表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

447/497

第447話・取引

 

「降伏して欲しいの、これ以上無益な被害を出さないために。お互いのための譲歩って感じかしら」


 爽やかな笑顔でふざけたことを言い放ったミニットマンは、全く悪びれる様子もなく笑った。


「ほら、戦争って残酷で醜いじゃない? この国にも結構いるでしょう? “平和のための対話を”。“戦争を止めるための行動を”。“人命のための外交的解決を”っていう素晴らしい思想の方々が」


「都合が良い方々の間違いだろ」


 眼前の大天使へ、俺はペンをいじりながら返す。


「古今東西、侵略者に譲歩して解決した事例は存在しない。どうせ1歩譲ったら、すぐに5歩6歩寄越せと言ってくるのが目に見える」


「フーン、じゃあ戦争を容認するの? もしかして反平和主義者だったりする? 戦闘大好きだったり?」


「勘違いするな」


 ペンを置き、舐めた態度の天使へ面と向かう。


「お前ら天界に主権を譲渡して、これまで通りの生活が送れるわけないだろ」


「失礼ね、ちゃんと可愛がるわよ」


「嘘つけ、天界は人類を延命のための資源程度にしか思ってないじゃないか」


「資源ねぇ、なら戦うわけ?」


「お前らが仕掛けてくる限りはな、もし今の降伏勧告に従えば––––太古に滅び去った“古代帝国”のようになるだけだろ」


 ミニットマンの笑みが消えた。

 蒼色の瞳が、興味深そうに俺へ向けられる。


「へぇ……ちょっとビックリしちゃった。竜王級って言うからもっと短絡的な論理を予想してたんだけど……意外とロジカルな思考してるのね。わたしの知ってる竜王級と違う」


「真実を述べただけだ、それとも何か? お前の記憶にある竜王級についての知見でも教えてくれるのか?」


 黙り込んだミニットマンが、しばし熟考する。

 それが10秒か30秒だったかは知らないが、唐突に顔を上げた。


「確かに……せっかくこうして会ったのに、断られるのがわかり切った降伏勧告なんかしてもつまんないわよね」


「だな、俺も正直つまらん。っということで1つ––––ここだけの取引をしないか?」


「取引?」


「あぁ、俺は竜王級本人として得た経験と知見をお前に教える。気になってるんだろ……? 俺の正体について」


 一気に魔力を放出。

 常人では不可能な出力のそれは、この大天使を座らせ続けるための脅し。


 交渉は––––相手をテーブルに組み伏せなければできないと、ラインメタル大佐から学んだ故の行動。

 実際、効果は抜群だったようで、


「フッフフッ……、きゃっははは!! アンタ本当に面白いわね、100点! 満点! 完璧! マーヴェラス!! 良いわ気に入った」


 上機嫌そうに座り直したミニットマンが、指先から飴玉を出現させる。


「アンタの情報に対して、わたしはわたしだけが持っている竜王級についての情報をあげる。決して嘘はつかないと約束するわ」


「決まりだな、じゃあ言い出しっぺの俺から始めよう。竜王級の強さの秘密について––––」


 魔力を納め、大天使と正対する。

 今ここに、決裂確定のくだらない和平交渉ではなく……今後の運命を決する会談が始まった。


 見込み通りなら、俺はここで“竜王級の果てにあるモノ”を手に入れることができる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ