第308話・修羅場の予感?
起床用のアラームが鳴り響く。
朝6時、本日は年末の終業式ということもあって少し早めに設定されたタイマーなのだが……。
「結局、お互い一睡もしませんでしたね……」
「あぁ……目覚ましの音が虚しい、なんか冷酷に終了を告げられた気分だ」
フォルティシアさんを助けたその足で、俺は予定外ではあるもユリアの部屋で寝させて貰った。
いや、寝させて貰った……というのは少し意味が違うか。
厳密には全く眠れなかった、ユリアの言う通り一睡もである。
「もっと……一緒に布団入ってたかったです」
「平日様が呼んでるし、そうもいかんだろ」
同じベッドの上、隣りには布団を共有するユリアの姿があった。
お風呂が終わった後、魔力も切れてるしサッサと寝ようという流れになったのは覚えている。
問題はその後だ……。
「むふ〜ッ、会長にいっぱいギュッとして貰った」
シャツ1枚だけのユリアが、満足気な疲労感と一緒に笑う。
結局、俺たちは高まりきったボルテージに任せてお互いにダラダラと、くどいレベルでイチャイチャしてしまった。
その結果が、徹夜という大バカに繋がってしまったのである。
きっとカーテンを開ければ、容赦のない日光が俺たちを照らすだろう。
「会長は……さすがに1回帰らないとですよね」
「そうだな、着替えと……あとシャワー。朝飯は家で食うよ」
「わかりました、名残惜しいですが一旦ここまでですね」
解散の流れ。
今日は全校生徒の前でスピーチしなきゃだし、本当に名残惜しいがこれで帰ろう。
––––ガチャッ––––!
「ん?」
今の音は……なんだ?
玄関の方から聞こえてきたぞ。
ふと隣を見ると、ユリアの顔がサーっと青ざめていくのがわかった。
まさか––––
「ユリー! おっはようー、朝ですよ〜!」
ばっ! アリサ!?
なんでアイツがここに! 鍵は閉まってたはずだろ!
飛び起きた俺の動揺に合わせて、ユリアが答える。
「あ、アリサっちはここの1階上に住んでて、親友だし合鍵をお互いに持ってるんです!」
「タイミングが最悪過ぎるだろ! お、俺のシャツどこだ!?」
「あっ! えっ、これ––––違う!」
「ユリアもズボン履け! 同じベッドでその格好は不味い!
「はっ、はい!!」
あたふたとベッド上で右往左往。
そんなことをやっている内に、10メートルもない通路を歩き切ったアリサが部屋の扉を開けた。
「ん? なんだいるじゃん。まだ留守かと思ったから返事くらいしてy––––」
制服姿のアリサと目が合う。
俺は上半身半裸、ユリアもズボンが間に合わず半裸。
そしてお互い同じベッドの上……。
結果として、明らかにヤベー光景が完成してしまっていた。
アリサの顔が、スンと真顔になる。
「…………………………」
「いや、………………これは…………」
「はぅ……………………」
俺とユリアは、もう言い訳すらできない。
沈黙、沈黙、沈黙。
空気も時間も、何もかもが凍りついた。
そしてたっぷり30秒ほど固まった後、アリサはようやく一言……言葉を発した。
「что это…………?」
脳の処理がオーバーフローしたらしい。
アリサが初めて、滅軍戦技以外で母国語を口開いた瞬間だった。
訳:「なにこれ……?」




