★第394話・外見変えれば中身も変わると本気で思ってました★
ユリア、アリサと好評が多かったので、今回は遂にミライのフルカラー挿絵付き(差分あり)の日常回を用意しました。
イラスト作者は、前回と同じイラストレーターさんです。
––––12月30日 生徒会室。
俺とミライは、冬休みを返上しての書類作業に追われていた。
年の瀬にもなるというのに、ここの生徒会は忙しさが全く途切れてくれないな。
まぁ王国随一の学舎でもあるので、その辺りあらかじめ知った上で務めているわけだが……。
––––ピロン、ピロン♪––––
テーブルに置いた俺の専用端末、通称『ミニタブ』から何度も通知を知らせる着信音が鳴っていた。
送り主はわかっている。
「出ないの? エーベルハルトさんからロインアプリで大量にメッセージ来てるけど」
「知ってるよ、そしてミライ……人のタブレットを勝手に開くんじゃない」
「別に良いじゃん、恋人同士なんだから」
「お前アレか、結婚したら夫のメール盗み見るタイプか」
目の前の書類にサインして、今にもメールフォルダを漁り出しそうなミライからタブレットを取り上げる。
「ちぇっ、アルスのロインのプロフィール、恥ずかしい一言コメントへ編集してやろうと思ったのに……」
「おまっ! それでユリアやアリサに変な誤解されたらどうすんだよ」
「アルスは変態だったってことでおk、そんでもって2人は解散。わたしがあんたを独占してハッピーエンドじゃん」
「冗談だとわかってても怖えよ」
こいつ、意外と独占欲あるんだよなぁ……。
ふと手持ち無沙汰になった俺は、ミライから奪い返したミニタブをいじる。
必要最低限のアプリしか入れないので、ホーム画面の密度が相変わらずスカスカだ。
「おぉ〜? 生徒会長が学園でタブレット使用しちゃって良いの? 学業以外の使用は禁止だぞー」
「授業中に平気でTL巡回するお前が言うな」
「はい」
アプリを開けば、案の定ユリアからのメッセージが届いていた。
内容は主に「昨夜の件って会長の仕業ですよね?」っという意味の言葉を、はぐらかす俺に言い回しだけ変えて聞いてくるというもの。
やはりあの技を隠し通すのは困難なようで、とりあえず「お前が王都に帰ってきたら話すよ」とだけ返答。
スッとアプリを閉じた。
すると、横から画面を覗いていたミライが俺の肩に頭を乗せてきた。
フワリと……シャンプーの良い匂いが鼻を触る。
「なんだよ」
「いや、特に理由はないけど。アルスの灰髪綺麗だな〜って」
髪、髪か……。
「今さらなんだけどさ、お前いつから茶髪に染めたの?」
「は? ホントに今さらじゃん。10周遅れかよ」
「あえて聞いてなかったけどさ、前まで日本人風の黒髪だったじゃん。ポニテでもなかったし」
「あー……そうだね、まぁ単純な理由ですよ」
頭を肩から離したミライが、後ろに下がった髪を触る。
「見た目を変えれば陽キャになれるとガチで信じてた」
「結構陰鬱そうだったもんな、小学生の時のお前」
「体育の2人組作ってと、体育祭練習期間、学園行事は大の天敵でした」
「そう思えば進化じゃないか? 今年は大魔導フェスティバルの大トリやったし、役職は生徒会の書記。効果あったってことだろ」
「そりゃ多少はあったかもしんないけど、実際は全部アルスのために––––」
言いかけて、顔を赤面させた。
「こんなん言わせんな、バカ」
なるほど、ミライなりに頑張ってくれた結果か。
大魔導フェスティバルも、生徒会役員も下手な生徒には任せたくなかったのだろう。
ふと思い出す。
この大佐から貰ったミニタブ……、カメラの画質はどれくらいだろうか。
少なくとも、俺が今まで使っていた型落ち品よりは遥かに良いはず。
「なぁミライ、ちょっと写真撮って良いか?」
「は? いきなり何で?」
「今年一年、頑張ったお前を記念に残すためだ」
「本音を言え、本音を」
「っ……! お前の顔を家でも見たいからだよ」
さすがにストレート過ぎたと思ったが、当のミライは「ほーん……」とまんざらでもなさげ。
一応恋人だし、好きに撮ればと了承を貰った。
「ちゃんと映えるように撮ってよ〜、あとSNSにアップは禁止ね」
「はいはい、撮るぞー」
カメラアプリのシャッターを切る。
映っていたミライの姿は、やはりユリアやアリサに負けず劣らずの美少女。
ガラスから射した陽光が茶髪に反射し、同色の瞳もまるで宝石のよう。
陽キャ(本人自称)の、実に可愛らしい姿だった。
「見せて見せて、おっ! 結構画質良いじゃん〜」
「カメラの性能様様だな」
「そこは嘘でも被写体が良かったって言え、んと〜まだ撮る?」
「あぁ、お前血界魔装に変身したらだいぶ雰囲気変わるだろ?」
「変わりますね、結構ガッツリ」
「カッコいいからその姿も欲しい」
「欲張りね〜、ちょっとお待ちくだされよ」
そう言って、何やら部屋というか学校の外へ出て行ってしまった。
30秒ほど経った頃だろうか。
––––キィンッ––––!!!
校舎の眼前で真っ白な雷が落下し、激しい揺れと共に家具類が一瞬浮き上がった。
あれ……、変身するたびにこうなるのか。
「おまたせー」
何事もなかったように、部屋へ戻ってくるミライ。
『雷轟竜の鎧』へ変身した彼女は、以前戦った時と同じく見た目にかなり変化があった。
魔力に関しても、俺と正面から殴り合えるだけの規模を纏っている。
さらに、激しいスパークが彼女の周りを走っていた。
「めんどくさいからさっきと同じポーズで良い?」
「了解、撮るぞ。3、2––––1」
激写。
まるで別人のごとく変貌した、カッコよくて可愛い彼女が写真に映る。
「満足した?」
「サンキュー、もう解いて良いぞ」
ミライから魔力が四散し、髪と目が元の色へ。
肌の紋様も消え去る。
「外見てきたけど、また雪降りそうだった」
「マジか、じゃあ今日の仕事はここまでだな。サッサと帰ろう」
「そうね、バス止まっても困るし」
荷物を持ったミライが、俺へ向かって振り向く。
「じゃあ今夜8時に集合ね、“カレンちゃんの能力取り返す会議”。遅れたら絶許だから」
「はいよ」
生徒会初となるオンライン会議を前に、俺とミライは学園から帰宅した。
これで生徒会3ヒロインの外見が全て公開となりました、皆さんは誰が好みでしょうか?
挿絵付き回は読者さんの『感想』と『いいね』によって実現しました、今回もお声を頂けると大変嬉しいです。




