表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

451/497

第451話・オーバーロード作戦

 

「で、イージスフォードくんは無事なんだな?」


 ––––美術都市レクイエム郊外、アルト・ストラトス陸軍航空基地。


 長大な滑走路が備えられたここは、固定翼航空機を運用するために整備された基地。

 ひっきりなしに戦闘機や輸送機が着陸する中、航空団司令部の屋上でミニタブを持った軍人がいた。


「そうか、即死級魔法を食らって生きているのはさすがと言ったところだが……」


 王国駐在武官、ジーク・ラインメタル大佐は手すりにもたれながら呟く。

 彼の姿は、いつもの軍服と違った。


「死を免れたとはいえ……”実質戦闘不能“か、回復にはどれくらい掛かりそうなんだい?」


 通話の相手は、この国で大英雄と呼ばれる男。

 グラン・ポーツマスは深刻そうな声色で返した。


『最低でも1週間かと……、これでも常人と比べれば驚異的ですが。今しばらく待てませんか?』


「すまないが無理だろう、『オーバーロード作戦』の開始は3日後だ。それを過ぎれば先日の世界同時攻勢––––その衝撃力が失われる」


『では……』


「あぁ、フェイカー島の攻略は予定通り行う。たとえ竜王級の加勢を得られなくともな。連合大艦隊は目標から400海里の海域まで明日中に展開する」


 攻撃機の編隊が、上空を横切った。


『申し訳ありません大佐、転移魔法の妨害をこうもアッサリ抜かれるとは……。大天使ミニットマンは想定外の強さでした』


「謝ることはない、それより君は聞いたかな?」


『聞いたとは……何をです?』


「これより開始される本命のオーバーロード作戦……、本当はイージスフォードくんだけを参加させる予定だったが。メンバーに変更が入りそうだ」


 ラインメタル大佐は、柵から空を見上げながら届いた報告をそのまま教える。

 表情が少し固くなった。


「本作戦に先程、ユリア・フォン・ブラウンシュヴァイク・エーベルハルトくん。アリサ・イリインスキーくん。ミライ・ブラッドフォードくん。そしてカレン・ポーツマスくんが直接志願して来たよ」


『……本当ですか』


「全員が揃って大使館へ直談判に来たらしい、もちろん理由は1つ––––」


 時計を見た大佐は、滑走路に目を移す。


「イージスフォードくんの仇討ちだよ、死んでないのに大袈裟だとは思ったが」


『……大佐は許可したのですか?』


「判断を下すのは私ではなく参謀本部だ、けれど予想することはできる」


『あぁー……、大体わかりました』


「そうだよ、その通りだ。参謀本部も彼女らの恐ろしい強さは十分知っている。賢竜、魔壊竜、雷轟竜、蒼焔竜––––イージスフォードくんに代わって彼女らが作戦の一翼を担うだろう」


 柵を乗り越えたラインメタル大佐は、数十メートルある高さを難なく飛び降りた。

 着地と同時に、なんでもなく歩き出す。


「今までの全世界攻勢は、全て『オーバーロード作戦』のためだ。使える戦力は全部使うさ……」


『大佐も含めてですか』


「あぁ、無論私も今回は前線へ赴く。戦争だ、久しぶりの戦争だ。心が踊って仕方ないよ––––だから王都の守りは君と……なんだったか? 正義のすーぱー」


『大怪盗です』


「そのネーミング、変えることはできんのかね? いくらアイリ王女殿下といえど少し世俗に浸りすぎじゃないか?」


『無理ですね、本人が相当お気に入りのようでして』


「まぁ良い、王都は自分たちの手で守りたまえ。じゃあ––––生きていたらまた会おう」


 通話を切ったラインメタル大佐は、いくつもある格納庫の前に立つ。


「お待ちしておりました、ジーク・ラインメタル大佐」


 迎えたのは、航空指導教官のバッチを付けた軍人。

 彼の後ろにあるのは、1機の固定翼戦闘機だ。


 武装は20ミリ航空機関砲2門。

 さらには翼下へ小型爆弾、ロケットランチャーを搭載するための取付機(ハードポイント)がついている。


 さらに他の機体と違い、翼には”逆十字“がペイントされていた。


「既に着替えはお済みですね?」


「もちろんだ、このパイロットスーツはなかなか新鮮で良い」


「お似合いですよ、では早速この試作機に乗ってください。これより”上級教育プログラム“を開始します。貴方なら今日中にでも修了できるでしょう」


 頬を吊り上げた大佐は、頭に掛けていた航空用ゴーグルを目の前に下ろした。


「あぁ、よろしく頼む」


 オーバーロード作戦まで––––あと3日。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ