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第469話・完全復活、竜王級アルス・イージスフォード

 

「さって、いい加減起きるか」


 今頃『オーバーロード作戦』が始まっている。

 アリサ、ユリア、ミライ、カレン……皆んなが戦場に身を投じようとしてるんだ。


 そんな中––––


「俺だけ寝てるのは……、やーっぱ性に合わないよな」


 ついさっきまで天井を見ていた俺は、学園の制服へ着替えていた。

 マスターからは、最低でもあと5日間は絶対安静と言われているが……。


「不思議な感覚だ……」


 今朝目覚めたら、全身を蝕んでいた怠さが完全に解消されていた。

 それに伴って、当然魔力も回復––––いや、


「っ……」


 手を何度も開く。


 やはり明らかに“変わっていた”。

 視界が透き通っていて、溢れ出る魔力は激しく……けれどとても静かなもの。


 間違いない、


「初めて死の淵を経験したことで……、魔力量が大幅にアップしたのか。改めてとんでもない体質だな、竜王級というやつは」


 我ながら驚く。

 想定より早く完治したばかりか、キズついた筋肉がより強靭になるがごとくパワーアップしているのだから。


 けれど、その力を試すのはフェイカー島じゃない。


「悪い皆んな、俺はどうしても行かなきゃいけない場所がある」


 リュックに濃い軍用糧食(レーション)を詰め込み、背中に背負う。

 部屋から通路に出ると、先日ミニットマンに壊された天井の穴があった。


 俺はそこから家を飛び出すと、軽快な動きで屋根上を次々に飛び移る。


 目指す先は、軍の大病院。

 そこに、俺がミニットマンから得た情報と合わせて知られる、答えがあるのだ。


「ッ!」


 大通り近くまで来た瞬間、空が濁った緑色に変わる。

 疑うまでもなく、『魔法結界』だ。


「そうだよな……、王都からはほぼ全ての戦力が移動。挙句に俺は死にかけってシチュエーション。仕掛けて来ない方がおかしい話だ」


 振り向けば、そこには2人の女性が立っていた。

 両方共に軍服にも似た様相で、スカートからは長い足が出ている。


 何より目立つのは、頭の上の輪っかだろう。


「おかしいな、ミニットマン様いわく……竜王級は死にかけと聞いていたのだが」


 赤髪の女が、ポツリと呟く。

 それに合わせて、白髪の女も前に出た。


「もう動いている……、家にいないからまさかと思ったけど。こんなところにいたなんて」


 短い白髪の女は、長刀を抜きながらゆっくり歩いて来た。

 俺は何も慌てず、彼女らと向き合った。


「やっぱり来ると思ったよ、お前ら––––天界の“暗殺部隊”だろ。弱った俺を殺しに来たか?」


 俺の言葉に、赤髪の女が反応した。


「正解だ竜王級、私は1等天使メテオラ。お前と大天使東風を抹殺すべく……ここへ派遣された」


「同じく1等天使シャザク、言っとくけど……私達の視界に入った獲物は絶対に逃げられないから」


 大層な自信である。

 俺はポケットからミニタブを取り出すと、カメラを彼女らへ向けた。


『能力測定完了、SSクラス––––魔人級と推定』


 なるほど、ハッタリではないらしい。

 にしても––––


「俺はともかく、東風は同胞じゃないのか? 何故命を狙う」


「ヤツは不穏分子だ、天界の役に立たない大天使など不要。ミニットマン様は少なくともそう考えておられる」


「へぇ、確かにお前らはかなり強そうだ。2人掛かりなら勝機を見出せると踏んだのか」


 メテオラと名乗った赤髪が、俺を見ながら嘲笑する。


「笑わせるな竜王級、痩せ我慢はよせ。お前はミニットマン様の魔法で死にかけなんだろう? 1人で十分だ」


 次の瞬間、メテオラの手に1本の大剣が具現化された。

 不気味な紋様と輝き、何より通常の武器からは感じられない覇気––––


「……古代帝国のアーティファクトか、ミライが持ってるのと同じやつだな」


 不敵に笑うメテオラ。

 アレはおそらく、以前カレン達からミニットマンが強奪した物の1つだろう。


 っとなると、


「お前はここで死ぬ、これは……確定事項」


 シャザクという白髪の女も、手に持つ長刀は間違いなくアーティファクト。

 そういうことか。


「死にかけの人間相手に、随分とガチじゃねえか」


「獅子は常に全力を出すと言うだろう? たとえお前が弱っていようと、私達は本気で––––」


 大剣を構えながら喋っていたメテオラへ、俺は相手が反応するより早く接近。

 蹴り1発で遠くに立つ尖塔まで吹っ飛ばした。


 崩れ落ちる建造物を見て、近くにいたシャザクが目を見開く。


「悪かったな、死にかけじゃなくてよ」


 臨戦態勢へ移ったシャザクが、俺の首目掛けてアーティファクトを薙ぎ払った。


現在作者が新しい試みを行なっており、更新頻度がしばらく安定しないかもしれません。

更新自体はこれからも続けて行くので、先にお詫びしておきます。

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