第58話・超困難度クエストが3人縛りってマジ?
『ドラゴニア』の建物に戻ってきた俺たちは、さっそくギルド員たちから熱烈な歓迎を受けた。
「ウチの2トップに勝った英雄の凱旋だ!!」
「アンタらならやると思ってたぜ!!」
「今日は奢りだ!! 飲め飲め!」
おぉ……ギルド物ではめっちゃテンプレな台詞がいっぱい、まさかホントに言われる日が来るとは思ってなかった。
だが祝ってくれるのは純粋に嬉しい、嬉しいのだが……。
「––––なーんで冒険者ってこう皆……、お酒大好きなんだ?」
俺とユリアが座らされたテーブルに、これでもかと酒が並べられる。
一応17歳だから飲めるけども……、アルコール飲料苦手なんだよなぁ。
「ユリア、隙見て逃げ––––」
耳打ちしようとした俺は、限界まで目を見張った。
隣にいたユリアが、度数30%はくだらないフルーツ酒を一気飲みしていたのだ。
「お前……っ、大丈夫なのかよ!?」
周りに聞こえない小声で囁く。
「プハァッ、うぷ……まぁ一応強いですが、会長お酒苦手なんですよね? だったりゃわたしが飲み干さずして、誰がこの場を切り抜けるんでしゅか……!」
「だからって、お前が無理していい道理はないだろ……! もう口調おかしいし」
「大丈夫れす、こんな程度で副会長は名乗れません……!!」
たしかにこの雰囲気を、酒が飲めないの一点張りで冷ますのは良くない。
すまんユリア……、お前の献身は忘れないぞ。
しばらくして、人混みを散らしたカレンとペインがやって来た。
「お疲れアルス兄、お酒は飲まないの?」
相変わらず素っ気ない態度で、正面に座る。
しかし、勝負前のような刺々しい言葉はない。
「俺はいい、それよりなんだその……【アルテマ・クエスト】ってのは」
俺の質問に、ペインから貰ったブドウジュースを一気飲みしながら彼女は答える。
「ぷっはぁ! ……えぇーっと、どっから話そうかペイン」
「ご随意に」
「なによ面倒くさがりね、さっきは自分から言い出したくせに」
4杯目を口につけたユリアが、真っ赤な顔でポヤポヤと前を向く。
「んー、【アルテマ・クエスト】……聞いたことがありましゅよぉ、たしか“古代帝国“絡みの調査クエストですよねぇ?」
「そうそう、ユリア姉さんの言うとおり王政府が認める公式調査クエスト。内容は単純––––遺跡に行って、遺物を調査、有益なお土産があれば持ち帰る。これだけ」
古代帝国……。
数千年前にあったという、超高度古代文明だ。
文献と遺跡によって存在が認められ、現代すら凌ぐ軍事技術を持っていたと聞く。
”超音速を超える飛行艇“、”大陸間を飛んで目標を貫く矢“、”たった1発で大都市を吹っ飛ばす爆弾”。
”完全自立の魔導兵士“等など……。
絶対盛ってるだろ的な軍事兵器を保有してたらしい。
フィクション乙。
「しかし王国1位のお前らが躊躇うって、そんなに危険な場所なのか?」
「うん、帝国跡地は基本的に超高レベルダンジョンと同じ指定エリアだし……。同時に入っていい人数も制限されてるから」
「へぇ、何人だ?」
「3人ね、それ以上だと遺跡の保護が保証されないって学者が騒ぐみたい」
それは、なんとも厄介な縛りである。
本当に必要最小限の人数じゃないか。
もし行くなら、距離も考えて相応に対策する必要がありそうだ。
「でもリターンは凄いって、帰った人によると未知の魔導具や大量の報酬金が生還すれば約束されるとか」
報酬金、“魔導具”……。
俺の脳裏に午前中の会話がよぎった。
「なぁカレン、お前たしかミライへのプレゼントを考えてたよな?」
「うん、ミライ姉の誕生日近いし……ってアルス兄、まさか!?」
3人しか行けないならば必然メンバーは限られる。
俺が離れる分、ユリアには生徒会の仕事をお願いする必要があった。
ペインも同様、カレンの代理仕事があるだろう。
「よっし! 俺、カレン、ミライ……この人選で行くぞ––––楽しいピクニックにしようぜ」
「えっぷぅ……」
クエストメンバーと、日付が速攻で決まる。
ちなみに、この後すぐ俺は裏路地でユリアの背中をさする事となった。
それにしても【アルテマ・クエスト】……、早々に俺の生徒会長権限をフル行使する時が来たようだ。




