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第94話・失礼者には制裁を

 

「なんで……! わたしの魔法矢が無力化された……っ!? 一体何が」


 バトルロワイヤルも大詰め。

 狼狽えるレナへ、俺は親切心で教えてやる。


「アリサのユニークスキル、『マジックブレイカー』。こいつ魔法が一切効かないんだよ……俺も最初はビックリしたもんだ」


「ッ……!! このチートチームめッ!! 範囲攻撃以外でもズルばっかの腰抜け! 断罪してやる!!」


 魔力をたぎらせ、大弓を引くレナ。


「どうするアルスくん?」


「あぁ、お前は少し休んでて良いぞ」


 衝撃波と共に、矢が撃ち出された。

 豪速で向かってくるそれを蹴りで横から弾き、アリサを守る。


「こいつとは俺が決着をつける」


 数歩前へ出た俺に、レナは憤怒した様子でさらに激しく魔力を輝かせた。


「この雑魚! ザコザコザコッ!! こっちは弓だけで数多の死線をくぐり抜けてきたのよ……! 魔法無効化なんていくらでも突破方法はある!!」


 新たな矢が装填され、再び発射される。

 色が違うな……先端部に細工が施されていた。


 アッサリ手で掴み、グシャリと握りつぶす。


「先っぽに神経性の毒を塗ってたのか……、確かにこれなら魔法無効化は関係ないな」


 既に彼女は次の行動に移っていた。

 今度は曲射を混ぜ込んだ、6本の矢による同時飽和攻撃だ。しかも、先端部に爆薬が取り付けられた炸裂矢。


 なら………。


「––––アレを試すか」


 俺たちの周囲を、ほんの一瞬だけ火炎が覆った。

 自分にとっては僅かな出力だが、それだけで向かってきた炸裂矢は1本残らず滅せられる。


 さすがのレナも、この防がれ方は予想外だったらしい。


「なっ、何よ今の……六角形の焔––––おぐっ!!?」


 彼女の目では捉えきれないほどの高速で肉薄、さっきアリサが打ち込んだところと同じ部分へ腹パンした。


「よそ見してんな。焔に関しては、悪いけどまだ秘密でね」


「ぐふっ……! づああッッ!!!」


 さらに魔力の輝きが増す。

 ナイフを取り出したレナが、俺の眼球目掛けて先端を向けた。


 ––––ガァンッ––––!!!


 またしても六角形の焔が、ナイフ攻撃を防ぐ。

 隙のない連続攻撃だけど、俺には全く届かない。


 焦り顔で後方へステップしたレナは、ボタボタと汗を落としながら震えている。


「どうした、さっきまでの余裕は?」


「ッ……!」


 思ったとおり、本気でやってこれが限界だったらしい。

 いよいよ明白になった力の差、レナは涙目にすらなっていた。


「こんなのって……! 王立魔法学園の生徒会長が、ここまで化け物だったなんて……!」


 言っている最中のレナへ、俺は最後の忠告を行う。


「今ならまだ、自分から場外に落ちれるぞ」


「だ、誰が降伏なんかッ……! お前みたいなチート野郎にわたしは絶対屈しない!! 最後まで抵抗して、傷だけでもつけてやる!!!」


 一瞬見事な敢闘精神だと思ったが、たぶん違うなと察しがつく。

 今この瞬間も、カメラはライブ配信を続けている。


 レナの狙いは、圧倒的劣勢のなか少しでも俺へ抵抗し、これを見ている大衆へ“ピンチに抗う冒険者”を演出することだ。


 そうすれば、竜王級に抗った果敢な冒険者というイメージがつく。

 怖い思いをしても仕事は増えるという算段だ。


「そうか、じゃあ––––」


 あれだけ好き勝手言われて、さらに商売の踏み台にされるのも癪である。

 ここで俺が取るべき行動は1つ。


「……殺すつもりで行くぞ」


 抵抗する演出なんて微塵もさせず、決着をつける。

 それも、アイツが最初に言ったことをそっくりお返しするのがベストだろう。


「このっ!!!」


 炸裂矢が俺へ向かって連続で放たれる。

 纏う魔力といいこの爆発といい、見た目が派手なだけで全然大したものじゃない。


 歩いて接近した俺は、煙の中から彼女の胸ぐらを掴んだ。


「ひっ、離……せっ! 汚い手で触るな卑怯者ッ!!」


「はぁ……、一応警告はしたからな」


 では、ちょっと痛い思いをしてもらおう。

 俺は彼女を真上へ放り投げると、飛翔魔法で上空に先回りする。


「『身体能力強化(ネフィリム)』」


 吹っ飛んできたレナの背中へ、非常に重い回転踵落としを打ち込んだ。


「ガッ……! ウアッ!?」


 目を見開き、口から胃液混じりの唾液が吐き出される。


 そのまま叩き落とされたレナは、武舞台に激突した。

 轟音と煙が晴れると、ヒビの中心––––顔から足先まで硬いコンクリートへめり込ませながら、彼女は気絶していた。


 眩しいくらいに輝いていた魔力が、フッと消え失せる。


「わたしじゃなくて、自分がカメラの前で地面に這いつくばらされてんじゃん……。無様すぎ……」


 先ほど挑発を受けたアリサが、心底呆れた様子で変身を解除。

 俺は静かになったレナの腕を引っ掴んだ。


「今度からは、初対面の人へ失礼がないように」


 気を失ったレナを持ち上げ、足先だけ場外の水につけてやる。

 これでコイツの狡猾な目論見は、完全に潰せただろう。


「強い……!! あまりに強すぎるっ!! 第77回大会は、竜王級アルス・イージスフォード&アリサ・イリインスキーのペアが優勝をもぎ取りましたっ!!!」


 試合終了の鐘が鳴る––––俺たちは、ファンタジア・コロシアムを圧倒的大差で優勝した。


ブクマや評価、ほんっっっっとうに励みになってますッ。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん、強すぎるよね。 素直に降参しとけば、まだ良かったものを・・・。 チートチームって・・・ただ単に身体能力や魔法能力を強化しているだけで、そっちみたく毒なんてものは何一つ使っていないん…
[良い点] 口ではなく、実力で相手を捻じ伏せる様が格好いい [一言] チートとか卑怯者って言いながら、自分はアウトレンジ戦法が取れる弓とか(笑)
[一言] こっちは弓だけで数多の死線をくぐり抜けてきたのよ……! ってカッコつけてるけどさ人には範囲攻撃やら何やら卑怯だのなんだの言っといて毒とか使ってる時点でどっちが卑怯というかヘタレなんだろなって…
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