50 魔王軍襲来の後始末。
50話で一巻の初稿は終わりです。実際の書籍はこれを改稿し、書き下ろしを加えてあります。
3/15 2巻が発売です!
俺は【物質移動】で暴風を吹かせ、矢を防ぎながら、大きな声で叫んだ。
「安心しろ! この地竜は手懐けた!」
「え? ルードの兄貴?」「うおおおお!」
「さすがルードの兄貴だ……」
俺を知る冒険者たちが、驚きや安堵、尊敬の混じった色々な声をあげる。
「あれが、噂の……」「地竜を手懐けるとは」
「魔人殺しのルードヴィヒ」
俺と面識のない騎士たちも冒険者たちの反応を見て、俺が誰か理解したようだ。
騎士たちもどうやら俺の名前は知っているらしい。
話が早くて助かる。
「ルード! 魔人はどうなった?」
ひときわ通る声は冒険者ギルドのマスター、ギルバートのものだ。
「きっちり仕留めた! 安心しろ!」
「見事だ!」
ギルバートが嬉しそうにそう言うと、
「「「うおおおおおおおおおおおおおっ!」」」
冒険者も騎士たちも歓声を上げる。
「地上にいるやつらは任せろ」
「ありがたい! 城壁を登ってきたやつの対応だけで精いっぱいなんだ!」
ゴブリンとオークは必死に城壁を登ろうとしている。
人族の匂いを嗅いで、色々な欲を刺激されて我を忘れているのかもしれない。
「そりゃそうか。ゴブリンもオークも、ただでさえ人を襲うのが好きだったな」
ゴブリンもオークも、人肉が好きだし、人族の女を犯すのも好きなのだ。
「地竜、はね飛ばせ」
「ぐる~」
地竜は勢いよく突進し、オークやゴブリンをはね飛ばして行く。
俺も【物質移動】で石を適当に飛ばして、倒していく。
すぐに追いついたカタリナとガウも、ゴブリンたちを次々に仕留めていった。
ゴブリンとオーク連中が全滅するまで三十分かかった。
「ルード! 見事な魔法。いや、錬金術だったな」
城壁からロープをたらし、するすると降りて来たギルバートがそんなことを言う。
「ああ、人族には錬金術の方が魔法より相性がいいからな」
「向こうにも敵の死骸が転がっているんだろう? 後片付けはこっちに任せてくれ」
俺はここ数日、偵察したり防壁を作ったり、薬を作ったりで大忙しだった。
「それは助かる。頼めるか?」
「ああ、ルードは安心して休んでくれ」
すぐに休みたいのはやまやまだが、確認しないといけないことがある。
「怪我人はどうだ?」
「たくさん出たが、ルードのヒールポーションのおかげで皆無事だ」
「それは良かった。俺の診察が必要なものは?」
「それも大丈夫だ、安心してくれ」
何よりである。
これで俺も安心して休めるというものだ。
「それじゃあ、後始末は頼んだ。すまないな」
「ゆっくり休め。ルードがいなければ、王都は壊滅していたぞ。ありがとう」
そしてギルバートは俺の乗っている地竜を撫でる。
地竜は大人しく撫でられていた。
「まさか、地竜を手懐けるとはな……。ルードにはいつも度肝を抜かれる」
「魔人に支配されてここまで連れてこられたんだ、放置したらかわいそうだからな」
「こんな巨大な竜を恐れずに哀れに思うとはルードはやはり違うな」
変なところにギルバートは感心していた。
「地竜の従魔登録もやっておくよ」
「ありがとう、助かる。用があったら自宅に来てくれ」
「ああ、わかった」
俺は後を全てギルバートに任せると、王都の外、北側にある自宅へと戻る。
なぜか、カタリナが付いてきた。
「カタリナは、王都に戻らなくて良いのか?」
「まだ、敵がおそってくるやもしれませぬゆえ!」
「そうか」
「それに、まだ聞きたいことがありますゆえ!」
「そういえば、そうだったな」
リアが魔人から魔王と呼ばれていることと、俺が千年前の人間であること。
「なんと説明すれば良いのか」
考えながら、歩いているうちに、自宅に到着する。
「そういえば、壁で覆っておいたんだったな」
高さ十メトルを超える幅の広い頑丈な壁だ。
これでは避難民たちが戻ってきても中に入れない。
それに日あたりも最悪である。
とはいえ、夜盗やゴブリンの侵入を防ぐのに壁は有用だ。
自宅と集落を囲む壁は高い壁は、高さニメトル程度まで下げておく。
そして、四方に門を作っておいた。
夜以外は開放しておく形にしておけばいいだろう。
「……あとは住民のみんなと相談して決めよう」
自宅前まで地竜で移動する。
「お前は家の中に入れないな」
「……ぐるぅ」
「折角だ、小屋を作っておいてあげよう」
「ぐるるぅ!」
地竜は尻尾から頭の先まで測った体長が十メトルはある。
大きな小屋が必要だ。
二十メトル四方で、高さ十メトルの小屋を作る。
俺の家よりは一回り小さいが、充分大きい。
地竜が口で開閉できる扉も取り付けて完成だ。
「お見事です! さすがルードさん」
「ぐるぐうるるる」
甘えたように、地竜が俺に頭を押し付けてくる。
「いつもはこの小屋にいなさい。人に噛みついたらだめだよ」
「ぐるぅ」
名前も考えてやらかねばなるまい。
「うーん。そうだなぁ。お前の名前はこれからグルルだ」
我ながら素晴らしいネーミングセンスである。
「グルル!」
グルルも嬉しそうに鳴いている。喜んでもらえてよかった。
そして、俺はガウとリア、そしてカタリナと一緒に自宅に入って、眠りについたのだった。
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