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第364話・生徒会長全力の雪かき

 

 ––––王立魔法学園 西側グラウンド。


「降り過ぎだろクソッタレ!!」


 頬も指先もかじかむ中、俺は1人雪かきを行っていた。

 まさかこんな天気での苦行を、バイト前のアリサにやらせるまいと代わったは良いが––––


「ゼェッ……! そもそも、こんなクソ広い校内を生徒会役員たった4人で清掃し切れるかよ! 絶対来学期にはこんな慣習廃止してやる! そして絶対業者を呼ぶッ!!」


 スコップで真っ白な雪をかき上げ、必死で一ヶ所に集めていく。


「おい! なんだアレ!」


「とんでもない勢いで雪が一ヶ所に集められてるぞ! 誰かラッセル車でも持って来たのか!?」


「いや違う! 人だ! 人間ラッセル車だ!!」


 背後で叫ぶ部活動の生徒たちを尻目に、俺は全力で雪かきしていた。

 なる早で終わらせるため『身体能力強化(ネフィリム)』を贅沢に使い、ハイペースで雪を集めていく。


 本当はユリアやミライも校内にいて助太刀を提案されたが、今回は断った。

 こういう泥臭い力仕事は、昔から男子が率先して行うものだという俺の勝手な価値観からだ。


 もしくは、ブラックギルド時代の労働癖から出た言葉か……。

 どっちでもいい。


 2人には事務仕事を任せ、俺は積もりに積もった雪をすくい上げる。


「ってかアイツら! なんで真冬にスカートなんだよ! あんな格好で氷点下の雪かきなんざさせられるか! そもそも俺以外にあんまり脚を見せ––––」


 そこまで言って、スコップを動かす手が止まる。


「俺……以外と独占欲強いな」


 キモいか……? 

 いや、彼氏としてはむしろ当然じゃね? アイツら軒並み美人で華奢だしそりゃ独占欲ぐらい出るだろ。


 何も不純じゃ––––


「でもやっぱキモいのかな……」


 なんて独りごちりながらも、グラウンドに積もった雪の9割ほどを隅っこにかき集めた。

 我ながらかなり頑張ったのではないだろうか。


「一旦はこんなもんか……、演習場はさすがにやる気が起きん」


 山のように積み重なった雪を見て、とりあえず一息。

 生徒会室に戻って、熱いコーヒーでも淹れてもらおうと思った瞬間だった。


「ッ……!」


 晴れ間の覗いていた空が、いきなり紅色の膜に包まれた。

 厳密には、広がったドーム状の『魔法結界』が学園中を包み込んだのだ。


「生徒会長自ら雪かきとは、精が出ますね」


「ッ!!」


 直上から降って来た強烈な踵落としを、俺はかろうじて魔力を纏ったスコップをもって迎撃する。

 苛烈な火花が散った後、距離を取った襲撃者は両手に焔の鉤爪を錬成。


 一気に突っ込んでくるや、重い連撃を浴びせてきた。


「おい…………」


 握り直したスコップを全力で振り、鉤爪の乱打を1発も漏らすことなく迎え撃った。

 しばしの鍔迫り合いを終え、再び距離を空けたドレス姿の少女は両手の焔を収める。


 俺はスコップをグラウンドに突き刺すと、もう見知った顔のそいつへ一声掛けた。


「一体なんの用だよ、“アイリ”」


 襲撃者––––アイリ・エンデュア・ミリシア第一王女は、少し残念そうな顔をしながらドレスをはたいた。


「うーん……不意打ちなら結構イケると思ったんですが、さすが竜王級。そんなに甘くないですね」


「不意打ちでやられるようだったらアリサは苦労してねーよ、それより何だ。わざわざ王女殿下が1人で……近衛に怒られるぞ」


「大丈夫ですって、話が済んだらすぐに城へ帰りますから」


 全然大丈夫じゃない気がするも、アイリはお構いなしに生徒会室の方を指差した。


「ちょっとお時間、よろしいですか?」


 どうも、ただ遊びに来た訳ではなさそうだ。



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