第458話・フェイカー島
本作、ブックマークや評価は非常に多く頂いているんですが、何故か「レビュー」だけ“ゼロ”なんですよね……。
何が足りないんだろう。
ミリシア王都から遥か南方––––
穏やかな海面が広がる大海洋に、1つの巨大な島が浮かんでいた。
30平方キロを超えるこの島は、北部の巨大な城を基調に頑丈な地盤と家などの建造物で形成されていた。
北西と北東にはそれぞれ海岸があり、また南には大型タンカーが停泊できる港もある。
そう、ココこそが––––天界最後の地上拠点。
【フェイカー島】、人工宝具を生産する最重要拠点だった。
「大天使アグニ様入室! 敬礼!!」
地下のオペレーション・ルームで歓迎を受けたのは、ミニットマンの忠臣にして従僕。
大天使アグニだった。
張り出した胸にスーツを着せ、まるでどこかの執事のような印象である。
「……」
グルリと見渡す。
とても広い部屋で、全周をモニターや専門の天使が張り付いていた。
そこで、アグニは見覚えのある天使を見つけた。
「久しいなスティンガー天界参謀、前に会ったのは古代帝国戦だったか?」
声を掛けたのは、風貌にして50代辺りであろう精強な男。
彼はアグニと握手すると、ニヒルな笑みを浮かべる。
「久しぶりですなぁアグニ殿、またぞろミニットマン様の尻拭いを押し付けられたと見える」
「我が主は単体でこそ最強だが、組織運用にはまだまだ知識不足ゆえ……お許し願いたい」
「まぁ、地上人に天界拠点の7割を殲滅されたのは確かに頂けませんな。残りの3割も陥落間近だと聞きますが?」
痛いところを突かれたと、アグニは表情曇らせる。
「あぁ、神力の供給に障害が出るのも時間の問題だ。しかし今までよくこの島を隠蔽してくれた––––感謝する」
手を離したアグニは、長身でスティンガーを見下ろす。
そして、互いに姿勢を正した。
「大天使ミニットマンより発令された命令を伝える。現時刻をもって、大天使アグニをフェイカー島防衛司令官に任命する。前任のスティンガーは副防衛司令官として任にあたれ」
「はっ!!」
そう、天界はなんとしてもこの島を守らなくてはならない。
ここを失えば、『パーティー』の開催に重大な支障が出てしまう。
冒険者ギルド・ドラゴニアから奪った宝具も、今ここに全て集まっているのだ。
取られるわけにはいかなかった。
だからこそ、大天使アグニ自らが赴いたのだ。
「スティンガー、この島の防衛設備について教えてくれ」
司令官席に座ったアグニは、簡潔な説明を求めた。
「はっ、現在この島は“超神力シールド”と“超長距離狙撃陽電子ビーム砲”により、広域防空、海域制圧を目的としたA2AD(接近阻止領域)を展開しています」
A2ADとは、簡単に言えば敵侵攻部隊を接近させないために構築された防御概念だ。
アグニからすれば、ここまで守成に回らなければならない現実に嫌気が刺した。
「スティンガー、敵の大艦隊は既にこの島の近くまで来ている。まずその広域防御性能について––––」
言おうとしたアグニの言葉を、けたたましいサイレンの音が遮った。
赤い非常灯がつき、モニターを除いて室内が暗くなる。
観測員が叫んだ。
「レーダーに感多数、速度480ノットの飛翔体が30……いや。56個接近中! おそらく、巡航ミサイルと推定されます!」
どうやら、この島の正体は完全にバレたようだった。




