グルルの家の方に来て、扉に気付いて叩き始めたんだ」

「なるほど」

「でも、ガウもグルルも反応しないから、扉を開けようとしたんだ」


 鍵の掛かっていない扉が開かないようにグルルが抑えた。

 だが、誰かが抑えていることに気付いた男たちは激昂する。


「早く出てこないと、俺たちを捕まえて子供を殺すぞって、叫びはじめて……」

「ガウとグルルは家を出たのか」

「そう」


 男たちは竜であるグルルを見て目の色を変えて攻撃を開始した。

 その間、ガウは子供たちを解放したのだという。

 そして、子供たちは家の中に逃げ込んだ。

 グルルは抵抗せずに家の扉をその体でふさいだのだという。

 男たちは激怒して、家を燃やし、グルルを攻撃する。


 火炎魔法にかかれば、防御の掛かっていない木造建築など一瞬で焼け落ちる。


「グルルの家が燃えたら、グルルは俺たちのいる家に繋がる入り口を、震えながら体で塞いで」

「ぐるる」


 そのときのことを思い出したのか、子供たちがグルルのことを撫でて、ぎゅっと抱きしめている。


「あとのことは、よくわからないんだ。グルルの体で外が見えなかったから」

「ガウが吠えてたけど……」

「そうか」


 子供たちから得られる情報は以上だった。


「村長、以後あいつらがきたら、俺が相手にしよう」

「大丈夫なのですか?」

「大丈夫だよ。戦闘力的には問題にならないし、もし面倒なようなら金で解決すればいい」

「金で、ですか?」

「ああ、小銭を稼いでいるぐらいだ。あいつらは金で黙らせられるだろう」


 身分はともかく、あいつら自身の役職は高くないはずだ。

 もし、重要な役職についている者ならば、貧しい集落を脅して小銭を稼いだりはしない。

 賄賂など、もっと効率的な金の稼ぎ方はいくらである。


 面倒なのはあいつらの親が大貴族だったりする場合だ。

 その場合、親の派閥の上位貴族に保護を頼むか、親の対立派閥の大貴族に保護を頼むのがいい。

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