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第467話・対艦攻撃

 

 攻撃部隊の艦隊突撃は、あまりに(むご)い結果で終わった。


「あっ、うぁああ! ぎゃああぁッ!!?」


 1機、また1機と空を背景に円盤が爆散していく。

 近接防空エリアは、空を飛ぶものにとって地獄と化していた。


 隙間など微塵も存在しない、機関砲の弾幕。

 それをカバーするように、駆逐艦の主砲や巡洋艦の高射砲が空中で破裂する。


「高度を落とすな!!! 投下予定ポイントまで絶対に突き抜けるぞ!!」


 爆撃隊が悲鳴交じりの声を上げながら、爆弾を投下することすらできず墜落していく。


 アルト・ストラトス王国海軍が撃ち上げる対空砲弾は、“VT信管”と呼ばれるものを搭載していた。

 これは、発射された砲弾が航空機の傍に近寄ると自動で検知、破裂して大量の破片をぶちまけるというもの。


「そっ、そんな……!! こんなところでッ」


 熾烈な対空砲火によって、爆撃隊の数はたった4機にまで撃ち減らされる。

 恐怖に負けた者が、今まさに横で爆弾を投棄しながら旋回しようとして––––


「があぁっ!!?」


 投棄した爆弾に機関砲弾が命中、大爆発を起こして機体ごと吹っ飛んだ。

 また仲間が死んでいく……。


「副隊長!! 雷撃隊が!!」


「ッ!!」


 下を見れば、低空で突っ込んで行った雷撃部隊の惨状が映った。

 海面ギリギリを飛行する円盤が、次から次へと叩き落とされている。


 敵の防空駆逐艦の主砲が、火器管制レーダーとリンクした射撃により全弾至近弾を浴びせていたのだ。

 こんな精度で砲撃されれば、ひとたまりもない。


 たった今、最後の雷撃機が海面へ落ちた。


「ッ!!!」


 それでも意地を見せねばならない、こんな悪魔共を島へ近づけてはならないのだ。

 同胞を、生き残りを何としても守るため!


 機体を急上昇させ、予定ポイントより早く投下準備に掛かった。


「援護します! 副隊長!!」


「おい! お前……!」


 部下の機体が、ホップアップした副隊長機を守るためにワザと下方で重なる。

 爆弾はとっくに捨てており、もう戦闘能力は無かった。


「天界に––––栄光あれ!!!」


 盾となった機体が、無数の機関砲に撃ち抜かれてバラバラとなった。

 だが、彼の犠牲は無駄では無かった。


 副隊長機は遂に海上で回避運動を行う、航空母艦『レッド・フォートレス』を捉えた。

 飛行甲板へロックオンし、とうとう爆弾を投下。


 爆弾の安定翼が開き、空母目掛けて真っ直ぐに急降下。

 やった、やり遂げた……!


 部下の、みんなの犠牲は無駄じゃ無かったのだ。

 落下する爆弾は、グングンと高度を落とし––––巨大な空母を真っ二つに、


「え……」


 できなかった。

 敵味方関係なく飛び交う激しい対空砲火を掻い潜って、1機の戦闘機が命中直前の爆弾を空中で撃ち抜いたのだ。


 その機体は急上昇してくると、機の先端をこちらへ向けた。


「殲滅すべき……、悪の権化めっ……!!」


 それだけ言い残し、最後の円盤が20ミリ機関砲によって貫かれた。

 途端に静かになった空で、翼に”逆十字“のマークを付けた機体が艦隊上空を旋回。


 落下中の爆弾をすんでで迎撃するという神業を披露した機体が、『レッド・フォートレス』の甲板へ着艦した。

 コックピットが開けられると、そこには金髪碧眼の軍人が座っていた。


「なかなかにヒヤリとさせるじゃないか、VT信管に甘えて射撃練度が落ちているんじゃないのか?」


 諭すように呟いたのは、元勇者にして王国駐在武官––––、

 ジーク・ラインメタル大佐だった。


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