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第490話・血の力

前回はいつもより少し多めの反応を貰えて嬉しかったです!

いつも読んでくれてありがとうございます、感謝感謝……。


ただ、感想が皆さんあまり書かないのか無くてですね……良ければ一言でも貰えると作品の質の向上に繋がりますので。

良かったら是非。

 

「ぬぅうッ!! おのれぇッ!!!」


 島の上層では、数多もの爆発と衝撃波が発生していた。

 地盤が砕き割れ、焼け焦げた森が薙ぎ倒されていく。


「ミライさん!! このままドンドン押すよッ!! ついて来てよね!」


「了解ッ!!」


 真なる血界魔装に変身したアリサとミライが、同じく真なる血界魔装になった大天使アグニ相手に善戦していた。

 最初こそボロボロに蹂躙されていた彼女たちだが、ユリアによる直上からの一撃で事態は急転。


 片腕を失ったアグニへ追い討ちを掛ける形で、2人は奥の手を使った。


「こっちは時間がないからね! 一気に決めるよ!!」


 ついさっき、アリサとミライはポケットに忍ばせていたナイフで己の脇腹を抉った。

 通常ならあり得ない自傷行為だが、アルスに追いつくと決めた彼女たちに迷いは無い。


 血界魔装の特徴である“出血バフ”によって、2人は短期的ではあるが大幅に力を増したのだ。


「ほざけ人間!! 片腕ごときいくらでもくれてやる! 俺はこの戦いに––––なんとしても勝たねばならんのだッ!!」


「そういうのは漫画のセリフだけにしなよ! パーティーだか知らないけど、怪しい企みは全部わたし達が潰すッ!!」


 雷撃の援護と共に突っ込んで来たアリサへ、アグニは光の義手を形成。

 思い切り振りかぶった。


 その威力は、岩山をも砕くほど。

 確実に当たるコースだが、アリサは決して目を逸らさない。


「「はああぁッ!!!」」


 激突音が響き渡った。

 空気が波打ち、地面がめくれる。


「くふっ……!」


「ぬぅッ!!」


 両者の頬へ、互いの拳が交わる形で打ち込まれた。

 パワーは互角だと思われたが……、否。


「良い拳だね、でもそんな光の腕じゃあ……今のわたしは倒せないよ」


 先に仰け反ったのは、アグニの方だった。

 ニッと笑ったアリサは、口元の血を拭いながら魔力を放出する。


「全力で来なよ! 大好きな主人に仕えてんでしょ? そんなやわなパンチ––––わたしのアルスくんと比べるまでも無いね!!」


 ニヒルな笑みで挑発したアリサに、アグニも神力を放出しながら答える。


「口だけは達者なガキめッ、古代帝国の遺産……血界魔装を弄ぶ愚か者が!」


 白目を剥いたアグニが、黒色の巨体を躍動させる。

 筋肉が膨れ上がり、さらにパワーを増した。


 強靭な肉体は瞬発力を生み、一瞬でアリサの背後へ回った。

 首元を握り潰そうとするが、逆に自分の首へ衝撃が走る。


「グゥッ!?」


 正体は、スピードを上げたアグニをさらに上回る速度で飛翔したミライだった。

 彼女は魔法杖の側面で、大天使の首を全力で殴ったのだ。


「雷轟竜……! スピードもパワーもさっきとは比にならん!」


「こっちはもう輸血パック何個分かの血を流してるのよ! いい加減倒れろっての!!」


 首の激痛に顔を歪めたアグニは、ミライをとにかく引き剥がすべく広範囲に衝撃波を放った。

 だが、魔法による隙だらけの攻撃を、魔壊竜が見過ごすはずもない。


「ぐぬぅッ……!!?」


 攻撃を無力化しながら、アリサが正面切って突撃。

 汗を浮かべたアグニと真っ向からぶつかった。


 分厚い鉄色の腕と対照的に、華奢な細い腕が、互いの手を掴み合って激しく鍔迫り合う。

 2人のオーラが至近距離で弾け、周囲の瓦礫を宙に浮かべた。


「い い 加 減 倒れろ!! 一体こっちが何発殴ったと思ってんのッ!!」


「それはこっちのセリフだな魔壊竜! 俺の攻撃をあれだけ受けて、なぜ立っていられる……!! なぜここまでの力を振るえる!?」


 アリサの脇腹から、ドクドクと赤い鮮血が滲み出る。

 命が闇に落ちていく感覚と一緒に、彼女へ無尽蔵のパワーが溢れた。


「はぁっ? そんなの決まってんじゃん!!」


 女子高校生の腕が、大天使の剛腕を押し返す。

 人生の華を生きる女子が、己の想いを全力全開で拳に乗せながら叩きつけた。


「この世で一番好きな人に––––いつか絶対勝ちたいから!! 気合いと根性!! 恋愛以外に理由なんているかッ!!!!」


 必殺の滅軍戦技––––『追放の拳(クラーク・イズ・イズグナーニエ)』が、アグニの胸部へ直撃した。

 数十メートル吹っ飛んだ大天使は、地面を盛大に転がる。


 砂煙を前に、アリサは拳を握った。


「覚えててよね、女の子は根性と痩せ我慢なら男にだって負けない。オシャレのためなら真冬でもショートパンツを履くし、竜王級のためなら血の一滴までも出し切る生き物なんだよ」


「最後は一般人に関係無い気がするけど……」


 隣へ立ったミライへ、アリサは元気よく振り向く。


「好きな人に良く見てもらいたいってのは一緒じゃん」


「んー? まぁ……そうなのかも? でっ、手応えはあったわけ?」


「ダメージは確実に与えたはず、でもまだだと思う」


 アリサの言った通り、アグニはすぐに起き上がって来た。

 だが、明らかにフラついており、今のアリサには近接戦で勝てないだろう。


 遠距離戦においても、ミライの前では無意味。

 一見詰んだように見えるこの状況で、アグニは表情を固くした。


「認めよう……、お前たちが竜の力の正統な使い手であると。人間でありながら……よくぞそこまで」


「フーン、でも褒めたって殺すのは変わらないよ。お前達はアルスくんに危害を加えた……世界を危険に晒した。逃がしなんかしない」


「だろうな……、では。こういうのはどうだ!」


 発生したのは、最悪の事態。

 優位を保っていたアリサとミライが、同時に後ずさる。


 アグニの足元に、紅い薔薇が咲いた……。


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