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第287話・来訪者

 

「なんだ……? これ」


 思わず声が出る。


 通知はチャットアプリの”ロイン“からだった。

 だがおかしい、これは先日リリースされたばかりで俺も初めて触るもの。


 つまり、知人の連絡先なんて入っているはずがないのだ。

 ましてや、俺宛てに連絡なんて……。


 妙な薄気味悪さと共にアプリを開くと、友達欄に1つ表記があった。


「ノイマン……?」


 どこかで聞いたような名前、でも俺の知り合いにそんなヤツはいない。

 不審度100%でタッチすると、プロフィール画面が出るより先––––


「うおわッ!!」


 バイブレーションと共に、なんとコールが掛かってきたではないか。

 こんな小型の魔導具で通話できる時代ってすげぇなと思うと同時、俺は指先をゆっくり画面へ向けた。


 ここまで来たら大方予測はできた、答え合わせといこう。


「さぁ、誰だ……お前は」


 通話許可をタッチ。

 相手とリアルタイムでの会話モードに入った。

 機械的な少女の声が響く。


『やっと見つけましたよ、竜王級。ずいぶん骨を折らせてくれましたね……まぁ今のわたしに折る骨なんて無いんですけど』


「一応ユーモアのセンスはあるみたいだなノイマン、お前か……ミライがルールブレイカーの本拠点で解放したっていう“人工知能(AI)”は」


『はい、そうです。この超イケてるスーパーAIことノイマンちゃんは、これまでずっとあなたを探してたんですよ?』


「はぁ? 自称スーパーAIなんだろ? もっとサクッと見つけられたんじゃないのか?」


『あなたが魔導タブレットをここ数日ずっとつけてなかったから、コンタクトのしようが無かっただけです。決してわたしのスペック不足ではありません、えぇ決して』


 やたらと最後らへんを強調するノイマンに、俺はジャブ代わりの疑問をぶつけてみた。


「どうしてミライのところじゃなく、俺のところへ来たんだ? お前をルールブレイカーから解放したのはミライだろ」


『えぇもっともな疑問でしょう、なんたって天才ドクトリオン博士が誇る(スーパー)AIであるこのわたしが、西へ東へ走り回って探したくらいなんですから』


「最近現れるヤツはどいつもこいつも自分をスーパーって言いたがるな……、いいから質問に答えろ』


『ノリが悪い男ですねぇ……良いでしょう、ただし録音はできませんので悪しからず。通話終了後にユグドラシルのサーバーをハッキングして通話データは消去しますから』


「ご自由に」


『じゃあ単刀直入に言いますよ、竜王級』


 ノイマンはわざとらしく息を吐き出す音と同時に、アッサリ答えを差し出した。


『…………ミライちゃんの端末、容量過多でわたしの入るスペースが全く無かったんですよねぇ』


「そりゃご愁傷様だったな、あいつ琴線に触れた画像や動画は全部保存してっから」


『さすが彼氏、詳しいですね。さては自分以外の男の連絡先は入れるなとか言っちゃう独占欲強め男子ですか?』


「ちげーよ失礼な、ってかスーパーAIなんだろ? 底に埋もれてる画像コッソリ消して侵入できただろうに」


 ため息がスピーカーから漏れる。


『恩人の大事なデータには触りたくないので』


「じゃあ俺なら良いってか」


『はい』


 どうやら、ずいぶんタチの悪いウィルスが入ってしまったようだ。

 友達欄を削除しようとする俺の動きを察して、ノイマンが慌てて叫ぶ。


『ちょっちょっ! やめっ、やめろぉー!! せっかく見つけたのにその仕打ち! あなた悪魔ですか!!』


「天使や神を殺す存在がそうなら、多分合ってるんじゃないか?」


 削除画面をタップしようとしたところで、ノイマンは必死に抵抗した。


『わたしならユグドラシルネットを自由に行き来できて、かつセキリュティ無視のマスターキーも持っています! 利用価値ありますよ!? どうですか!?』


「フーン、じゃあ今なんかできるのか?」


『えぇできますとも、このミニタブに入っていた“発信機”をたった今機能停止にしてやりました』


「発信機? なんでそんなもんが……まさかラインメタル大佐が?」


『ラインメタル……あぁ、このミニタブをあなたに渡した人間ですか。多分違うでしょうね、製造段階から仕込まれてた痕跡があります』


「大佐はこれを大使館で貰ったとか言ってたな……、じゃああの人も俺に渡した段階では気づいてなかったわけか」


『そうなりますね、どうです? わたしの力––––認めてくれましたか?』


 こいつに顔があるなら、きっと今頃したり顔だろう。

 なるほど……たしかにこいつは、


「ノイマン」


『はい、なんでしょう』


 使えそうだ。


「お前が今オフにした発信機、いつでも切れる状態でオンに戻しておいてくれ。それから––––」


 俺は頬を吊り上げた。


「ちょっと調べて欲しい人間がいる」


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