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第438話・ルクレールVSラスコー

 

「クッソおおおぉぉおおおッ!!!」


 憤り、憤怒、全ての負の感情が頂点に達し、叫んだラスコーは1人でも多くの仲間を救おうと行動に移った。

 レバーを動かし、正面の戦車へ狙いをつける。


 ––––ダダァンッ––––!!


 放たれた57ミリ速射砲は、綺麗な弧を描いて。


 ––––カカァンッ––––!!


 呆気なく正面装甲に弾かれた。

 そもそもが対魔導士用、無傷の戦車を相手する前提で作られていない事実が無情に突き付けられる。


 そして、こちらの57ミリが届くということは……。


 ––––ドォンッ––––!!!


 向こうの105ミリなどゆうに届くということ。

 緊急回避アクションを起動し、横へスライドすることで飛翔して来た砲弾をギリギリかわす。


 だが今度は、狂乱状態の友軍が隣で爆散した。


「ッ!!」


 上方斜めから突入して来たスツーカが、5機編隊で30ミリ機関砲の掃射を掛けたのだ。

 当然ながら、航空機にとってグレイプニルなど射撃演習の的同然。


 卓越した技術を持つラスコーを除いて、味方はドンドン食われていった。


 その一際目立つラスコーの動きを見ていたのは、戦車部隊の先頭で指揮を執っていた軍人。

 ルクレール上級大将だった。


「あの機体、できるな」


 ニッと笑い、通信機を取る。

 チャンネルはなんと、“オープン”……つまり敵味方関係なく戦域全部に届く通信だ。


「スツーカ隊は補給に戻れ、戦車中隊は掃討を引き続き続行。だが第1小隊は我に続け! これより突貫する!!」


 ルクレール率いる4両のティーガー主力戦車が、勢いよく前方へ抜け出た。


 それに呼応して、ラスコーも砲門を向ける。

 狙うは当然、オープンチャンネルでしゃべった敵の指揮車だ。


「てめえらだな!! 俺たちの司令部を壊滅させたのは!!」


 通信機へ怒鳴ると、たくましい軍人の声が届く。


「その通りだ、君は空爆や遠距離狙撃では仕留められそうにないんでな。(うれい)なく、直々に私が相手しよう」


「上等だ土人共め!! 仲間の仇を今ここで打ってやる!!」


 全速力で突っ込んでくるラスコーへ向かい、ルクレールは腕を下ろした。


「全車、撃てッ!!」


 耳鳴りのする轟音が、砲声となって駆け巡った。

 飛翔した4発の砲弾を、ラスコーの機体は針の隙間をくぐるような動きで回避。


 次いで57ミリ速射砲を3連射した。

 当然弾かれるが、両者全く怯まない。

 互いの距離が100メートルを切った。


「回避を!!」


 叫んだ操縦士に、上半身を出したルクレールは腕を組みながら叫び返す。


「怯むなァッ!! 王国軍の戦車は一歩も引かん!」


 上官の要望とあれば、応えるのが部下の役目。

 シフトレバーを操作し、もう眼前にまで迫ったグレイプニルに対応する。


 ––––ギャルルルッ––––!!!!


 その場で戦車ドリフトを披露し、ルクレールの乗る車両は超至近距離で放たれた速射砲をかわす。

 同時に発砲、しかしラスコーもまたすれ違いざまの攻撃をすんでで避ける。


 交差した両者は、その勢いのまま振り向いた。

 互いの砲身が互いの正面へ向けられる。


「惜しいな……! 君のような若く優秀な人材を潰さねばならんとは」


「ふざけたおっさんだ! 大天使ミニットマン様の名の下に––––華々しく散れッ!!」


 発砲はほぼ同時だった。

 ラスコーの放った57ミリ砲は、上半身を出していたルクレールの“数センチ”離れた場所を通過。


 そして––––


「チッ……、クショウ……」


 戦車砲の直撃を受けたラスコーは、機体ごと大爆発を起こす。

 炎上した残骸を見て、ルクレールは侮蔑と正反対の感情を向けた。


 通信が入る。


『こちら第2中隊、森の反対側に展開していた敵軍を全て殲滅』


『第2小隊より指揮車、敵軍の掃討を確認。自走砲旅団は無事に森を抜けたようです』


 砲弾が掠めかけた肩を触り、ルクレールは答える。


「全部隊へ通達、これより我々は遺跡の完全殲滅へ向かう。簡易補給後、自走砲旅団に追いつくぞ」


 焼け野原となった平原を去り際、ルクレールは残骸群へ向かって敬礼した。

 これで残すは、敵の最終防護目標だけとなった。


 だが、まだ最大の敵が待ち受けている。

 少しだけ竜王級魔導士に頼りたくなったが、それはこの映像を見ている彼を失望させるだけだろう。


 ルクレールは、幸いにも無傷の部隊を率いて前進を再会した。


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