26 戦利品の回収
「よしよし。魔狼。これからよろしくな」
「がぅがぅ」
嬉しそうに俺の顔を舐める魔狼の全身を俺は撫でる。
リアもパタパタ飛びながら、魔狼の頭を撫でていた。
魔狼を撫でてみると、やはり毛のないところが目立つ。
特に顔の傷跡がひどい。
ぱっと見、恐ろしい形相だ。まるでゾンビ犬に見えなくもない。
「毛が生えそろうまでの間のために服を作ってあげた方がいいかな……」
「がぅー?」
元野生なので服を着せられることを嫌がるかもしれない。
毛の伸び具合をみてから服は考えよう。
「そうだ、名前も付けてあげないとな」
そういうと魔狼の尻尾が勢いよく振れた。
魔狼は人の言葉を、ある程度はわかっていそうだ。
俺は少し考える。名前は呼びやすい方がいい。
「そうだなぁ。ガウだな」
「がぅ?」
「これからお前の名前はガウだ」
ガウと鳴くからガウである。
我ながら素晴らしいネーミングセンスだと思う。
ガウも嬉しそうに尻尾を振りながら、首をかしげていた。
治療も終わり名前も付け終わった。
次は戦闘の後始末である。
「さてと。ガウとリアは休憩していてくれ」
そういったのに、ガウとリアは俺にしっかりついて来た。
俺はガウとリアの頭を一度撫でてから、魔人の死骸を調べ始める。
死骸は全部で三つある。
青黒い魔人と、赤い魔人と、炎の魔人だ。
俺はまず青黒い魔人と赤い魔人を調べる。
「……普通の魔人だな」
千年前、俺が何度も戦った魔人と大差ない。
「やはり魔人の魔石は質が高いな……」
売ってもよいし、錬金術の素材としても有用だ。
「……あとは装備もいい品質だな。オリハルコンじゃないか。しかも、これは」
しっかりと錬金術で強化されている。
「……魔人たちは現代でも錬金術を使っているのだろうか?」
鎧と剣をさらに調べる。
すると、かなり古い時代に製造されたものだとわかった。
「……魔人が錬金術を使っているとは限らないか。昔の遺跡から発掘したのかもしれないしな」
魔人は寿命が長い。
錬金術が盛んだった千年前から使い続けていた可能性もある。
「とりあえず装備は回収しておこう。売っても高いし素材にしてもいい」
魔石と装備を回収した後、死骸を改めて燃やす。
もう消し炭なのでアンデッドになることは無いだろうが、念のためだ。
次に俺は炎の魔人を調べる。
「調べると言っても炎の魔人は身体を炎にしていたせいで、死骸が残ってないんだよな」
炎の魔人はまともな鎧も武器も装備していなかった。
「戦利品はコアとなっていた魔石だけか」
コアは俺が戦闘中に生きていた炎の魔人から直接引きちぎった。
鉄を溶かすほどの高温だったので、地面に放置して冷ましておいたのだ。
「まだ生温かいが、これだけ冷えていれば充分だな」
炎の魔人のコアは冷めやすい物質だったようだ。
俺はコアを手に取って、よく調べる。
「……なんだと。いや、まさか」
コアは一般的な魔石とは全く様相の違った。
魔石がとある物質に包まれている。
そして、その物質は、俺のよく知っているものだった。
「……これは、……賢者の石なのか?」
俺は目を疑った。
賢者の石は、俺が開発した物質である。
見間違えるはずもない。
もう一度確認してみる。
やはり炎の魔人の魔石は、賢者の石に包まれていたのだった。





