第264話・ミライ&アリサVSドクトリオンⅢ
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片方が1発ずつ技を撃っても、無限に再生するドクトリオンには決して敵わない。
敵の耐久力は異常そのもの、だからこそ––––2人は一発逆転の賭けへ出た。
「おやおや……、まさかそれは」
眼鏡に反射するのは、激しい稲光と紫色の閃光。
彼が見つめるまさにその先、ミライとアリサが互いに近づけ合った拳の中間へ、魔力がドンドン集約していくのだ。
「まさか、“合体魔法”を繰り出すおつもりですか? なぁんと愚かしいッ、それは歴史上非常に稀な成功例を除いて、ほぼ全てが不発に終わる非実用的魔法! この期に及んで博打とは……とうとう追い詰められましたねぇッ!!」
部屋が揺れ始める。
パネルを操作したドクトリオンは、誰もいない空間へ口開く。
「しかし……それが歴史上稀有な存在なのもまた事実、ここで阻止するのは簡単ですが、それでは私の研究成果が完璧ではないと天使に公言するようなもの……ノイマン」
『はい、なんでしょう』
パネルから声が響いた。
「君とこの肉体は我が研究の成果、ならば……私はあの合体魔法を受け切り、耐え抜くことこそ真の勝利と思うのですよ」
『博士の創った技術です、博士のお好きにすれば良いと思いますよ』
「ふむ、ではそうしましょうか……」
パネルから離れたドクトリオンは、ここへ来て初めて魔力を身に纏った。
一方のミライとアリサも、身体を覆う電気と閃光がさらに激しさを増していた。
「さぁ来なさい双竜ッ!!! 君たちの手札を完璧に切らせて、私の技術が竜すら超えうるということを天に示す!!」
ドクトリオンの身体が一気に膨張した。
肥大化した筋肉はギチッと引き締まり、まるで殻のように成長した。
「ミライさん!! タイミングが重要だよ、前は失敗しちゃったけど」
「うん、今度は––––絶対成功させる!!」
以前試みた黒騎士戦では、アリサの魔壊竜としての力が、融合しようとしたミライの魔力をかき消してしまった。
だが今回は違う。
バラバラだった2つの魔力波長が、まるで同一人物を疑うレベルで一致していたのだ。
魔壊竜としてのアリサの力は、自分と異なる波長の魔力に干渉することで発動する。
だからこそミライは、自らの魔力––––その性質をアリサと全く同じか、外部からは判別不能の域にまで一致させていた。
常人ならば絶対にあり得ない神業であり、これ自体が新たな魔法と言って良い奇跡の現象。
王立魔法学園の秀才魔導士として、彼女がこの土壇場で見せた意地だった。
「この一撃に––––」
派手に輝いていた魔力が収束した。
「全部を乗せる!!」
2人の拳の間で、混沌とした魔力球が膨れ上がった。
イカズチと魔壊、本来合い容れない2つの魔法が合わさり融合する。
……もう二度と、同じ失敗はしない!!!
「「合体魔法!!『カオス・エクスプロージョン』ッッッ!!!!」」
2人が同時に拳を突き出すと同時、桁外れのパワーで魔法が放たれた。
1+1などではない、2つの滅軍戦技を素材にかけ算した値の威力だった。
「おぉ……っ! オオォオオオオオオオオオオォオオッ!!!!!?」
超々高出力の魔法が、ネロスフィアごと敵を穿つ。
完璧な防御態勢を取っていたドクトリオンを消し去るのに、秒の時間すら掛からなかった。
原子単位で崩壊していく感覚の中、ドクトリオンは最期の実験結果に心躍らせる。
「竜は……竜王への想いで成長、する––––––––」
大穴が空いた部屋で、魔法を撃ち終えたミライとアリサは倒れ込んだ。
2人共に、血界魔装が解除される。
「いや〜…………出し切ったねぇ」
「ホントにね……アリサちゃん立てる?」
「今すぐは無理かな……、スカートのポケットにチョコ入ってるから、それ食べたら起きれるかも」
「オッケっ、じゃあ……」
魔法杖を、文字通り杖として使って立ち上がるミライ。
「約束を果たすわよ……大天使、東風」




