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【書籍版】若返りの錬金術師~史上最高の錬金術師が転生したのは、錬金術が衰退した世界でした~  作者: えぞぎんぎつね
一巻 アース・スターから発売中!

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15 魔法の鞄と防具

 錬成陣が光り輝き、次に鞄全体が輝いた。

 鞄は小さくなっていき、それに伴い輝きはゆっくりとおさまっていく。


 俺の肩に乗っているリアが、興奮して尻尾を激しく振った。

 尻尾がべしべしと俺の首に当たる。少し心地が良い。


「……どうなったんだ? ルード」

「成功だ。鞄の外見は小さくなったが、内容量は格段に増えている」


 俺は自分の収納魔法に入れておいた素材などを取り出して鞄の中へと入れていく。

 採集しまくった薬草に加えて、街で買ったものも鞄へと移す。


「……随分と入るんだな」

「そのための鞄だからな。魔法の鞄があると、討伐した魔物を中に入れて持ち運んだりもできる」

「それは、便利だな」


 トマソンも護衛たちも皆驚いてくれていた。

 もっともっと、錬金術の実用性を知ってほしいものだ。


「さて、次は装備だ」


 次は服の強化だ。既製品に錬金術で強化を施すだけなので、難しくはない。

 俺はリアを肩から降ろすと、着ていた服を脱ぎ、下着だけになる。

 そして、服を机の上におく。


「服は余分に買っておくべきだったな」


 千年前の俺はいつも同じ服を着ていた。

 当然、錬金術で強化した服である。


 ほとんど破損しないし、破損してもすぐに錬金術で直していたので、一着で充分だったのだ。

 そのうえ、汚れても錬金術の【物質移動】を使えば一瞬できれいにできた。


「服にはどういう効果をつけるんですか?」


 魔導師の護衛が興味津々な様子で尋ねてくれる。

 錬金術に興味を持ってくれたようで凄く嬉しい。


「そうだな。耐久性、耐火性、耐寒に……、耐刃、耐衝撃、耐水に、内側から外に湿気を蒸発させる効果かな」

「すごい……そんなことができるんですか?」

「ああ、可能だ。あ、それに絶縁効果と耐魔法効果もつけておくか」


 絶縁は雷魔法を食らったときに役に立つ。


「耐魔法? 耐火とか耐寒と、違うのですか?」

「簡単に言うと、魔法というものは魔力を炎や氷に変換したものだろう?」

「はい」

「それを逆に変換する」


「……どういういみでしょう?」

「魔法で作られた炎や氷を魔力に戻すってことだ。服に触れた瞬間にな」

「…………可能なのですか?」

「大魔法は難しい。変換が追いつかないからな」


 だが、弱い魔法ならば、なんとかなる。

 服に触れた瞬間、無害な魔力に戻って霧散する。


 トマソンも他の護衛たちも、とてもではないが信じられない。

 そんな表情を浮かべている。


「まあ、見ていてくれ」


 俺は服の上に練成陣を書いていく。

 魔法の鞄よりはずっと簡単な練成陣だ。

 服強化用の練成陣が簡単と言うわけではなく。魔法の鞄が難しすぎるだけである。


「これでよしっと」

 俺は強化した服を身につける。同時にリアが肩の上に乗ってきた。


「ルード、その服には、その耐火とか耐魔法とかの効果があるのか?」

「もちろんだ」


 俺は指先に炎を灯すと、服を炙った。

 服に炎が触れると同時に、炎は消える。


「な?」

「む、無詠唱?」

 魔導師が驚いている。


「やっぱり無詠唱は珍しいのか?」

「ものすごく、珍しいです」

 錬金術と魔法の衰退が著しいのは間違いないらしい。


 服の次に強化したのは靴だ。

 靴にかける強化は、服とほぼ同じである。

 快適性を高め、耐久性と防御力を上げるのだ。


「服と靴の次は……鎧だな」


 俺の買ってきた鎧は革製だ。

 鎧は快適性を特に求められない。


 革の鎧を軽くして同時に物理防御と魔法防御を上げておく。

 使うのは主に【物質変換】の術理である。


 強化が終わると、トマソンに鎧を触らせてくれと持たせてくれと頼まれた。


「おお、ただでさえ軽い革の鎧が、さらに軽くなったな。ルード、凄いもんだな」

「防御力も並みの金属鎧よりもずっと高い。剣でも簡単には斬れないようになっているぞ」

「本当か?」

「本当だが、一応、テストしてみたい。この革の鎧を思いっきり剣で斬ってみてくれないか」

「いやいやいや、折角ルードが強化したのに、斬れてしまったらどうする?」

「そう簡単に斬れるようなら、やり直しだ」

「だが、いいのか?」

「戦闘中に敵に鎧ごと斬られたらシャレにならないからな。そうならないためのテストだ」

「それは、確かにそうだな……、だが俺は並みの金属鎧ぐらいなら斬り落とせるぞ? 本当にいいのか?」

「そのぐらいじゃないとテストにならん。思いっきりやってくれ」

「……わかった。ルードがそういうなら。恨みっこなしだ」

「当然だ」


 トマソンが腰の剣をすらりと抜いた。

 トマソンは一流のベテラン冒険者。その剣も鋼鉄製のなかなかな業物だった。

 その剣を上段に構える。


「ではいくぞ」

「ああ。思いっきりやってくれ」

「はあああああああ!」


 気合一閃。力強くトマソンは剣を振り下ろす。

 見事な剣筋だ。


 ――ガィィンキィィィン


 剣が革の鎧にあたったとは思えない音が鳴る。

 俺の革の鎧にトマソンの剣が当たって、壊れたのはトマソンの剣だった。


 刃の中ほどからぽっきりと折れて破片が談話室の扉の方へと飛んでいった。

 間の悪いことにちょうどその扉が開かれる。

 俺はすかさず高速で移動して、折れて飛んだ刃を手でつかむ。


 眼前で止まった剣の破片を見て、

「わっ!」「りゃ!」

 扉を開けた人物と、俺の肩の上に乗るリアは、悲鳴に近い声を上げた。


「驚かせてすまない」

「い、いえ」


 談話室の扉を開いたのは、ヨナだった。

 俺たちの様子を見に来たのだろう。



 被害が出なくてみんな胸をなでおろす。

 そしてほっとしたトマソンは、じっと自分の折れた剣を見る。


「折れたか……。俺の剣が……」

 トマソンはかなりショックを受けているようだった。


「すまない。俺も剣の方が折れるとは思わなかった」

「まだまだ、腕が未熟だったようだ」

「いや、そうではない」


 俺は鎧は壊れないし、剣も折れないと思っていた。

 俺の革の鎧は衝撃を吸収するようになっている。 

 そしてトマソンの剣の質は相当高い。


 剣が折れるほどの剣速をトマソンが出せるとは思わなかったのだ。


 そう俺はトマソンに説明する。


「侮っていた、すまない。剣は弁償させてくれ」


 これは言わなかったが、千年前の基準ではトマソンは身体強化の技術がつたない。

 だから、折れないと思っていたというのもある。

 身体強化の技術がつたないのに、これほどの剣速を出せるとは、まったく思っていなかった。


「剣の弁償は気にしないでくれ……。ルードさんに剣の腕を褒められると嬉しいものだな」

 そんなことを話していると、ヨナの肩の上にリアが飛んでいった。


「リアさん、可愛いですね」

「りゃっりゃ」


 ヨナに撫でられて、リアは嬉しそうだ。

 リアを撫でながら、ヨナが言う。


「みなさんはここで何をなさっているのです?」

「ああ、装備を整えていたんだ」

 俺はヨナに作った魔法の鞄と、防具と服、靴の説明をする。


「なるほど。錬金術で。これがその魔法の鞄ですか?」


ヨナが一番興味を示したのは魔法の鞄だった。

 商売人としては一番気になるのは当然だ。


「これは凄いですね。商売の仕方が変わりそうです」

 そういって、ヨナは目を輝かせた。

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