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第78話・恋人に見せる下着

まだシリアス気分を楽しみたい方は、少し時間を置いてから読み進めください。

 

 ––––猛暑真っ盛り。


 アルテマ・クエストが終わって数日……非日常な冒険が過ぎ去り、再び俺は学園生活へ戻っていた。

 ちな時刻は昼休み、暑さにボーッとしながら会長専用椅子で生徒会日報を書き綴っていたところ……。


「ねぇ会長、恋人に見せる下着って何色がいいのかな」


 お弁当を食べ終わった生徒会会計、アリサ・イリインスキーの何気ない一言に俺は思考を巡らす。


「あぁ……下着なぁ、勝負っつってあんま気張るもんじゃねぇだろ。第一人に見せる用途じゃ–––」


 言いながら正気を取り戻した俺は、自身のデコを机に全力で打ちつけた。

 えっ、下着……? どういうこと?


 激しい音に、アリサが銀髪を震わせながら驚く。


「ど、どうしたの会長!? 頭大丈夫!?」


「いやっ言い方! それにおかしいのはお前だからッ!! なに今日朝飯食べ忘れちゃって〜くらいのノリで下着とかぶっ込んでんの!?」


 頭がジンジンする。

 油断していた……、暑さにやられて異常な質問へ疑問符すら浮かべられなかった。


「いや〜ほら、会長って全校生徒の代表でしょ? 俗に言うお悩み相談ってやつじゃん」


「俗そのものだわ!! どう間違ってもここでしちゃダメな話題だし、俺じゃなかったらセクハラで詰んでるから!」


 そう、セクハラである。

 異性同性問わずいきなり下着の話題なんぞ出そうものなら、普通ドン引き。


 非常にセンシティブと言っていい。


 シュンと落ち込むアリサへ叱咤しようとするが、1つの可能性が浮かぶ。

 そういえば忘れていた……彼女は外国人、国が違う俺たちとは根本的に価値観に相違がある。


 ミリシアじゃセクハラ同然でも、彼女の母国では下着云々などごく自然な会話かもしれない。

 そう考えると、ここで頭ごなしに叱るのは悪手極まる。


「いや……まぁ、ちょっと驚いたけど考えてみれば普通なのかもしれないな。すまん会計、急に怒鳴って」


 取った行動は大人の対応。

 王立魔法学園 生徒会長として、決して感情では動かない。


「いやこっちこそ……ごめんなさい! ちょっと熱に浮かされてた、会長には“ミライさんがいる”しね」


「そうだぞ、だからいきなりお前の下着の話なんてされてもこっちは困––––」


身体能力強化(ネフィリム)』。

 俺は笑顔のままアリサが全く反応できない速度で肉薄すると、首筋へ手刀を突きつける。


 衝撃波が彼女の髪と服を揺らした。


「詳しく」


「ヒャうぅっ……! その。ええっと、ほら……ミライさんってどことなく会長に対して向ける瞳が違うじゃん。見てたら好きなんだな〜ってわかる……よ」


「フーン」


「ほ、ホントだってばぁ!」


 冷や汗を流し、青い瞳で抗議するアリサ。


 そういうもんなのか、それとも俺が鈍感過ぎるだけか……。

 エンチャント解除、手を下ろし俺は自分の椅子へ歩く。


「あれ、殴らないの? てっきり2、3発は殴られるかなーと思ってたんだけど……」


「人をDV常習犯みたいに言うな、たかがこんなちょっかいで手は出さん」


「もしユリアに同じちょっかい出したら3回は腹パンされるよ。わたし」


「えぇ……? マジかよ、アイツやっぱ怖いんだな。これから軽口叩くのやめとこう」


「大丈夫大丈夫、殴るのは特別にわたしだけって言ってたから。会長やミライさんには手を出さないと思う」


「それはそれで問題だぞ……、俺から注意しておこうか?」


 ブンブンと全力で首を横へ振りながら、アリサは断固拒否する。


「いやいいっ、ユリに殴られるたびなんかこう……胸がポカポカするんだよね。わたしはそれで人肌の暖かみを感じられる」


「歪んでるなぁ……、色々ねじ曲がってるよ。でもそこまでお前が言うなら俺は何も……けど下着云々はユリアとかに言うなよ、アイツ超マジメだし」


「ありがと〜、でも大丈夫。だって––––」


 生徒会室の扉が開かれた。

 ノックがないので驚くも、入ってきたのは副会長のユリアだった。


「すみませんノックもせず、両手が塞がってて……!」


 デカイ木箱を抱えながら、ドアの隙間をくぐる彼女。

 俺はすかさず駆け寄り、荷物を引き継いで適当な場所へ置いた。


「フゥッ、ありがとうございます会長。助かりました」


「いや、たぶん俺宛の荷物だからむしろこっちがお礼言わなきゃだし。職員室からここまでわざわざ?」


「えぇ、まぁ……今は会長とアリサっちだけですか?」


「そんなところだ、疲れたんならソファーで休んでくといい」


「はい、ありがとうございます」


 さて、俺も仕事に戻るか。

 せっかく速攻で昼飯食い終わったのだから、サッサと片付けてしまおう。


 ペンを掴んだ俺へ、ユリアと横並びで座ったアリサが幸せそうにニコッと微笑んだ。

 相変わらず仲がもの凄く良さげで––––


「そうそう会長、わたしとユリ––––付き合い始めたからよろしく」


「おぉ、そうなのか。おめでとう」


 俺は椅子に座り、日報の続きを書き始める。

 ニコニコ顔でペンを動かし––––


「…………………………………………………………」


「……」


「……」


 なんてことなく、10秒の時間が流れた。


 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………えっ?


 俺は真顔をゆっくり上げた。


真相はいかに

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― 新着の感想 ―
[一言] 絶対気を引くために言ったでしょ
[一言] アリサ色々性癖目覚めちゃったかぁ…… ユリアに関しては現状は尊敬とかそっちがメインだろうけどいつかアルスに惚れたりすんのかなぁと思ってたからちょっとびっくり
[一言] いくら脱シリアスをしたいからと言っていきなりぶっ込みすぎだと思います。
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