40 ギルバートの依頼
今日2回目の更新です。
食事会が終わると、俺は家に帰る。
ガウの身体に発毛剤兼育毛剤を塗り、ヨハネス商会で買った大きなベッドで眠った。
次の日の朝。
新しく建てた家で眠っていると、
「ルードいるんだろ!」
冒険者ギルドのマスター、ギルバートが扉を叩く音で目を覚ました。
ヨハネス商会に伝言を頼んでおいたので、俺の居場所を知ったのだろう。
俺が玄関に向かうと、リアとガウもついて来る。
「やはり、ここで正解か」
俺の顔を見て、ギルバートはにやりと笑う。
どうやら、ヨハネス商会に、俺の居場所を聞いてやってきたらしい。
「それにしても立派なもんだ。一日で建てたとは思えんな」
「錬金術を使えば、造作もない」
「すごいもんだなぁ。ガウもこのくらい広ければ、楽しいだろう?」
そういって、ギルバートはガウの頭をワシワシと撫でる。
ガウは嬉しそうに尻尾を振った。
「それで、凄腕の錬金術師の俺に、緊急の用件ってのはなんだ?」
何の用もなく、ギルドマスター自ら来るわけがない。
「ああ、南方で魔物のスタンピードが確認された」
スタンピードとは集団暴走のことである。
大量の魔物が暴走し、すべてを破壊しながら進撃していく。
その進路上にあるものは、堅固な城塞だろうと破壊されかねない。
「南方、ってことは魔王軍の城の方か?」
「そうだな。非常に近い。魔王軍対策のために優秀な冒険者が国に雇われているってのは話したな」
「ああ、それは聞いた」
「そいつらから国にスタンピード発生の報告があり、国からギルドに連絡がきた」
「なるほどな」
「発生の要因は不明。そして目的地はどうやら……王都らしい」
「それは、由々しき事態だな」
俺がそう言うと、ギルバートは深く頷いた。
自然発生したスタンピードなら、まっすぐ王都に向かうというのは考えにくい。
「魔王軍がスタンピードを意図的に発生させたか?」
「わからん。だが、誰が何の意図で発生させたかはともかくだ。俺たちは王都を守らねばならん」
「途中にある村は?」
「国の指揮下にある精鋭冒険者が避難させている。らしい」
「らしい?」
「精鋭冒険者たちは国の指揮下にある。俺には一部しか情報がおりてこないんだ」
ギルバートも苦労しているのだろう。
「それで、スタンピードはいつごろ、王都に到達予定なんだ?」
「二日後だ」
「……早いな。規模は?」
「不確定な要素は多いのだが、数千体規模と考えた方がいいだろう」
「構成は?」
「これも不確定要素が多いが、ドラゴンらしき影を見たというものもいる」
「……それはきついな」
「ああ、可能なら王都から人を避難させたいぐらいだ」
だが、人口の多い王都から民を避難させるのは、さすがに現実的ではない。
「腹立たしいことに貴族連中は、ひそかに逃げ出しているがな」
「まあ、そんなもんだろう」
「で、本題だがルードに王都防衛に手を貸してもらいたい」
「わかった。協力しよう」
俺が快諾すると、ギルバートは少しだけ微笑んだ。





