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7月10日 准教授×Tilt×サーボパルサー

7月10日


 見事なまでの快晴。昨日までの雨はどこいった。やっぱり柳下には何か不思議な力があるらしい。


 だいたいいつもと同じくらいの時間に研究室に到着する。疲れがたまっていたのか、【検閲済み】駅で寝過ごしそうになった。起きるのがあと五秒遅れていたのなら、そのまま【検閲迂三】までスヤスヤとしてしまっていただろう。


 午前中はぼちぼちとゼミ資料について片づける。銀さんがやってくれた実験方法なんかのところをちょちょいと見直し、解析手法のところに詳しい説明を入れた。さらに新しく図を加えるに至ってレイアウトも変え、なんか構成がガチっぽくなる。


 少なくとも、前回と同じだとは言われないだろう。


 ポチポチとこっちががんばっている傍ら、ハニカム班のメンツがサーボパルサーを弄繰り回していた。昨日のこもりんの指示に従い別方向に傾けて試験機を動かしてみるらしい。


 男数人がかりで試験機を傾ける姿はまさに圧巻。同時に、これほどむなしい努力もないと思った。やっている側も意味がないって理解しているし。


 結局、何度やっても開始五~十分後には止まってしまう。もう本格的に手遅れになる前にさっさと業者を呼ぶべきだと思ったけど、どうしてもこもりんが首を縦に振らないらしい。


 そしてなんと、とうとうこもりん自身がサーボパルサーの調整をすることに。生憎私はその様子を見ることは叶わなかったが、見ていた人たち曰く『いろんな意味でなかなか面白かった』とのこと。詳しくはそいつらに聞いておくこと。


 昼近く、見知らぬ女子生徒が研究室にやってくる。真島さんの友達らしい。話を聞く限りでは他学科(たぶん医療系?)の人らしく、このあと脳波を測るとかなんとか言っていた。


 よくわからんまま三十分くらいで研究室を後にする。なんだったんだろう?


 1300頃、衣笠先生が学部生室にやってくる。この時間に珍しいこともあるものだと思っていたら、『ちょっと悪いけど、暇な人これを番号順に並べてくれない?』とレポートの束を机に置いた。どうやら回収し採点を済ませたのはいいものの、番号がぐちゃぐちゃになってしまったようだった。


 とりあえず、みんなと協力して事に当たる。確認用の『よくできました!』スタンプがなかなかかわいらしいデザイン。しかも、達成度に応じてデザインが違うという、謎のこだわりもあった。


 あと、レポートの表紙に書かれた先生の一言コメントがなかなか辛辣。『ホチキス×』、『字が汚い』、『オマケ』と全体の三割近くが何かしら書かれていた。微妙に飛んでいる番号が多かったのも気にかかる。


 十五年度生……っていうか、最近の理系学生はたるんでいるらしい。ホチキス一つまともにぱっちんできないとか、いったいどうなっているんだろうか。


 午後もゼミ資料の修正。銀さんがやってきたので、ものつくり支援センターの件を頼んでおいた。こもりんから判子をもらい、あとは下の先生と話し合うだけだとのこと。なるべく早く加工ができたらいいなぁ。


 そうそう、その銀さんだけど、とうとう【検閲済み】のちゃんとした内定がもらえたとのことだった。おめでとうございます。


 夕方ごろ、サーボパルサーがどうしても駄目だったハニカムの連中が報告書を書き上げ、こもりんに提出することとなった。が、誰が提出するかで延々と不毛な論争が繰り広げられる。


 ブラック柳下がじゃんけんにより早々にその輪から抜け出そうとするも、策士青松が勝負の直前『勝った人がアウトな!』と付け加えたことで逆にはめられてしまった。必死の弁明をする姿がよく目にこびりついている。


 なんだかんだでみんなで行くことになったらしく、やつらは悲痛な面持ちで特攻を仕掛けに行った。


 そして三分もしないうちに戻ってきた。本当に渡すだけで終わりだったらしい。あの醜い争いはなんだったというのだ。


 だいたいこんなもんだろう。今日は珍しくその日のうちに書いているけど、ゼミ資料の最終確認をしてもらうために衣笠先生を待っているってだけだ。なるべくならさっさと帰りたい。


 時刻は1914。電気がついているからまだ大丈夫だとは思うけど、もし帰ってこなかったらどうしようか。そもそも、帰ってきたところで見てもらう時間とかあるのだろうか。


 周りには誰もいない。人の気配はなっしんぐ。たまにはこういうのもいい。とりあえず、あと三十分待ってダメだったら諦めようと思う。

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