08 カタリナの鎧2
「……ちなみにカタリナはいくつこの鎧を持っているんだ?」
同じ鎧をいくつも持っているならば、驚かせる効果も薄れる。
「これは、特殊な義足と合わせて作られた鎧なので一領だけです」
「それはいい。直しがいがある」
特殊な鎧ならば、一領しか無いことも知られているだろう。
傷やへこみを直すのは難しくない。
俺は【形状変化】を使って、一瞬で鎧の損傷を直した。
「相変わらずお見事です」
「ここまでは簡単なんだ」
「もう、完璧に直っているように見えますが……これ以上何をしてくださるのですか?」
「もっと壊れにくくする。ほとんど形を変えず、そして重さも変えずにな」
「そんなこと、可能……いえ、ルードさまの錬金術ならば可能でしょう」
「そのとおりだ」
俺は魔法の鞄から、オリハルコンとミスリルを取り出した。
カタリナの鎧の組成を変えるためだ。
具体的にはオリハルコンとミスリルの配合比率を変える。
オリハルコンもミスリルも多ければ多いほど良いと言うわけではない。
配合比率によって、合金の性質が変わるのだ。
硬くしたり、靱性を高めたり、逆に柔らかくしたり、脆くしたりもできる。
配合比率を変えるのは【形状変化】の術式では足りない。
分子構造を変える【物質変換】の術式が必要になる。
「……いくぞ」
俺は気合いを入れると、集中して錬金術の術式を実行する。
鎧の形状をほとんど変えず、重さも変えずに、配合比率を変えるのだ。
鎧の着用者であるカタリナに気付かれないほどの微妙な変化で済まさなければならない。
「……ひとまず完成だ。カタリナ身につけてくれ」
「はい!」
「手伝おう」
「あ、ありがとうございます!」
カタリナは素早く全身鎧を身につける。
「もう一度、先ほどと同じように動いてくれないか?」
「わかりました!」
カタリナはまた素早く動いていくれる。
それを見ていたガウも「がうぅ~」と言いながらカタリナの後ろを追いかけた。
「ぐる~」
そしてグルルも頭を撫でて欲しそうに鼻の先で俺の足をツンツンする。
「グルルはいいこだね」
再び俺は褒めながらグルルを撫でた。
大人しくしているだけで、とてもいい子なのだ。
グルルを撫でながら、俺はカタリナの動きを観察する。
「ありがとう、カタリナ、わかったよ」
「はい」「がう~」
俺はガウの頭を一度撫でる。
「少し調整したい」
「すぐに脱ぎます」
「いや、脱がなくてもいい。そのままやろう」
調整は【形状変化】だ。
着せたままでも、問題なくできる。
「動くなよ」
「は、はい」
改めて全身鎧全体を魔法で鑑定する。
そうしてから【形状変化】で微調整を施した。
「これでよしっと」
「もう、終わったのですか?」
「ああ。ほんの少しの調整だからな。ここの角度を一度変えたり、こっちは二度」
「微妙な違いなのですね」
「だが、その違いが生死をわけることもある」
「はい」
「ついでに鎧の対魔法効果も強化しておこう。動くなよ」
「は、はい」
俺はカタリナの鎧に錬成陣を描いていく。
以前、俺の服や鎧を強化したときに作った錬成陣用の赤いペーストを使って、鎧に細かい文様を描いていく。
「俺の服と鎧にかけてあるものと同じだ」
「お揃い……」
「そうだな。だが、発動させたら錬成陣は見えなくなるが」
錬成陣を描き終わると、魔力を込めて発動させる。
「これでよしっと」
「対魔法効果とはどのようなものなのでしょう?」
「多少の魔法なら効かなくなる」
「す、すごいですね」
「ああ、すごい。だが、強い魔法は防げないから過信はしないように」
「わかりました!」
「一度、フル装備で見せてくれないか?」
「はい!」
カタリナは剣を腰に差し、盾を構える。
「鎧もそうだが、盾もきれいな方がいいな」
盾は目立つ。
きらきらさせたら見栄えがいい。
「盾と剣を貸してくれ」
「はい」
「剣は……少し欠けたか?」
「はい、油断しました」
「まあ、敵も弱くなかったしな、数も多かったし」
刃こぼれはやむを得ない。
「盾は……多少のへこみがあるな」
「盾で殴ったりしてたので……」
「それで正しい。盾は武器でもあるからな」
話しながら、俺は剣と盾を魔法で鑑定していく。
「重いとか、バランスが悪いとか感じなかったか?」
決戦の前に剣と盾は軽くしたのだ。
「いえ、全くもって、最高でした! これまで持ったどの剣、盾よりも使いやすく素晴らしかったです」
「ならよかった。今後使っていくうちに何か気付いた点があれば言ってくれ」
「わかりました!」
俺はオリハルコンとミスリル、鋼鉄のインゴットを用意する。
そして【形状変化】【物質変換】を使って、盾と剣を修復しつつ強化した。
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