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第303話・ラインメタル大佐VS大天使東風

 

 鉄板など紙きれのように破り貫く20ミリ機関砲は、発射された弾数全てが空を切った。

 石畳が弾け飛び、周囲に残響と硝煙だけを激しく残す……。


「ほぅ」


 ラインメタル大佐は、コートに突っ込んでいた左手を、冷える夜の大気へ出した。


「さすがにこの程度じゃ仕留めれんか」


 大佐の眼前で、煙が晴れる。

 現れたのは、荷物片手に悠然と立つ大天使の姿だった。

 まともなダメージはおろか、かすり傷1つすらついてない。


 照準用スコープのゼロイン調整が狂っていたか……?

 だがこの近距離で外すわけがないと、装甲車の乗員たちは混乱する。


「困ったなぁ〜、今君たち人類と戦うつもりはないんだけど」


 荷物を置いた東風は、右手をゆっくり前へ向けた。


「降りかかる火の粉は払うのが筋だよね」


 大佐の指示で、容赦なく第2撃が加えられた。

 今度は20ミリ機関砲に続き、搭載する7.92ミリ機関銃を用いての射撃。


「それっ」


 襲い掛かった弾幕は、しかし不気味に笑う東風の1メートル手前で不自然に静止してしまった。

 発射された砲弾弾丸は、全てが空中で止められる。


「なまってはいるけど、これでも古の大天使なんでね––––今度はこっちからやらせてもらうよ」


「ッ!?」


 止められていた弾丸が地面へ落ちると同時、大佐の両脇に停まっていた装甲車が宙に浮き上がった。

 否、持ち上げられたのだ。


「よっ」


 浮かんだ2台の装甲車が、大佐目掛けてサンドイッチのように挟み潰そうと迫った。


「ちっ」


 すかさず飛び上がった大佐は、すんでのところでミンチにされずに済んだ。

 破砕音が鳴り響き、ラインメタル大佐の足下で装甲車のタイヤが吹っ飛ぶ。


 そのまま石畳に落下した装甲車は、互いの中口径砲身をへし折った状態で煙を吐きながら鉄屑と化す。


「”念動力“だな。やるじゃないか、そうこなくちゃ面白くない」


 空中から渾身の蹴りを、大天使目掛けて叩きつける。

 東風の足元が砕け、路上に大量のヒビが発生した。


「えぇ……君、もう神力とか使えないんじゃないの!? なにこのパワー」


「あぁ使えないよ……しかしそれがどうしたっ。そう言う君こそキッチリ防ぐじゃないか、そらっ!! もっと見せてくれたまえ!!」


 ラインメタル大佐は、アルスにCQB(軍隊式近接戦闘術)を教えた張本人である。

 間髪入れずに繰り出される攻撃の乱打は、純然たる技術によって全く反撃を許さない。


 これではいつか食らう……、即座に察した東風はここに来て初めて天使の翼を翻した。

 超高速で大佐から距離を取り、右手で何かを掴む動作を行う。


「んっ?」


 直後、ラインメタル大佐の首が強烈な力によって締め上げられた。

 東風の圧倒的な念動力を使った攻撃だ。


「僕はこう見えて専守防衛を貫いている、けど邪魔してくる愚か者には決して容赦しないよ? 触らぬ天使に祟りなしってね♪」


 握りつぶす勢いで締め上げられる首を見て、東風はニッコリと笑った。

 もう呼吸など一切できないだろう、これでお終い––––


「えっ!?」


 突如、放たれた拳銃弾が東風の腕を食い破った。

 見れば、死の直前まで呼吸困難に陥っていたはずの大佐が余裕の表情で銃を抜いていたのだ。


「いったぁッ!!?」


 大佐に掛かっていた念動力が解除される。


「なるほど、念動力の使用中は無防備か……強力だが弱点も大きいね」


「……こりゃ参ったな、君。よく勇者じゃなくて化け物。もしくは……イカれた戦闘狂(ウォーモンガー)って言われない?」


 血を垂らす大天使の皮肉に、元勇者は笑って答えた。


「あぁ、よく言われるよ。今のだって窒息の恐怖を戦闘のワクワクが上回っただけだからね」


「こりゃ……タダでは帰してくれなさそうだ。こっちもガチの本気でやらなきゃダメかな?」


 神力を放出しようとした東風へ、大佐はその覚悟をへし折る言葉を掛けた。


「無論タダで返すつもりは無い……が、君から何かを奪うつもりもない。なんなら––––君は持って帰れるお土産が増えるだろう」


「どういうことかな?」


「そのままの意味さ」


 チラッと、背後を見たラインメタル大佐は、装甲車の乗員が失神しているのを確認した。

 そして、信じられない言葉を放つ。


「––––私と同盟を結ばないか? 大天使東風くん」


 告げられた言葉は、鉛玉よりも強い衝撃を大天使に与えた。


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