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第480話・大天使アグニVSミライ&アリサ

 

 大艦隊に囲まれたフェイカー島の中心部で、巨大な爆発が発生した。


 砂塵が巻き上げられ、衝撃波が兵士の集まった海岸まで到達する。

 崩壊寸前の巨城を中心として、まさに災害とでも表現すべき戦いが起こっていた。


「滅軍戦技––––!!」


 尖塔の上へ着地したアグニに対し、『魔壊竜の鎧』へ変身したアリサが迫る。

 相手の苦い顔が映ったと同時、ポールを踏みつけ上方から特大の一撃をお見舞いした。


「『暴虐の拳(クラーク・イズ・ジェストコスト)』ッ!!!」


「チッ!」


 技が命中する寸前、アグニは自らの翼を前に広げることでガードした。

 砲弾の炸裂片も容易に防ぐものだが、真なる血界魔装へ覚醒したアリサにとっては障害にすらならない。


「吹っ飛べェッ!!」


 全力で拳が振り抜かれる。

 高速で地面へ衝突したアグニが、転がりながら体勢を整えた。


「まさかっ、人間の分際で竜の力をここまで……ッ」


 アグニは久しく困惑していた。

 大天使である自身に匹敵する存在など、長らく見ていなかった。


 それが、こんな少女に拮抗……いや、明らかに押されているのだ。

 全くもって信じられないことだった。


「その顔、信じられないって言いたいのかしら」


「ッ!?」


 すぐさま横へ回避する。

 秒と経たずに、自分がいた場所へ雷撃が降り注いだ。


「確かに半年前だったら、わたし達はアンタに手も足も出なかったでしょうね」


 踵を擦り、勢いよくターンして蹴りを放った。

 しかし、一瞬で肉薄していたミライはこれをアッサリと回避。


 逆に隙を晒すこととなったアグニの懐へ、彼女は杖を握りながら入り込む。


「でも今は違う、世界最強の彼氏に鍛えられたわたしを––––お前は絶対倒せない!」


 杖の先端へ魔力を集中し、弾丸のように突撃。

 雷轟竜が得意とする、必殺の滅軍戦技を撃った。


「『雷轟撃突弾』ッ!!」


 みぞおちにクリーンヒットした一撃は、あの大天使たるアグニを簡単に弾き飛ばした。

 木々が薙ぎ倒され、奥の岩山が崩れ去る。


 戦況は火を見るより明らかで、真なる血界魔装を取り戻したアリサとミライが完全に優勢だった。


 以前のルールブレイカー戦で大天使スカッドに太刀打ちできなかったことを考えれば、この短期間で信じられない成長と言えた。


 彼女達の戦法は非常にシンプルで、内容はアグニの強力な魔法をアリサが即座に無力化。

 近接戦に持ち込み、怯ませたところをミライが全力で仕掛けるというもの。


 パワー、スピードにおいて完全に上回ったことで、大天使相手にも優勢を保っていた。


「アリサちゃん、まだいけそう?」


 ミライの問いに、隣へ降りてきた彼女が拳を握る。


「もちろん、まだまだ行けるよ!」


 アリサが力強く答えると、二人は再び共闘の構えを取った。

 瓦礫から出てきたアグニは困惑の色を増すが、それでもなお天使の威厳を保とうとする。


 だが、その顔にも微かな不安が浮かび上がっていた。


「全く驚かされる……、この私が人間如きにここまでやられるとはな」


「変身封じが効かなくて残念ね、あと言っとくわ。ただの人間でも––––」


 ミライの姿が消える。

 否、視認できないほどのスピードでアグニへ迫ったのだ。


「わたし達は竜だから」


 アグニの肘と、ミライの杖が衝突した。

 けれどもこれでは終わらない、イナズマが彼女を大きく包んだ。


「はああぁああああッ!!!」


 再び激しい戦いが繰り広げられる。アグニは終始押され気味で、魔法や体術を繰り出して応戦するが、アリサとミライの連携はますます磨かれていた。


「ッ!! 天界一等技術––––『収束衝撃波圧縮砲(シャクティ・トップ)』!!」


 アグニの拳から、青白いレーザーが発射されるが––––


 ––––ギィンッ––––!!


 ミライの背後から飛んできた衝撃波が、アグニの魔法を一瞬で消し去ってしまった。

 あの東風すら苦しめた、魔壊の衝撃波である。


「これで終わりだ!!」


 地を蹴ったアリサの声が響き、彼女の手元に強力な魔力が集結する。

 それは、今までで類を見ないほどのエネルギーだった。


 直感で危機を察知し、避けようとするが––––


「させないッ!」


 直上から降った雷が、アグニの動きを阻害した。


「グゥッ……!!」


 それでも必死に抵抗する。


 アグニは本気で神力の盾を張り、抵抗しようとするが……その力は及ばなかった。


「『暴虐の拳(クラーク・イズ・ジェストコスト)』ッ!!!」


 魔壊の拳が、アグニを全力で殴り飛ばした。

 宙を舞った大天使が、地面へ落着する。


「やったわね、アリサちゃん!」


 ミライが歓喜の声を上げ、アリサも笑顔で応える。

 2人は力を合わせて、大天使との死闘に勝利したと確信した。


 “奥の手”も使わずに勝てた、これで戦争もこっちの勝ちで––––


「いやはや、さすがに予想外だ」


「ッ!?」


 見れば、倒れていたはずのアグニがいつのまにか立っていた。

 目を凝らせば……あれだけ滅軍戦技を打ち込んだのに、まるでフラついていない。


「生徒会の双龍……、噂には聞いていたがここまで厄介だとはな」


 そう言い、アグニはスーツの中から首に下げたアクセサリーを取り出した。


「ひとまず謝らせて頂こう、手加減して勝てる相手ではなかった」


「……本気じゃなかったの?」


「いいや、一応本気だったさ。“素の状態”ではな」


「「ッ!!」」


 背筋が一気に冷える。

 眼前の大天使はアクセサリー……いや、


『フェイカー』をグッと握り締めた。


「本当は竜王級相手に取っておきたかったのだがな、特別だ––––今ここで見せてやろう」


 アリサとミライの目の前で、信じられない……信じたくない現象が起こった。


 極太の……イナズマが落ちたのだ。

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