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第421話・勇者VS滅竜王

 

「そんな……! 真なる血界魔装を2つ同時に発動するなんて、常識外れにもほどがあるわよ!」


 変化した俺の姿を見て、流石に動揺したらしいアーシャが数歩後ずさる。

 もちろん。彼女の言うことは間違っていない……。


 現に俺は、『雷轟竜の鎧』と『蒼焔竜の鎧』を、同時に発動しているのとほぼ変わらない状態だ。

 尋常ならざる耐久力を持つ、竜王級にのみ許された特権と言って良い。


 つっても––––


「さぁ選べ勇者、今すぐアリサの記憶を元に戻すか。俺にぶちのめされて天の資格を失うか」


 正直キツイ……!

 ブルーよりかはまだ魔力消費抑えめな分、数段階上のコントロールが要求される。


 ほんの少しでもミスれば、俺の身体でも保たない。

 衣と鎧……、確かに全然違うな。

 まぁ当然、


「ふざけた男……! アリサをたぶらかした悪の権化め! 選べですって? 今ここでアンタが斬り刻まれるのよ!」


 そう叫んだアーシャは、踏み込む前に吹っ飛んでいた。

 奥の岩山が粉砕され、土煙が晴れ渡った空に昇る。


「うっひゃー凄いね、今の一瞬でこの威力か」


 驚嘆した様子の大天使。

 コントロールは極めて難しいが、制御さえすれば恐ろしく強力な変身だと確認できた。


 今の攻撃は、指先からほんの僅かに焔を飛ばしたに過ぎない。

 さて、


「アリサ、お前が目指している……。将来ぶん殴る予定の人間を––––」


 魔力を解放し、戦闘の構えを取った。


「目に深く刻みつけて、今から思い出させてやる」


 俺が大地を蹴るのと、勇者が岩山から飛び出すのは同時だった。

 眩い太陽に照らされた森で、俺とアーシャは激突した。


「彼氏だか何だか知らないけど、アリサは私の物なの! 無粋な男が手を出さないでくれる?」


「はっ、そいつぁ無理だ」


 濡れた地面を抉る斬撃が、数センチ先を通り過ぎた。


「俺はあいつの恋人で、将来ぶん殴る宣言をされた愛しの彼女なんだ。手を出すな? 笑わせる!」


 アーシャを蹴り飛ばすと、俺は空中から肉薄した。

 両手に雷焔を纏い、進化した竜の爪を顕現させる。


「竜装––––『焔雷牙爪(えんらいがそう)』!!」


 急降下しながら放った竜王の斬撃は、ガードに使われたアーシャの剣を乾いた粘土のように砕いた。


「ッ!!」


「アリサを共産党に売っておいて、都合が悪くなったら自分に渡せだ? 随分と身勝手な姉じゃねえか」


 雷焔の拳を間断なく浴びせ、森を引き裂きながら連撃をお見舞いしていく。


「アイツの人生がどんなだったか知った上で言ってるのか? 知らないなら教えてやるよ!」


 服を掴み、高空まで引っ張り上げた。

 すかさず剣を錬成し直し、反撃してこようとするがそんなことさせない。


「アリサはな、今まで被りたくもない鉄仮面を被って生きてきた! 明るく振る舞い、気丈を演じて!!」


 怒りを上乗せして、俺はアーシャを上空から投げ落とした。

 これでは終わらせない、ヤツが地面に激突するより速く雷となって移動––––先回りする。


「本当は内気で人間嫌いで、誰よりも正直者のアイツに、そんな生き方をさせたのは––––」


 風が舞うほどに勢いをつけ、蒼焔を纏った膝蹴りが落下してきたアーシャを撃ち抜いた。


「他でも無い、テメェだろうが!!!」


 肋骨の砕ける感触が走った。

 無い痛覚を超えて、アーシャは大ダメージと一緒に再び上空へ突き上がる。


「借りるぜ。ミライ、カレン」


 雷轟竜の力で瞬時に移動した俺は、雲を超えて飛んで来るアーシャを上から迎え撃った。

 全魔力を解放し、両手の竜装を右拳の一点に収束させていく。


 気づいたアーシャが振り向き、『対勇者極防御魔法(セイクリッド・オリンピア)』を展開した。


 アレは最上位の天界魔法、最悪半分は防がれる可能性があるも関係ない!

 言って聞かない、喋ってわからないなら––––


「口じゃなく、拳で語ってやるッ!」


 ––––ギィンッ––––!!


 互いが触れ合う刹那、甲高い音と軽い衝撃波が通り過ぎた。

 それは気のせいなんかではなく––––


「なっ!?」


 アーシャの防御魔法が、跡形もなく崩れ去ったのだ。

 鬼のような形相で振り返った先にいたのは、


「おっ、…………まえぇ!!!」


 あらゆる魔法を破壊する血界魔装、『魔壊竜の鎧』に変身したアリサが立っていた。

 彼女の飛ばした魔壊の衝撃波が、アーシャを無防備な姿へ斬り剥いたのだ。


 これを無駄にするほど、俺は鈍感じゃない。


「滅国戦技––––」


 こちらへ顔を向けたアーシャが見たのは、蒼い隕石にも似た巨大な焔雷の拳。

 彼女の顔が、初めて恐怖一色に染まる。


 俺は極限まで引き上げた魔力で持って、援護してくれたアリサの想いを乗せながら技を振り抜いた。


「『滅竜王の撃滅拳』ッッ!!!」


 森が火災を起こす間も無く弾け飛んだ。

 大爆発は大気と地面を揺らし、見上げるほどのキノコ雲を発生させた。


 この技を最後に、王都を脅かす勇者との戦いは幕を閉じた……。


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