表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
二巻 3月15日発売!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/108

16 ヨハネス商会

 ギルバードは魔導機械を使って、ギルドカードに記録された情報を読み取っていく。


「魔王軍幹部の魔人一匹は確実にルードが仕留めただろう? それだけで五千万ゴルドにはなるだろうさ」

「記録されていればな」

「強い魔物の方が優先的に記録されるから、あまり心配しなくていいぞ」

「それはよかった」

「それに、記録されて無くても、俺がなんとかするさ」


 そういって、ギルバードはにやりと笑った。


 強い魔物の討伐記録ほど読み取るのに時間が掛かる。

 昨日倒した魔人は、かなり強かったので、読み取り完了までしばらく掛かるだろう。


 その時間、俺は気になっていたことを聞いてみることにした。


「ギルバード。俺には記憶が無いって話をしたよな?」

「ああ、確か気がついたら、廃墟で倒れていたらしいな。しかも全裸で」

「そうなんだ。それで、俺の過去を知っている者がいないか気になってな」

「ふむ。南方で倒れていたってことは、南方の人間である可能性が高いが……魔王軍のせいで南方は荒れているからな」

「情報を集めにくいか」

「ああ、死亡者も行方不明者も多いし、情報を集めるのは至難の業だろうな」

「そうか」


 俺を産み育てた存在が仮にいたとしても、生き延びている可能性は低いのかもしれなかった。


「それに、南方のことを聞きたいなら、俺なんかよりヨハネスさんに聞いた方が良いぞ?」


 ヨナ・ヨハネスはヨハネス商会の商会長だ。

 王都に連れてきてくれた恩人でもある。


「確かにヨナさんなら、詳しそうだな」


 ヨハネス商会は南方をまわって、避難する民から物資を高額で買い付けている。

 そのおかげで捨てざるを得ない物資を売ったお金で、無事逃げることができた避難民も多数いると言う話だ。

 利益などほとんどでない、危険性の高い慈善事業みたいなものである。


「あとで、ヨハネス商会に行って聞いてみるよ」

「それがいい」


 それから、俺はギルバードからあの日の戦闘状況について教えてもらった。

 俺が戦っている間、冒険者や騎士たちも、命を懸けて戦っていたのだ。

 冒険者たちの戦いぶりを聞き終わった頃、やっとギルドカードの読み取りが終わった。


「結果は……魔王軍幹部の魔人が一匹。それとゴブリン、オークその他合わせて千匹の討伐か」

「まあそんなものかな?」

「本当はもっと倒したんだろうが……すまないな」

「いいさ。後始末も全部丸投げしたし、少なめでもまったく問題ない」


 手数料と後始末代だと考えれば、少なめでもまったく文句はない。


「そういって貰えると助かる。えっと、魔人の報酬が七千万ゴルド。魔物が合わせて千五百万ゴルドだな」

「おお、結構もらえるな」


 炎の魔人の報酬が五千万ゴルドだったことを考えると、かなり高い。


「本当なら一億ゴルドぐらい楽に越えていてもおかしくないが……」

「気にするな。金には困っていないからな」


 俺は今回の報酬は全てギルドに預けておくことにした。


 その後、俺は冒険者ギルドを出て、ヨハネス商会へと向かう。

 商会の中に入ると、応接室へと通されて、商会長のヨナがすぐにやってきた。

 そして、お茶とお菓子を出してくれる。


「りゃあ」


 お菓子を見て、リアは嬉しそうにテーブルの上に向けて飛ぶ。

 そして、嬉しそうに食べはじめた。


 そんなリアを撫でながら、ヨナは言う。


「ルードさん、王都を守ってくださってありがとうございます」


 優秀な商人であるヨナは、戦闘の顛末を既に知っているのだ。


「礼には及ばない。ギルドから充分に報酬をもらっているからな」

「それでも、ありがとうございます」

「こちらこそ、ありがとう。俺の方こそ商会に随分と助けられた」


 襲撃の前、俺はヨハネス商会に大急ぎで必要な物資の集積を依頼した。

 ヨハネス商会が集めてくれた物資がなければ、もっと苦戦していただろう。


「ところで、トマソンたちは無事か? 怪我人がいるなら、ヒールポーションを用意するぞ」


 トマソンは、ヨハネス商会の専属護衛たちのリーダーだ。

 優れた冒険者でもある。

 魔王軍襲撃の際には、他の冒険者たちと一緒に前線で戦った。


「はい。負傷した者もいますが、治療を受けて全員が無事です」

「それならよかった」

「ルードさんの作ってくださったヒールポーションの効果は素晴らしいですね。全治一か月の怪我が、みるみるうちに治りました」

「数が足りたようでよかったよ。それもヨハネス商会が物資を集めてくれたおかげだ」


 効果には自信があった。不安だったのは数だけだ。


「そうだ、トマソンさんたちを呼んできましょう」

「いや、皆疲れて寝ているんだろう、寝かせておいてやってくれ」


 そう言ったのだが遅かった。


「おお、ルード、おはよう!」

「怪我はないか?」

「矢を肩に食らったが、ヒールポーションのおかげで痛みどころか傷痕一つない」

「それならよかった」


 ヨナが呼びに行かせるまでも無く、トマソンは走ってこちらに向かってきていたらしい。


「それにしても、大活躍だったじゃないか。錬金術師ってのは凄まじいな」

「錬金術師が増えれば、魔王軍を恐れる必要も無くなるんだが……」


 それには時間が掛かるだろう。

 それまでは俺が頑張るしかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ