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第351話・アルスVS近衛大隊

 

 相手は魔力アリの、訓練された近衛騎士たち。

 状況はこちらの圧倒的不利に思えるが、俺の中に焦りは無かった。


「行くぞ素人共、どっちが国賊か教えてやる」


 マントを翻して床を蹴った。

 ユリアの魔法結界内で動けることから、実力はあるんだろうが––––


「おいなんだよ! この動きッ!?」


「CQCか!? にしたって鋭さが違いすぎる! 教官でもこんな動きしねえぞ!」


 四方八方から襲ってくる剣撃を、俺は自慢の反射神経で避けていた。

 なんてことはない、アリサが繰り出す拳の速度に比べれば子供の棒切れ同然。


 当たれという方が無理な話だった。

 加えて––––


「ほっ!」


 こっちはこれでも百戦錬磨の生徒会長。

 相手の剣を蹴り砕き、そのまま連撃で吹っ飛ばす。


「この動き……こいつも魔力を纏っているのか!? パワーも桁違い––––」


 呑気に喋る近衛騎士の顔面へ、勢いをつけた肘打ちを打ち込む。

 もちろん魔力など一切使ってない、筋力だけの素のパワーだ。


「どうした近衛大隊長? 部下がやられるのを見てるだけか?」


 気づけば俺の周りは、気絶した近衛騎士で溢れていた。

 魔力を一切使っていないので、傷も残らないし数時間で目を覚ますだろう。


「ベリナ、ここは私が」


「っ……おう」


 紺色の鎧を纏い、豪奢な剣を抜いたのは近衛大隊長カルミナ。

 彼女は他の騎士と連携して、俺へ一気に肉薄してきた。


「まぐれだけの子供に、好き放題されるわけにはいかないのよッ!」


 なるほど基礎的な剣技としては、かなり上段の類いであることがわかる。

 他の騎士と比較しても、筋が違った。


「よっ」


 だがそれだけだ。

 ジャンプで階段に飛び移った俺は、壁に飾ってあった装飾豊かな剣を取る。


「ずああッ!!」


 階段を駆け上がり、シールドごと俺に体当たりをかまそうとしてきた騎士を蹴り一発で吹っ飛ばす。


「おっと、それは貰うぞ」


 階段を落ちていく騎士から、寸前に丸型のシールドを拝借。

 続いて柵を飛び越えて襲ってきたのはカルミナ、せっかくなので拾った剣と盾で応戦してみる。


 金属音が連続して響いた。


「どうしたよ? まぐれが随分と続くようだが」


「このっ!!」


 安い挑発に乗せられての大振りな一撃。

 アッサリと剣で弾き、シールドバッシュを叩き込む。


「グハッ!?」


 鼻血を噴き出し、のけぞったカルミナの脇腹へ回し蹴りをお見舞い。

 壁に叩きつけると同時に、盾を鎧へ押し付けた。


「寝てろ」


 盾を剣で貫き、壁にブッ刺して固定。

 動けなくなったカルミナの顔面へ、重めのジャブを浴びせた。


「ごふゅ!?」


 情けない声と共に、ガックリとうなだれる。

 俺はすぐさまバク転し、背後からの剣撃をかわした。


「よくもカルミナ様を!」


「悪いね––––今日がシフト日だったことを、担当者に恨むんだな」


 今度も飾られていたアックスを取り、近衛騎士の攻撃を受け流す。

 訓練だけで実戦を経験していない人間など、型がテンプレ過ぎて読みやすいにも程がある。


 しばらく攻防を続けていると、のびていたカルミナが意識を取り戻す。

 俺の拘束から抜け出すと、怒りに形相を歪ませながら突っ込んできた。


「竜王級ッ––––––––!!!」


 さっき俺が拘束に使った剣を振るうが、勢いだけの一閃など猪突猛進も同然。

 腰を蹴りつけ、そのまま破壊された柵ごと2階から叩き落とした。


「これは昼間のお返しだ」


 盛大に落下したカルミナへ続き、俺も飛び降りた。

 狙いは一点、高さを加えての膝蹴りを彼女の腹へめり込ませる。


「がっ……!?」


 鎧がひしゃげ、胃液を吐いたカルミナは今度こそ再起不能の大ダメージを受けた。

 後続で飛び降りてきた騎士も、疲労で剣筋が鈍っている。


 カルミナの手放した剣を拾い、すぐさま首筋へ突きつけた。


「ッ……!!」


「お前ら……近衛騎士にしては絶望的な練度だぞ、普段何してるんだ?」


「お、王族を守るため日々鍛錬を––––」


 ため息をついた俺は、血が滴るまで剣先を食い込ませる。


「本当は?」


「か、カルミナ様とベリナ様に……少し賄賂を。それで待遇の良い近衛大隊に……」


 言い終わる前に、思い切り顎を蹴り上げた。

 白目を剥いた不正者は、仰向けに床へ倒れる。


「王族の盾たる近衛が、ドロドロの不正とはな……道理で弱いわけだ。さて––––」


 俺は剣を投げ捨て、今にも泣きそうな表情で1人残された近衛大隊長……ベリナに微笑みを向ける。


「なぁ……もう一度言ってみてくれよ、プロパガンダに違いないってな」


 ポケットに潜ませていた最強の魔力回復ポーション。

『マジタミンΩ』へ、俺は手を伸ばす。


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