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第266話・アルスVS剣聖グリード・ランチェスターⅣ

 

「さぁ行くぞグリード! ここからが、本当にフェアな戦いだ!!」


身体能力強化(ネフィリム)』のオーラを纏った俺は、落ちていたショットガンから銃剣だけを抜き取った。

 眼前の剣聖が、血管を浮き上がらせながら吼える。


「フェアっだと……!? 舐め腐ったこと言ってんじゃねえぞアルスッ!! 同じ変身でも剣聖であるこの俺の方が上に決まってる!! 魔力を取り戻したところで俺様の絶対優位は変わらねえッ!!」


 突っ込んできたグリードが、直線的だがパワーだけはある斬撃を放ってきた。

 無論、もはやこんな攻撃で血を流そうはずもない。


 手にした銃剣で軽くいなした俺は、本気の蹴りをヤツの顔面へ叩き込んだ。


「ぶっほっ……!?」


 仰け反ったグリードの鼻血まみれの顔を掴むと、俺は一気呵成に大地を蹴った。


「はあぁッ!!!」


 後頭部を思い切り地面に叩きつける。

 それだけでは終わらない、超高速でヤツの頭を地面でもってすりおろしていく。


 雑音混じりの悲鳴が聞こえたが、一切を無視。

 200メートルは引きずっただろう。

 再び首ごと持ち上げた俺は、全力で突き出ていた岩へ放り投げた。


 土煙が舞い上がり、轟音が響いた。

 ゆっくり近づいた俺は、後頭部を血だらけにして倒れるグリードの前へ立つ。


「同じ変身でも……なんだって?」


「グッソォオオオ!!!」


 応えるように起き上がったグリードが、必殺の剣技を放ってきた。


「上位剣技スキル––––『ソード・パニッシャー』!!」


 剣聖グリードが、全盛期の力で俺へ本気の必殺技を放つ。

 だが、もはや経験値でもステータスでもかけ離れた俺には1筋どころか掠りもしない。


 自称上位剣技とやらを、アナログな見切りだけで防ぎ切る。

 俺は声を低くした。


「言ったろ剣聖……俺とお前じゃ、もう立ってる場所が違い過ぎるんだ」


 ご自慢の愛剣を、ヤツの放った技より速い速度で斬り刻む。

 まるで乾燥したクッキーのように、剣聖として歴史を紡いできた剣が悲鳴を上げて砕け散った。


「なぁっ…………!!?」


 これでもはや、ヤツは剣士ですらない……ただの一般冒険者だ。


「剣の無い剣聖か、ほら……逆境は絵面映えするんだろ? もっと笑えよ」


 手でカメラマークを作った俺へ、激昂したグリードが拳で殴りかかってきた。

 剣で捌くこともできたが、俺はあえて素手で受け止めた。


「雑魚アルスが調子に……ゼェッ! 乗んじゃねえよ!! 俺は最強だ! 俺はギルドランキング上位のトップランカーだ!! お前のせいでぜんぶ狂って––––」


 ––––グシャッ––––!!


 グリードの右手を、俺はそのまま力任せで握りつぶした。

 骨の一片に至るまでが崩壊する、激烈な痛みと不快感にヤツは絶叫した。


「なぁグリード、思い出さないか? あの言葉を……」


 涙目で叫ぶグリードへ、俺は全くの容赦なしで打撃を繰り出した。

 赤いバラが咲き誇り、連続して鈍い音が広がる。


 腕、脚、腰、腹、顔面––––全部の骨を叩き折って回った。


「“俺たちもうトップランカーだから”と追放した、無能エンチャンターに全てを取り返される気分はどうだ? 剣聖さんよ」


「グガッ……!! あがぁ!?」


 グリードの首を掴んだ俺は、手に魔力を集めた。


「『レイド・ファイア』」


 首を握る俺の手が、一気に強烈な熱を帯びた。

 およそ200度の熱で喉を焼かれたグリードから、断末魔が響き渡る。

 これで、もう二度と配信で人気アイドルを演じることなどできないだろう。


「今のが俺を不条理に追放してくれた分、そして––––」


 顔面を思い切り殴り飛ばした。

 鼻の骨が粉々になり、血を噴き出しながら転がるグリード。


「今のがお前にやられたカレンの分」


 もはやグリードに戦意はない。

 倒れ伏し、地面に這いつくばりながら無様に許しを乞う剣聖の残骸だ。


 胸ぐらを掴み上げると、ヤツの顔はこれ以上ないくらい歪んでいた。


「や、やめてくれアルス……! これ以上やられたら、この胸の『フェイカー』が自爆しちまう……っ! だから」


「だから? 何?」


 俺はグリードの胸からフェイカーを引きちぎると、無理矢理ヤツの口へ押し込んだ。


「これまでの、ここまでの、今までの全部はお前自身が招いた結果だ。これは必然だ……だから––––」


「やめっ!! アル––––」


 爆発寸前のフェイカーが喉へ通る……。


「ちゃんと全部、己の蒔いたことへの責任を取るんだな––––それがギルドのリーダーってもんだろ?」


 最期にグリードは、俺を見た。

 それは絶望と恐怖、後悔と失念、憤怒と慟哭、全てが入り混じったように見えた。


 だけどもう––––––––二度と拝むことはない。


「消えろ、自惚れと勘違いで全てを失った剣聖……グリード・ランチェスター」


 大爆発が起こった。

 グリードの体内で起動したフェイカーが、TNT火薬を彷彿とさせる爆炎を発生させたのだ。


 俺の元リーダーにして、最大の怨敵……剣聖グリード・ランチェスターの爆散を、俺は防御魔法越しにこの目で見届けた。


アルスとグリードの決着。

本作の巨大なターニングポイントが、これにてやっと通過できました……。


全ての過程を他人の力ですっ飛ばし、旨味だけを得てきた剣聖グリード。

その最期は、カメラにも映らない––––自身の追放した復讐者による惨めで孤独な死でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっと過去と決着をつけましたね
[良い点] 長かったっすねー。 ようやくぶっとばしましたか。 [気になる点] 今までやっつけては復活だの身代わりだのやりすぎたせいで、本当に決着ついたのかと若干疑ってしまうw
2022/05/27 19:46 退会済み
管理
[一言] 某野菜の王子のセリフ借りるならきたねぇ花火だってやつだな さてと……残るはユリアか……
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