第395話・生徒会オンライン会議
※本話は、本来小説においてタブーとされている手法を使わせて貰っています。
––––午後7時50分。
先日、カレンが引きこもっていた原因を見事ミライが掴んでくれたことで、開催が決まったのが今回行うオンライン会議だ。
オンラインと言ってもリアルタイム通話ではなく、チャットアプリを通じた文面でのもの。
どこから盗聴されるかわかったものではないので、会話より若干秘匿性が高いこちらが選ばれた。
「そろそろか……」
午後8時ジャスト、ミニタブを起動。
アプリを起こして、グループチャットに入室した。
とりあえず若干緊張した指で、『全員いるか?』と打ち込む。
すると、
・ユリア『問題ありません、でもアリサっちがバイトから帰ったの……少し遅かった気がします』
・ミライ『いるわよー、アリサちゃん今日もバイト? 仕事納めいつなのかしらね』
2人から返信が来て、また少し経つと––––
・アリサ『ゴメンゴメンゴメン!! ちょっと待って! 今着替えてる最中!』
ずいぶんと慌てた様子の文面が現れた。
ってかこいつ、服脱ぎながら文字打つのか……器用かよ。
・ミライ『アリサちゃん、今日のパンツ何色?』
変態が現れた。
返事は即座に打たれる。
・アリサ『よっしゃ! 着替え完了! あとパンツはねぇ〜……今日はベージュ!』
・ミライ『っはぁ〜! 最高! アリサちゃんなら絶対似合う! 今度ぜひ下着とか買いに行きましょう!』
・ユリア『お2人共、パンツの話題は後にしてください。後がつかえてます』
恥じらいを全く知らぬ2人を、ユリアが即座に制する。
っていうかベージュなのか……、知らなかった。
・アルス『とりあえずみんな揃ったし、始めるぞー』
・ユリア『了解です、しかし会長……通話は危険と判断してのチャットですが、こちらの安全性は担保されているのですか?』
当然の質問だ。
いくら声を出さないからと言って、このネットワークは当然ユグドラシル社の管理下にある。
普通なら会社のサーバーに必ず記録は残るし、その気になれば外部からのハッキングで盗み見ることも可能だ。
けれど俺たちは、この部分においてチート級の味方を付けていた。
会話欄に、文字化けした真っ黒なアイコンが現れる。
・***『そう言うだろうと思ってましたよ』
文字が変形していく。
並び替えが終わった部分には、”ノイマン“と書かれていた。
・ノイマン『このグループチャットは、リアルタイムでわたしがプロテクトしています。外部からのハッキングは不可能な上、用が済んだら自動的に削除されます』
自信に満ちた断言。
彼女こそ、天才技術者ドクトリオン博士が残した、インターネット空間における最強のスーパーAIだ。
・ミライ『えっ、すごっ……! じゃあどんな権力者やハッカーでも今ここって見れないの?』
・ノイマン『当然です、怪しいアクセスが来たらわたしがぶちのめします。なので、皆さんは安心して作戦会議してください』
・ユリア『それはとても助かりますね、さすが魔導タブレットを生んだ天才が遺した方なだけあります』
・アリサ『あっ、ホントだ。別の端末の別アカウントじゃ事前に弾かれてこの部屋入れない』
さっそく試したらしい。
俺も元々持っていた通常サイズのタブレットでログインを試みるが、アリサの言う通り謎のエラーを吐いて弾かれる。
どうやら、余所者は入れないというのも本当のようだ。
・アルス『よしっ、ではこれより奪われたカレンの能力奪還について協議する。これは俺たち王立魔法学園生徒会にとって非常に重要なものだ。全員、今日は簡単には寝れないぞ』
・ユリア『望むところです、必ずカレンさんの能力を奪い返しましょう!』
・ミライ『我が義妹のため、徹夜上等!』
・ノイマン『なるべく早くお願いします、プロテクトは演算能力を結構使用するので』
各々返事が返ってくるが、アリサだけ遅れてメッセージが書き込まれた。
・アリサ『じゃあ早速言うことがあります』
次の瞬間、画面の前で俺たちは凍り付いた。
・アリサ『今日わたし、”実のお姉ちゃん“に会ったんだ』




