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第309話・教えてやるよ、ブルー・ペルセウスの恐ろしさを

 

「竜王級……、アルス・イージスフォードっ!?。何故あなたがここに……!」


 眼前で見たことのない血界魔装を発動する少女は、不気味な紋章で満たされた顔をギッと歪ます。

 俺は竜王級の本気、『身体・魔法能力極限化(ブルー・ペルセウス)』を油断なく纏いながら口開いた。


「どうしても何も、大天使級の力を撒き散らして探知されないと本気で思ってたのか? だとしたらとんだご都合主義者か、経験不足だな」


「……そうでしたね、あなたはルールブレイカーと戦った時も、仲間のために1万キロのアルスフィア洋を超えて駆けつけた……。王都からファンタジアの距離程度なら夜中だろうと一瞬で飛んでこれる」


「全く人が寝る直前に騒動起こしやがって……良い迷惑だ、あとなおさらお前の正体がわかんねえな。あの場にいなかったのになんでそこまで詳細を知ってやがる」


「それは秘密です、そして最後に警告です––––そこを退いてください。彼女はただの人間じゃありません、今ここで殺さないとどんな影響があるかわかりません」


「殺す? はっ! そんなこと––––」


 頬を吊り上げる。


「俺たちが許すはずないだろ」


 直後だった。

 イリア目掛けて、金色の流星が極超音速で突っ込んだ。

 衝撃波が、受け止めたイリアを中心に大きくクレーターを作る。


「ッ!!」


「貴女だけは……! 絶対に許しませんッ!!!」


『インフィニティー・オーダー』をハンマーモードにしたユリアが、慟哭を超えた怒りと共に叫ぶ。

 彼女もまた、師匠であるフォルティシアさんの危機を察知して飛んできたのだ。


「大陸最強の魔人級魔導士……! 賢竜族のエーベルハルト家ッ……!!」


 ユリアの連撃をギリギリでかわしたイリアは、逃げるように距離を取った。

 その顔からは、さっきまでの余裕が消えている。


「ユリア」


 下がってきた彼女に代わって、俺が前に出る。


「フォルティシアさんを頼む、この人の自宅なら回復が望めるポーションくらいあるはずだ。下手な病院より確実だろう」


「ッ……」


 しばらくイリアを殺しそうな目つきで睨みつけていたユリアだが、今最優先で助けるべきはフォルティシアさんだ。

 いつ死んでしまうかもわからない状態で、このまま放置するわけにはいかない。


 頭の回転が早いユリアは、1秒と経たずに宝具をしまった。


「了解です、会長……時間稼ぎをお願いします」


「あぁ」


 俺は前に出ると同時、ブルーの出力を一気に引き上げた。

 魔力が大気で飽和し、鐘の音が鳴りまくる。


「ブルーですか……知っていますよ、常人では1ピコ秒の発動さえ許されない変身。竜王級だけが耐えられる最強の切り札」


「それが真の血界魔装らしいからな、こっちも本気を見せてやらないと」


「無駄です、血界魔装の頂点たる“鎧”は衣と比較にもなりません。諦めて帰ってください」


「そうか、じゃあ––––」


 極焔を纏うイリアに、俺はこれまでの経験と人生を込めた言葉を放つ。


「体感させてやるよ。『身体能力強化(ネフィリム)』と『魔法能力強化(ペルセウス)』を大きく超えた世界、凡人だからこそ辿り着けた極地––––『ブルー・ペルセウス』の恐ろしさをなッ」


 ルールブレイカー戦以来の全力全開。


 激しく鳴り響いた鐘の音と共に、俺を中心として蒼色のイナビカリが夜空を照らす。

 さっきまで涼しげだったイリアの顔が、一気に強張った。


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