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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
二巻 3月15日発売!

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17 石鹸と育毛剤

「錬金術を広めるために錬金薬を売りたいんだが……なにか需要のある薬は無いか?」

「需要ですか? うーん」

「俺としては、ヒールポーションが一番だと思うけどな。それに身体強化のポーション、マナポーションに体力回復ポーション……」


 トマソンがあげたのは先日の戦いの前に騎士たちと冒険者たちに配ったポーション類だ。


「あれは、凄かった。あの戦いに参加した者に錬金術を舐めているやつはもういないぞ」

「それはいいな。だが一般にも広げたいんだ」


 錬金術を広くしらしめるには、偉い人に認めてもらうしかない。

 そして偉い人というのは、一般的に自分で剣をとって戦ったりしないものなのだ。

 カタリナは例外的な存在である。


「いま、発毛剤兼育毛剤を、とある人に渡して効果を試しているんだが、需要はあると思うか?」

「……あると思います。今日はいらっしゃいませんが、ガウぐらい生えてくるのですよね?」


 発毛剤兼育毛剤と言っただけで、ヨナは俺がそれをガウに使っていたことを思い出してくれた。


「そうだ。あの薬の人族用だな」

「需要はあると思います。値段次第ですが……」

「値段は……このぐらいにしようと思っている」


 ギルバートに告げた、ギルドの食堂二食分の値段を告げる。


「それなら売れると思います! あとは量産可能かどうかです」

「もちろんだ。材料があればな。材料はヒールポーションとキュアポーションとほとんど同じだ」

「それならば、すぐにご用意できます!」


 発毛剤兼育毛剤の量産化に向けての準備が整った。


「ですが問題は……」

「そうなんだ。店で売れないってことだ」


 薬は薬師ギルドの管轄だ。

 うさんくさい商品を取り扱えば、ヨハネス商会の名にも傷がつく。


「しばらくは口コミで広がるのを待って、手売りするしかないな」

「お役に立てず、もうしわけありません」

「いやいや気にするな」


 するとトマソンが言う。


「……ちょっと待て。つまり薬じゃなければいいんだろう?」

「そうだが……」

「武器とか防具とか……服とか」

「そうだが……武器も防具も騎士や冒険者とか一部の者にしか売れないからな」

「でも、服は一般人にも売れる」


 そういってトマソンがにやりと笑う。


「たしかに……、いや、待て。だが服は高いだろう?」


 普通、庶民は服を店で買わない。

 布や端切れを買って自分で縫うのが一般的だ。


 よい花嫁の条件に裁縫技能が加わるのはそのためだ。

 みんなが店で服を買うような時代になれば、裁縫技能は重視されなくなるに違いない。


「そうだ、服は高い。だが、金持ちは服を買う」

「なるほど。仕立屋に錬金術を売り込んで、効果付与をすれば……」

「すみません。それは少し難しいかと」


 ヨナが申し訳なさそうに言う。


「高級な仕立屋ほど、怪しいと思われる者を、あ、すみません、ルードさんが怪しいと言っているわけではなく」

「わかってる。錬金術自体が怪しいと思われているってことだろう?」

「そうなのです。服は長い時間、身につけるものです。毒をしみこませれば殺せます」

「暗殺の手段か……」

「それに、本当にあるかどうかはともかく、服に呪いをかけるなんてこともありうると……」


 少なくとも貴族たちは服を通じて呪いを掛けられることを恐れているのは間違いないのだろう。


「なるほどなぁ」


 着てもらえれば、錬金術で効果を付与した服の着心地の良さはわかってもらえる。

 だが、そもそも着てもらえないのだ。


「着てもらうためには錬金術が有効だと知ってもらう必要があると」

「そうなります」

「ふむ……」

「だがな、ルード、服に直接錬金術を使わなくていいじゃないか」

「どういうことだ?」

「服は汚れる。そして汚れたら洗うだろう?」

「そうだな」

「汚れ落としなら、薬じゃないから、店で売れるだろう?」

「……その発想はなかった」


 前世の俺は洗濯などしたことが無かった。

 錬金術の最も簡単な術式である【物質移動】で、汚れを移動させれば綺麗になったからだ。


 だからこそ、錬金術で汚れ落としを作るという発想がそもそも無かった。


「なるほど、トマソンさん。素晴らしいです! ルードさん。作れますか?」

「作れると思う。ちなみに……今流通している汚れ落としにはどのようなものがあるんだ?」

「石鹸ですね。すぐに持ってこさせます」


 ヨナが従業員に声を掛けると、すぐに用意してくれた。

 どうやら、この時代の汚れ落としは石鹸と言うらしい。


「こちらが衣類用。こちらが髪の毛用、こちらが――」


 石鹸には色々な種類があるようだ。


「なるほどなるほど」


 俺は魔法で石鹸を調べていく。

 どうやら動物性の脂肪と木灰を組み合わせた物が基本らしい。

 基本的に臭い。


「髪を洗う石鹸には植物性の油と海藻灰が使われているのか」


 こちらには嫌な臭いはしない。


「髪を洗う石鹸は高級品です。庶民は髪を洗うのに石鹸は使いませんから」

「……なるほど。安価にして効果を高めるだけで売れるな」

「もちろん、それはそうだと思いますが……」


 ヨナとしてはもう少し工夫が欲しいのだろう。

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