表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

470/497

第470話・アルス・オーバーロード

 

「お前……っ!!」


 シャザクが放った斬撃を、俺はリュックから取り出したスコップ1本で軽く防いだ。

 同時に、全身から今までの比じゃない魔力を放出する。


「良い剣だ、でも俺には届かない」


「スコップ……!? ふざけてるの?」


「いいや、至って真面目だ。これが俺のアーティファクト代わりで––––ねっ!!」


 暴風が俺を中心に吹き荒れた。

 発動するは今までの『身体能力強化(ネフィリム)』を超える変身、言うならば––––


「『身体能力強化(ネフィリム)限界超越(オーバーロード)』」


 俺の身体を、凄まじい黄金のオーラと激しいスパークが覆った。

 豪雨のようなアーティファクトの乱撃が、まるで子供の攻撃のように軽く感じる。


「このっ!」


 シャザクが剣を振った先に俺はいない。

 呆然とする彼女の横を、スタスタと歩く。

 まるで、攻撃そのものが無かったように。


「ッ……!」


「良い筋だ、3ヶ月前のミライやアリサ相手なら勝てたんじゃないか?」


 軽い力でスコップを振るうが、有り余るパワーは1等天使をもいとも簡単に弾き飛ばした。

 屋根上を転がるシャザクを、俺は見下ろす。


「まぁ、今の彼女らには全く及ばんが」


「お前……、生意気。傲慢な竜王」


「寝込みを襲いに来たヤツがよく言うよ」


 僅かな大気の揺れを感じた。

 直感で背後をガードすると、さっき吹っ飛ばしたメテオラが肉薄していた。


「舐めた真似を……!! 死にかけの竜王め!! わたしが墓へ導いてやる!!」


 鍔迫り合うメテオラの大剣から、猛烈な業火がロケットエンジンのように噴き出た。

 炎は切先上の全てを飲み込み、雨を蒸発させてしまう。


「さすがアーティファクト、並の武器とは性能が違うな」


 俺はオーラだけで熱を防いだ。

 後方へ跳んだ俺を追いかけて、2人の天使が剣撃を浴びせてくる。


 住宅街がバラバラに解体され、猛炎が道を覆い尽くす。


「ぬあアアアァァアあああっ!!!!」


 上空の俺へ、下方から接近したメテオラのアーティファクトが叩きつけられる。

 炎を推進力にした超火力の一撃が、俺を吹っ飛ばそうとして––––


「言っておくぞ天使共」


 技は当たらない。

 ド派手な一撃をスコップで受け流し、代わりと言ってはなんだが蹴りを顔面へお見舞いした。


「アーティファクトに振り回されたままの、借り物止まりのお前らじゃ……遊び相手が精一杯だ」


「うるさい、黙って」


 地面に叩きつけられたメテオラに代わり、今度はシャザクが詰めて来た。

 尖塔の広場に着地した俺は、彼女と再び剣技を交える。


「見えた」


 超高速で背後へ回り込んだ俺に、シャザクはなんと反応して見せた。

 スコップと長剣が、激しく火花を散らし合う。


「凄いな、今のが見えたか」


「お前の動きはもう見切った、そんな変身––––もう通じない」


 シャザクの背後、上空に赤い閃光が走った。


「だあぁぁあああああああッ!!!」


 メテオラが大剣に炎を宿し、先端を向けながら超高速で突っ込んで来る。

 俺は右手に持ったスコップでシャザクをいなすと、空いた左拳を相手のアーティファクトの先端へぶつけた。


 炎がかき消され、メテオラが弾き飛ばされる。


「言っただろ、借り物止まりじゃ俺には届かない」


 “オーバーロード”として進化した変身を最大限まで出力アップすると、俺はまだ上空にいるメテオラへ接近。

 手加減なしの膝蹴りをお見舞いした。


「ゲボッ……!?」


 空中で吐血した彼女の後頭部を掴むと、回転しながら真下の広場へ叩きつける。

 床が陥没し、大量のヒビが走った。


 瓦礫まみれで横たわる天使の傍に立つと、俺の頬に蒼い雷が走った。


「メテオラ、あなたの稼いだ時間は無駄にしないッ」


 剣を構えたシャザクが、真正面から突っ込んでくる。


「天界3等技術––––『高圧増幅雷撃砲』」


 全力で放たれた突きは、確かにかなりの威力を持っていた。

 けれど、今さらこんなもので、


 ––––ガァンッ––––!!


 俺はなんでもないスコップの一振りで、シャザクの奥義を防いだ。

 驚愕に染まる顔を掴むと、そのままこちらも荒んだ床へ打ちつける。


「ミライの技の完全な下位互換だな、こんなもので俺を殺そうとしたのか」


「グッ……、ガハッ!」


 2人して、剣を杖代わりにして起きあがろうとする。

 その根性は見上げたものだ。


「ッ!!! お前……ごときが! ミニットマン様に勝てると思うな! もう二度は無い!! 今度こそ我らが主に殺される!! お前も! “フェイカー島に行った奴ら”もな!!!」


 メテオラの叫び声が、俺の耳に入る。

 スコップをしまい、戦闘をやめようとした俺は––––


「殺される? 俺と、俺の認めた生徒会役員が?」


 昂る魔力を––––一息に解放した。


「誰に?」


 一瞬で空が“紅色”に包まれた。

 俺はゆっくりと浮遊しながら、天空に30、60と巨大な魔法陣を重ねていく。


 紅いイナズマが、街中に降り注いだ。


「面白いことを言うな天使共、もし俺たちを殺したかったら」


 メテオラとシャザクが、呆然と空を見上げながら手に持っていたアーティファクトを落とす。

 重い鉄の音が響くと同時、空に鐘の音が鳴った。


「眠りこけているっていう、呪われた第一天使でも連れて来るんだな」


 オーバーロードへ進化した『魔法能力強化(ペルセウス)』の大魔法が、俺の手から放たれる。


「極大殲滅魔法––––『ドラゴニア・ノヴァ』」


 結界の中を、異次元のエネルギーが満ち暴れた。

 2人の1等天使は、遺言を遺すこともなく光の中へ消えた……。


「––––魔力残量は7割、まだいけるか」


 瞬時に街を修復した俺は、勝手に引き継いだ魔法結界を解除。

 当初の目的地である、軍の大病院を目指した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ