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第316話・わたしの正義

 

 王都のとある場所、明かりも僅かなとある部屋で2人の男女が話していた。


「貴方は、本当に止まる気は無いのですね……? これ以上突き進めば、背負うリスクが極大にまで高まりますよ」


男はどこか危機迫ったという表情で、少女に口開いていた。


「気にしないでグラン、これはわたしがやらなきゃいけないことだから……。責任も傷も全部わたしが背負う」


「その結果がファンタジアで負った首の傷です、貴方もわかったでしょう……竜王級アルス・イージスフォードの強さを。彼は大天使すら圧倒する人類最強だ、これ以上アーティファクトを強奪するような真似はやめてくださいっ」


「いいえダメよ、ここで止まっては……ここで妥協しては。あの忌々しい連中の計画を阻止できません!」


「ならっ! せめて我々に協力させてください! あなた1人が背負うことなどない、必要なら私から事情を説明し、ミライちゃ……ミライ・ブラッドフォードからアーティファクトを回収します」


「それはダメ、せっかくあそこまで竜王級の喉元に入り込んだあなたを使うわけにはいかない。築いた信頼は本物なんでしょう? それを崩してはいけません。今日の戦いは聞いてたデータ通りだった……次の変身はもっと上手くいくはず」


「しかし貴方は––––」


「えぇ、そうですね……立場は重々理解しています。だからこそ、あんな怪盗ごっこで気を紛らわしてるのですよ」


 少女は踵を返した。


「わたしは……わたしの正義を、わたしが貫徹できるだけの信念でもって貫くだけ。だから責任も、傷も、非難も––––わたしだけ受ければそれでいいのよ」


「しかしっ、それではあまりにも……ッ!!」


「言いたいことはわかるわグラン、でもこれは––––」


 竜王の鉤爪で裂かれたマントを少女は翻すと、頭に真っ白なシルクハットをかぶり直す。


「大天使共に自由を与えてしまった……、わたしの血族の––––この国の責任だから」


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