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第35話・今この瞬間から本気出す!

 

「ふぅっ、今日も疲れたな〜」


 学業、バイト、飯に風呂に勉強とやるべきことを全て終えた俺は、自室のトビラを開けて中に入った。


 なんだか密度の濃い1日だった気がする、疲れた……とにかく疲れた。

 ベッドに腰掛けた俺は、置いてあった魔導タブレットのスイッチを入れる。


 勉強机とベッドしかない無機質な部屋に、緩やかな起動音が流れた。

 ドでかい樹を模したユグドラシルの企業ロゴが映り、ホーム画面が現れる。


「マスターも太っ腹だよなぁ、事情聴取で出勤できなかった分もバイト代くれるなんて」


 前に持っていたタブレットはグリードに壊されたため、こいつは二代目だ。

 少し古い型だが、それでも前のよりかはずいぶんスペックがいい。


 時刻は夜中の11時––––寝てもいいが、どうもまだ昼間の興奮がおさまらず神経が昂っているので、俺は動画配信サイトへアクセスした。


「おっ、ライブやってる」


 すぐにお気に入りの欄から、1人の配信者を見つける。

 タップし、現れた画面には大人っぽい金髪お姉さんが映っていた。


 お姉さんと言っても、本物ではなく描かれたイラストを俺もよく知らない魔法で動かしているもの。

 配信者名は––––


『あぁー聞こえてる? うん、BGMもオーケーだね。今日も“ミニミ”お姉さんの配信やってくよ〜」


 どこか気だるそうだが、非常に癒される声が部屋に響く。

 ミニミさんとは、俺が『神の矛』時代から精神の支えにしている人気配信者だ。

 ここ最近は見れてなかったが……。


 内容としては本や新聞を朗読して感想を言ったり、リスナーのお悩み相談などをメインとしている。


『今日は〜……目新しい新聞もないかな、本も昨日読み終えちゃったし』


 疲労しきった心身に染み渡る。

 もはや見て聞く精神安定ポーションだ。


『なら今日は久しぶりにお悩み相談コーナーやろうかな、配信直後に来てくれたみんなへのサービス。コメントからランダムで選ぶね〜』


 イラストは大人なのだが、声はどこか舌足らずで幼い。

 中の人自身はどこかの学校に通う学生らしく、成績はちゃんとしっかり取ってるとのこと。


 魔法に自信があるらしく、特に飛翔魔法などの上級系になるとものすごく饒舌になることから、早口ヲタクお姉さんと呼ばれることもしばしば。


「んー……けどなんだろう、どこかで聞いたことがある声だけど。まぁいいか、すっげー癒されるなぁ」


 逆さまの滝のように流れるコメント欄から、ミニミさんは無作為に選んだ悩みへ答えていく。


『勉強辞めてユグドラシルの配信者になりたい。うーんそれはよした方がいいよぉ、教養と知識は将来の選択肢を広げるからね』


『リアルのミニミさんみたいに小さな胸が良かった。なにー? 喧嘩売ってんのー? わたしリアルでもちゃんと大きいし』


『原稿がヤバいです助けください。漫画家さん? こんな配信見てないでちゃんと睡眠取った方が良いよ〜』


 和やかなムードで進行していく。

 画面に映るイラストは、本人の表情と連動して豊かに変化していた。


 悩みか……、そうだな。

 俺は画面端にあった欄を押す。


「たまにはコメントしてみるか」


 どうせ読まれないだろうし、心の中をグルグルと回る雑念を排出できるだろう。

 案の定、投稿すると俺のコメントは一気にチャット欄の濁流へ消えた。


 これでいい。

 部屋の明かりを消し、そろそろ寝ようかと思った際––––ミニミさんは『じゃあ次で最後』と前置いて喋った。


『“大事な友達の仇を取りたくて学校最強の子に挑みます、なにか労いの言葉をください”』


 読み上げられてしまった……!!!

 嘘だろ、どうせ読まれないと思ってクソ雑な文章にしちゃった。

 て、訂正をしたい。


『へー奇遇……、たぶん違うだろうけど今日わたしも宣戦布告みたいなことされたんだ〜。相当魔法に自信あるんだろうね』


 マジ?

 ミニミさんにそんな無礼で不躾で不調法なことをするヤツがいるのか、身のほど知らずにも程がある。


 コメント欄も同じ意見だった。


『まぁだから叩き潰すつもり、わたしが追い求める究極の未来のために。でも––––』


 数秒黙った後––––ミニミさんは続けた。


『わたしがそうであるように、コメ主さんも迷わず全力でぶつかるべきだよ。じゃないとその友達––––何より相手に失礼だもん、手加減抜き、殺すくらいのつもりで挑まなきゃ』


 俺の心の中でなにかが吹っ切れた。

 魔法を手加減できるか、殺してしまわないか、そんなことをずっと考えていたが……彼女の言う通りだ。


 ブッ倒す。

 ミライのためにも、こちらを舐め切ったあのユリアとかいう学園1位へ思い知らせるためにも。


 生徒会長になるため、それこそ殺すつもりで挑まなくては堂々の学園1位には勝てない。

 俺はパンっと両頬を手で叩いた。


 痛みで痺れる中、両眼を開く。


「今夜……、今この瞬間から本気出すッ!」


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[一言] 学園最強さんが哀れ.....
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