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第301話・完全勝利、冬のコミックフェスタ

 

 大天使アグニを一時的に退けた俺たちは、襲ってきた闇ギルドを予定通り警務隊に突き出した。

 魔法結界の解除されたコミフェスは、まるで襲撃など無かったかのように盛況。


 破損した会場も全部修復され、犠牲者はゼロ。

 半年前のリベンジ––––コミフェス完全防衛は大成功だった。


「こちら500レルナになります、ありがとうございました!」


 そして––––


「終わったアアアァァア!!!!」


 ブースで思い切り万歳をする俺たち。

 朝には山ほど積まれていたミライの新刊は、その全てが手に渡るべきファンの下へ渡った。


 端的に言おう、完売である。


「お疲れみんな、今日はほんっとにありがとう!」


 飛び跳ねながら振り返ったミライは、いつになく嬉しそうに頬笑んだ。

 半年前はテロリストのせいで1冊も売れなかったのだから、まさに感極まりというところだろう。


 それはみんなも同じなようで、


「お疲れ様です会長、ブラッドフォード書記、アリサっち。わたしも非常に有意義な時間を過ごせました」


「いや〜、楽しかったねぇ。なんかこう……必死で作った本が売れるってこんなに嬉しいんだ。最高ってこういう気分を言うんだね」


 ユリアとアリサも、疲労の色など見せずに喜びを浮かべていた。


「本来なら王城謁見前にすることじゃないと思うけど、こういうところが俺たちだよなぁ」


 ポップを片づけながら、つくづくと言う感じで呟く。

 なんて言いながら、心の奥では俺も心底嬉しかった。


 大天使級の襲撃を受けながら、コミフェスを完璧に守り抜いて本まで完売したのだ。

 これを大勝利と言わず、なんと言うだろうか。


 ルールブレイカーの時は国を守った実感など正直無かったが、今回はしっかり実感が溢れている。

 ミライが俺に近寄りながら、ニマッと微笑んだ。


「まさにアルスフィーナのおかげね、売り子……完璧だったわよ」


「来年はもう絶対やんねーからな、女装して戦うとかなり動きとか制限されんだぞ。おかげで蹴りに全然力が入らなかった」


「あっ、そっち? けどまさか大天使も、コスプレイヤー相手に敗走するとは思わなかったでしょうねー」


 今度は悪戯っ子のように笑うミライ。

 会場にコミックフェスタ終了を告げるアナウンスが流れた。


 あちこちで、色んなブースが既に撤収の準備を進めている。


「これからどうしますか?」


 ユリアの問いには、アリサが元気よく答えた。


「そりゃ完売祝いの焼肉だよ、ねっ! ミライさん?」


「当然よ、祝勝祝勝! エーベルハルトさんは焼肉屋さん行ったことある?」


「恥ずかしながら未経験で……、焼肉屋がどういったものか想像もつきません。ドキドキしてきました……」


「そう固くならなくて大丈夫だよ、食べ放題90分。メニューわからなかったら俺たちが頼んだのを勝手に食べてくれれば良いし」


 なんせ、今日の売り上げは莫大だ。

 学生ができる贅沢なんて普通限られるが、今日だけは別。

 同人誌完売・コミフェス防衛祝いの焼肉パーティーくらいなら誰が見ても許してくれるだろう。


 何より––––


「なに食べよう〜、やっぱ最初はタン塩かな〜」


「ホルモンもいっとこうよっ、焼くの時間掛かるし」


「今ノイマンさんに聞いたんですが、焼肉屋さんはスープが美味しいとか……。興味深いですね」


 恋人(みんな)と一緒に焼肉パーティーができる。

 ある意味、こっちが俺にとって本命かもしれない。

 王族だ天使だと肩ひじ張るのは、その後だ。


「よしっ、行くか」


 全ての荷物を片付け終え、コスプレも解いて俺たちは会場を揃って後にした。


 目指すは焼肉屋。

 冬のコミックフェスタは、まさに夢のような大成功で終わった。


これにて冬のコミックフェスタ編は終わりです。

次回より、本格的に【アーティファクト編】が始まります!

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