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第48話・言っとくけど、俺は二度と女装なんてしないからな

 

「よし、新たな生徒会も始動したところで今日は一旦解散とする。各自明日から気合い入れてけよ」


 役員である彼女たちに告げた俺は、翌日の準備を少しだけしてから生徒会室の鍵を閉めた。

 まさかこういうメンツになるとは思ってなかったので、これからどうなるかと思うと胸が高まる。


「ねぇアルス! 帰ったら冬コミのネタ考えるの手伝ってよ、今日暇でしょ?」


 隣を歩くミライが、気さくにそう言ってきたので思わず身を引いた。


「絶対嫌だ」


「えぇー、なんでよぉっ!」


「なんでもクソもあるか! 俺は忘れてないからな、モデルと言い張って俺とマスターでえっぐいポーズさせようとしたことを……!」


「親友じゃん! 幼馴染みじゃん! あれくらい許容範囲でしょ!?」


「テメェのセーフラインはいつもギリギリ過ぎんだよ! 早くユグドラシルで垢BANされてしまえ」


 キャンキャン騒ぐミライを尻目に歩いていると、ユリアが振り返る。


「あら、会長やブラッドフォード書記もそういうサブカルチャー的な趣味を嗜むんですね」


「んっ!? おっ、おぉ……!」


 ヤベッ……! 懲りずにアリサの時と同じミスをしちまった。

 これは今度こそ終わったか……? 真面目の擬人化みたいなユリアにバレるのは結構キツイぞ。


 ダメージを覚悟していた俺たちへ、彼女は安堵の笑みを浮かべた。


「良かった〜、会長たちも”こっち側“だったんですね」


「こっち側……とは?」


 ギクシャクする俺とミライを尻目に、銀髪を振ったアリサがユリアへ抱きつきながら答えた。

 銀髪と金髪が映えるコントラストとなって、夕陽に反射する。


「大丈夫だよアルスくん、ミライさん。ユリはこう見えて年2回欠かさずコミフェスに行ってるガチ勢だから」


「あっ」


 言われて思い出した。

 ユリアと初めて会ったのは学校じゃない、テロ事件のあったコミフェス会場だ。


 あの時は女装していたので、彼女からすれば当然こっちを知らないわけか。


「エーベルハルトさんが同人誌の列に並んでるところ、全然想像できないんだけど……」


「そうですね、去年までは生徒に出くわしても良いように格好を変えて参加してました。ちょうど『ミライ』先生という貴女と同名の同人作家さんを応援してますよ。ブラッドフォード書記」


「いやそれ、絶対こいつだから」


 証拠と言わんばかりに、俺は私物のタブレットでこいつのR-18同人本表紙をユリアへ見せた。


「ほれ、こいつが夏コミで売る予定だった新刊」


「えっ、えぇ!!? いやでも……この特徴的な線とベタ……、紛れもなく一致してる。ホントにミライ先生ですか!? 握手! 握手お願いします!」


「あ、えっ!? うんいいよ」


 なんかオフ会みたいになってしまった。

 あと一つ言うなら、線はともかくベタや背景は俺が徹夜して塗ったのでミライは何もしてない。


「いやー、急な眼福で鼻血出そうでした……。忌々しいテロリストのせいでこの新刊買えなかったんですよね」


「そういや俺の部屋にサンプルあったな、今度読みに来る? っていうかいる?」


「よ、読みます! 是非! ありがとうございます会長っ!」


 花みたいなご機嫌オーラを出すユリア。

 手伝ったお礼?でミライに渡されたサンプルは、たしか物置に封印してあったはずだ。


 俺なんかより、需要のある人間へ渡す方が本も嬉しいだろう。


「今ほど会長が会長で良かったと、心の底から思ったことはありません」


「それは喜んでいいのか……?」


「もちろんですよ。いや〜でも残念です、生徒会長になれば胸を張って“アルスフィーナ”さんにお礼を言えると思ったんですが……」


 俺とミライ、そしてアリサの表情が固まった。


「アルス……フィーナ?」


「えぇ、夏コミ襲撃事件でわたしの宝具『インフィニティー・オーダー』をテロリストから奪い返してくれた恩人です。今度の冬コミでぜひお礼をしたいと思ってまして」


 血の気が引くとは、まさにこのことだ。

 “アルスフィーナ”とは、女装した俺が勝手に名乗った架空の人間である。

 まさか本人が目の前にいるとは、夢にも思ってないだろう。


 どうするんだという俺の訴えが込もった眼差しを、主犯共(ミライ・アリサ)は首ごと目を逸らすことでかわしている。


「ふ、副会長だって立派な役職だ……。胸を張る分には全然いいと思うぞ」


「そうですね、改めて任命していただいたこと……感謝します。イージスフォード会長」


 ちなみに俺はもう二度と女装しない、絶対だ。

 なのでかなり適当に誤魔化しながら、俺たちは校門を出る。


 学校に残っているのはもう部活の連中だけで、周囲には俺たちしかいない。

 いよいよ明日からは新生徒会始動だ、気を引き締めよう。


「じゃあ今日はこれで、全員気をつけて帰るよう––––」


 言いかけた俺は、夕陽を背に立つ男を見て固まった。

 背中に剣を装備し、無駄に高級な防具を着た––––二度と関わらないと思っていた冒険者。


「やっと見つけたぜ……、アルス!」


 端正で整った顔立ちが、癪な記憶を蘇らせる。


「剣聖……グリード!」


 腐り切った縁は、決して切れない。


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